第13話 人々を助ける悪役、爆誕!
部屋の中央の方で力のない声が聞こえてきた。俺はランタンの火を頼りに部屋の中央に向かっていく。
すると、部屋の中央に金色の髪をした女の子が椅子に縛り付けられている状態でいた。布で目隠しまでされている様子から、さっきの掘っ立て小屋にいた子供たちとは随分と扱いがまるで違う。
「一人か?」
「そうですよ。もう放っておいてください……もう誰も信じられませんわ」
「フッ、悪いがその言葉には従えないな」
だって、一人だけ開放し損ねたなんて真の悪役っぽくないしな。
俺は女の子の背後に立ち、拘束を解いて目隠しを取ってやる。すると、女の子は驚いたような声を上げた。
「え? 拘束を解いてくれるんですか?」
「安心しろ。俺は敵ではない」
俺はそこまで言うと、女の子の顔をも見ずにその場を後にしようとした。
すると、背後から女の子に呼び止められた。
「あの! 助けに来てくれたんですか?」
「助けにだと? フッ、言わなくても分かるんじゃないか?」
さっきの子供たちもやられている男たちを見て納得してくれたし、同じようにすればいいだろう。
俺がそんなことを考えて振り向くと、拘束を解いた女の子がこちらに向かって突っ込んできていた。
「へ?」
俺が突然の事態に身動きを取れずにいると、女の子はそのまま勢いよく俺に抱き着いてきた。
「ま、待ってください!」
「ぐふっ!」
女の子は俺に強く抱き着いたまま、涙を流して口を開く。
「ありがとうございます! 本当にっ、ありがとうございます! あなたが助けに来てくれなかったらっ、私は!」
「いや、だから、そういんじゃなくって、悪役として小悪党をただ狩っていただけだって」
「お名前を! お名前を教えていただけませんか?」
女の子はろくに俺の話を聞かず、顔を上げて俺を見つめてきた。
「名前? ああ、いいだろう。俺はダーティ・ヴィラン。やがて、真の悪役になるーーん?」
俺は途中まで言葉を言いかけてピタッと止まる。
なぜかというと、その女の子の顔に見覚えがあったからだ。
金色の髪に青い瞳。それにこの妙に丁寧な口調……あれ?
この子って、ヒロインキャラのアリス第二王女じゃないか?
学園RPGゲーム『魔法学園の彼方』で一番初めに出てくるヒロインキャラ、ロマノフ・アリス。
ザ・正統派ヒロインって感じのキャラで、攻略もしやすいキャラなのだが……なんでこんなところに第二王女のアリスが?
俺が困惑して目をぱちぱちとさせていると、アリスは頬を赤くしてうっとりとした目で俺を見つめていた。
「ヴィラン様。私の救世主様」
「きゅ、救世主?」
俺が思いもしなかった言葉に声を裏返すと、外からカチャカチャと鎧の音が聞こえてきた。
そして、すぐに血相を変えた十人ほどの兵士たちがどたどたっと小屋になだれ込んできた。
「アリス王女! ご無事ですか!」
「ええ、無事ですわ。私のヴィラン様が助けに来てくださいましたから!」
アリスは涙を拭いてから、満面の笑みでそんな言葉を口にした。
私のヴィラン様? 聞き間違いか? 聞き間違い、だよな?
すると、兵士たちがおおっと感動するような声を上げた。
そして、兵士たちは勘違いしたまま各々口を開く。
「他の子供たちから聞いたよ。君が一人でここに乗り込んで、アリス様以外の子供たちも助けてくれたって」
「十歳の子供が反政府組織に一人で突入して、王女を奪還。これは将来が楽しみだ」
「ウィナン伯爵家で行われたパーティが襲撃された情報をどこかで手に入れたのだろうな。まったく、情報集能力まで長けているとは恐れ入ったぞ」
ウィナン伯爵家の屋敷が襲撃?
もしかして、ドレスコードみたいな服を着ていた子供たちが多かったのって、それが原因か。
いや、それよりも誤解を解かなくてはならない。
俺は誘拐された子供たちを助けに来たのではなく、ただ小悪党を倒してどっちが真の悪役なのか分からせたかっただけだと。
えっと、要点をまとめるとこんな感じか。
「フッ、俺はただ自分のすべきことをしただけだ」
「「「おおっ」」」
すると、なぜかまた兵士たちは感嘆の声を漏らした。
「国のため、王女のためなら危険は顧みんということか。まさかここまで忠義心があるとはな」
「ダーティ男爵の息子は優秀だと聞いてはいたが……ここまで勇敢な男だったとはな」
あれ? なんか誤解が解けてない? というか、さらに変な勘違いまで追加されてないか?
「いや、違うぞ。えーと、これは俺にとってやらなければならなかったことで、他意はないんだ」
「ヴィラン様ったら、謙虚なんですね」
すると、アリスが俺に抱き着き、うっとりとした目で俺を見つめていた。
いやいや、なんでヒロインキャラが悪役にべたべたなんだよ。チョロインなのか? さすがにチョロイン過ぎないか?
俺は何とか誤解を解こうとしたが、誤解を解こうとする度になぜかアリスと兵士たちの好感度が上がってしまうのだった。
翌日。俺は有名貴族たちの子供たちを単独で救い出したヒーロー、王女を魔の手から救い出した救世主だという噂が一気に広がったのだった。
……いやいや、なんでこうなった?
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