第10話 回復魔法による制圧
工場跡地に突っ込んでいくと、次々とガラの悪い男たちが出てきた。
「おい! ガキがこっちに来てるぞ!」
「あのガキ、剣を持ってやがる!」
「ガキが舐めやがって……ぶっ殺してやる!」
皆剣を引き抜いてこちらに向かってきているし、反政府組織の組員だということでいいのだろう。
「ぶっ殺す? ぶっ殺されるの間違いじゃないのか?」
俺は瞬間的に魔力を増幅させ身体強化する。それから、俺はやり投げのように奪った剣を油断しきっている一人の男の腹部めがけてぶん投げた。
ズシャアアッ!
「ぐああっ!」
俺の投げた剣は男の腹部に深く突き刺さった。柄の部分から先の刀身の部分が全て男の体を貫いている。
俺は魔力で身体強化した体でジャンプして男との距離を詰め、柄の部分を持って剣を引き抜いた。すると、男は血しぶきを噴き出して、力なく地面に倒れこんだ。
俺は剣についた血を払う。
「フッ、ここまで魔力を流しての身体強化も久しぶりだ。まさかここまで体が強化されるとはな」
「はっ、ぐぅっ、かはっ!」
すると、体を貫いた男が苦しそうに転がっていることに気が付いた。
呼吸もまともにできないようだし、出血がかなりある。
……止血くらいはしておいてやるか。小悪党を殺すのは真の悪役っぽくないしな。いや、逆に皆殺しにするっていうも悪役っぽいのか?
俺はそんなことを考えごとついでに、男に回復魔法をかける。
「な、なんだこいつは!」
「怯むな! 囲んでぶっ殺せ!」
俺が考え事をしていると、周囲にいた男たちがいつの間にか俺を囲んでいた。
ざっと二十人ほどだろうか? 男たちは剣を片手に俺に突っ込んできていた。
「一体多数か。フフフッ、真の悪役にやられるモブどもって感じだな」
「調子に寄りやがって! かかれ!」
俺は男たちが剣を振りかぶる中、一人だけ剣を地面に突き刺す。それから、両手を向かってくる男たちの方に向けて意味深な笑みを浮かべた。
「……『反転』」
「「「がっ!」」」
すると、俺に向かってきた男たちはバタバタと倒れだした。しかし、一気に全員倒れるということはなく、後方にいる数人は倒れなかった。
ん? 回復魔法をかけた範囲が短かったか。
「な、なんだこりぇは」
すると、足元に倒れていた男がろれつの回らない口でそんな言葉口にした。
俺は屈んでその男の表情をじっと観察して小さく笑う。
「どうやら、上手く加減をすることができたようだな」
「な、舐めやがってぇ」
いや、べつに舐めたわけじゃない。
今回使った回復魔法は麻痺状態を回復させる魔法を反転させたものだ。麻痺と言っても、寝起きに片腕が痺れて動かないとかそういった部類の麻痺だ。
そして、それの回復魔法を反転させ、無理やり全身が痺れた状態になるようにしてみた。
要するに、ただの状態異常攻撃なのだ。
ただこの魔法、一歩間違えると心臓麻痺とかになって殺してしまう恐れがあるので、使用には注意が必要なのである。
だから少し出力を抑えたのだが、それだと後方にいる男たちを麻痺状態にすることができなかった。
どうやら、まだまだ改良の余地があるようだ。
「は? え、何が起きたんだ」
周囲にいた男たちがバタバタと倒れる姿を見て、後方にいた男たちは分かりやすく狼狽えていた。
俺は地面に刺した剣を引き抜くと、身体強化した体で一気に後方にいた男たちのもとに移動した。
「は!? い、いつの間にーー」
それから、俺は倒れていない男たちに数度剣を振るい、後方にいた男たちの体を切り刻んだ。
俺が切り刻んだ男たちの体を回復魔法で止血し終えて顔を上げると、工場跡地のほうに一人の男がいた。
男の身なりは他の倒してきた奴らとは違い、高そうな服を着て装飾品も身に着けていた。
男は俺が倒した男たちを見て目を見開く。
「な、なにしてやがんだ! てめぁは!!」
「うちの領地に悪党がいると聞いてな。どちらが上なのかはっきりわからせに来てやっただけだ」
「どっちが上かだと? 何訳の分からないこと言ってやがんだぁ!」
男はそう言うと、剣を鞘から引き抜いて俺に向かって突っ込んできた。剣を構えた時の重心や、間を詰めてくる速さを見て、俺は小さく声を漏らす。
「ほう。他の奴らよりはまともな構えだな。それに、魔力持ちか」
俺は間を詰めてくると男を見てニヤッと笑う。
普段、魔力持ちとの戦いはあまりできない。悪党が相手なら、少しくらい魔力を多く込めても問題ない。
これなら、少しは楽しめそうだな。
俺はそう考えて、魔力で身体強化をして男の一撃を力強く剣で弾いた。
ギィィン! ボキッ!
「あ」




