前科持ちの俺(エンピツ)、お買い上げされる
気がつくとオレは、ペン立てのような棚に他のエンピツと立てかけられていた。他のエンピツどもがペラペラ喋っている。
向かい側の棚には、ノートや原稿用紙の置かれた棚が見える。
今まで半信半疑だったが、本当にエンマの言う通りなったようだ。ガヤガヤとしたその箱舟で、オレたちは情報交換した。
「おたくは、何で?」
「私、恥ずかしながら横領でして」
「それはそれは。そちらのお若い声の方は?」
「自分、スピード違反で運転してたらそのままガードレールに突っ込んじゃいました」
「大変でしたなぁ」
「いえ、一瞬のことだったんで」
ロクでもない奴らばかりだ、と思っていたがオレもその一人なんだよな。
「あんたは、何したんですか?」
ピンクの色鉛筆に聞かれたので、銀行強盗、と言いかけると伸びてきた手がオレを掴んだ。
「ヒロちゃん、これなんかどう?使いやすそうよ」
「ぐえっ」
中年の女の声とともにいきなり鷲掴みにされたオレは、思わず声を上げてしまった。他のエンピツどもは急に無言になった。皆、来世のために掟には忠実なようだ。
中年の女は怪訝そうな顔でオレを見たが、その後気に留める様子もなく、遠くにいる誰かを呼び寄せている。
すると、小学五、六年生くらいのガキが近づいてくるのが見えた。ガキのいた場所には、うんざりする量の本が収まっていた。どうやらこいつが「ヒロちゃん」らしい。
「ちゃんと外ではヒロトって呼んでって言ったじゃん」
「ごめんごめん、次から気をつけるから」
母親であろうこのおばさんは、気をつける決意の全く感じられない口調で呟いた後、オレをガキに見せつけた。
「どう?」
「何でもいいよ」
何だと、このクソガキ、オレを誰だと思ってるんだ、なめんなよ、と声に出さずにギャアギャアわめいていると、ヒロトの母ちゃんはオレをカゴに入れ、帰ろうか、と言った。
「タクミも待ってるし、ね」
「どうせ、引きこもったまんまだよ」
ヒロトが呟くと、母親の寂しそうな目がカゴの上から見えた。
「そんなこと言わないで、帰ろう」
どうやらオレの今生で関わる連中はずいぶんワケありのようだ。
体に刻まれたバーコードをリーダーでかざされてお買い上げされたオレは、ヒロトのペン立てに突っ込まれた。




