エンマとの契約
一緒に銀行強盗に入った相棒は、警官と間違えてオレを撃っちまった後に警官に撃たれた挙げ句、エンマのジジイから、来世はハムスターの餌になるよう命じられたそうだ。
それと比べてオレはマシなのかもしれねぇ。でも、油断はできない。なんてったってエンピツだもんなぁ。
「削られる時って、痛いのかやっぱり?」
もし、エンピツになれと言われたら誰でも浮かぶであろう不安をエンマ大王にぶつけた。
ここは地獄で、赤いモヤがかかった空間をいくつものオレンジ色の火の玉が飛び交っている。
上下左右のどの方向を見ても、果てもなければ天井も底もない。
オレはその不気味な場所にふわふわと浮いている。どうやら幽霊になったらしい。
宙に浮いた黒い漆塗りの盆の上に、あぐらをかいて座ったエンマが、静かに口を開く。
「あまり痛くはない。強いて言えば、足つぼマッサージの感覚じゃ。痛気持ち良くなっておる。芯の先端が折れたら激痛じゃがの」
「えーっ、オレそういうの苦手なんだよなぁ」
「たわけ、お前のような不届き者に『気持ち良い』の感覚を味合わせるだけでも、ワシとしては不本意じゃ。何ならハトのクソにしてやっても良いんじゃぞ?まだ空きがあっ……」
オレは慌てて「来世変換申請書」にサインをした。
さっきから火の玉が顔や体をかすめて、一度死んでいるとはいえ気が気ではない。
「お前さんは、試されておる」
エンマが再び話し始めた。
「今回、エンピツとして持ち主に使い切られれば成仏できる。特に役に立った場合は、天国のアパートに入居できるかもしれん」
「高い家賃があるとか、そういうオチはねえだろうな」
「人の話は最後まで聞け、このたわけ」
エンマは咳払いをすると、ニヤつきながらこう続けた。
「ただし、掟を破ったり、エンピツとしての責務を果たせなかったら、お前さんにはもう一度来世を過ごしてもらう。もちろん、エンピツよりもっと酷いものに代えられてな」
来来世のことまで考えると気が滅入ったが、要するに掟はこの三つらしい。
①半年(3月~8月)以内に使い切られること。
②エンピツは持ち主に話しかけてはならない。
③持ち主がいない時に起きた事をばらさない。
「じゃあ、今すぐ来世を過ごしてこい。くれぐれもしっかりやるんじゃぞ」
そう言うとエンマは右の人差し指をオレに向け、ビームのようなもので包んだ。そこから眠気がして、後の記憶がない。




