10 食事と就寝
「広い、床も平らな石で出来ているみたいだ…よし暫くはここが拠点だ」
涼しいという気がしないでもない中は暗く、ジメジメという程ではないが湿気がある。
「明りが無いな、うーん、それに石の上ではさすがに寝れないかな」
奥へ進むとすぐに行き止まりになる、1人で住む仮の拠点だと思えば十分な広さで満足している。
「よし、まず飯にしよう」
入れ口まで戻り、此処に来るまでに手に入れた枝を収納から出して火魔法で焚火を行う。
「便利だよなー、日本ならライターとかマッチがあるけど魔法も自分の魔力だけで良いし」
鼻歌混じりに収納から鑑定で採取した食べられるキノコを、浄化魔法を掛けた枝に3個づつ刺して地それを数本面に突き立て焼き始めた。
その他、リンゴに近い形をした青い果物 鑑定:果物 食用可能 生でもジャムや焼いても美味 と親切なんだか不親切なんだかな鑑定結果が出たリンゴモドキ(仮)と黄色い厚めな皮に包まれ剥くとミカンの様な柑橘系の酸味のある果物、鑑定結果はリンゴモドキ(仮)と同じミカンモドキ(仮)を2個づつ取り出し食べながらゆっくりとキノコが焼きあがる上がるのを待つ。
「今って、朝か昼かよくわからないなあ、夜ではないんだけど…」
神々から与えられた知識によると、《アタラクシア》の1年は400日、1日は栄えた街にでも行かない限り時間はざっくりとしている、空が暗くなれば夜、明るくなれば朝、そのサイクルがずっと続いていく。
大体の一般的な人間は1日2食朝と夜に食べ、上流階級になればその間に昼食とも呼べるお茶の時間が存在する。
リンゴモドキ(仮)は軽く拭いてそのまま食べる、シャキシャキとした食感と瑞々しさが美味すぐに1個目を食べきり、次はミカンモドキ(仮)皮を剥いて食べる、こちらも甘みがあり酸味が程よい、キノコの串の向きを変えつつ満遍なくに火が届くようにしていく。
「このキノコ小さい松茸みたいな形しているよなー松茸なんか食べた事ないけど…」
焼いているマツタケモドキ(仮)の形をマジマジ眺める、火に照らされじっくりと焼かれていく、日本のスーパーで売られているあの形を一回り小さくしたそれを美味しく頂く為の準備を始める。
「朝の俺ってば本当に冴えてる、まさかスーツケースにこんな物を入れてしまっているとは!」
今朝アパートの自分の部屋に車が突っ込み、とりあえず身近な物を60Lかなりの容量のブラックカラーのスーツケース(母親のお下がり)に詰め込んだ中にお徳用醤油(未開封)と業務用マヨネーズ(ちょっと減っている)と今朝コンビニで買ったペットボトルのお茶(ほうじ茶)を収納から出し、湯気の出ているマツタケモドキ(仮)にお徳用醤油(おひとり様2点限り)を振りかけようとし、重さで醬油がこぼれてしまう事に気づき、近くに生えていた葉っぱを皿代わりにし醤油を振りかけ、「いただきます」串を持ち直し口に運ぶ。
「うま!何これ!肉厚と噛み応えがあって…醤油との相性最高!」
感動で無我夢中で食べ頃になったキノコすべてを平らげてしまう、最後に600㎖のほうじ茶を一気に飲み干し一息つける。
「ふぅー、食べた。明日の分も食べた…よし明日もキノコ狩りと後湖で魚がいれば魚つ…そこは明日考えよう」
道具がないがそこは明日考える事にし、ボストンバッグに入れてあったミニメモ帳に明日以降のやることを書いていく。
「キノコ、釣り…、農業と…園芸ショップを見て…。森を調べつつ…ふぁ…ダメだねよう」
空はまだ暗くはないが、限界はとうに超えている、《アタラクシア》に来てからリセットされてしまった、耐水性のソーラータイプの腕時計の時間を今から動かす。
「時間間隔を失わないように…」
片づけをし、トラベル用の歯ブラシセットで歯を磨いて水魔法で口の中を濯ぐ、収納のウィンドウ表示を確認し何か寝るの役立つものがないか確認する。
「上着と…タオルとうーん、まてよボストンバッグ空にして敷こう」
水魔法で焚火を消化し、ボストンバッグとタオルと上着を取り出し奥に進む。
「この辺でいいや、あ、浄化魔法を掛けてと、うわ綺麗になるわー焚火臭い髪の毛とかも元に戻ってる」
足は出るがボストンバッグがあるかないかでは大分違う、バスタオルを畳んで枕代わりに、上着をかけてそのままあっという間に眠りについた…。
あなたは異世界に行ったら何をします?~異聞・蒼刻の剣と黒騎士に捧げる英雄達の詩~
010刻 狩り
息を顰める、気配を消す、森と交わる、そうしてヴィーは得物を探す。
魔物も動物も人のいる方へはあまり来ない、言い伝えによると魔物達にとって人は不味いとされ食べれば、彼らの来世は恵まれた物にはならないとされている。
いつかどこかで聞いたか覚えていないが、ヴィーは魔物や動物にもそういう感情がるのかと思った位だ。
その程度だ、ヴィーにとってはこれから食材であり生活の為の商品だ。
「……」
少し先に黒い兎のような歯が出すぎの不細工な魔物、最初の狩りにちょうど良いと草をむしゃむしゃ食べている兎に気配を消して弓を構えた。
「……うまくやれた」
矢は思った場所には当たらなかったが兎尻の辺りを矢で射貫かれ『ギギィ』と汚い叫び声をあげて絶命する、ヴィーは油断せずに兎に近づき死んでいる事を確認しナイフで血をその場で抜き近くの川まで引きずった…。




