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5話 最高の拠点の為に

 指だけだったからスキルを手に入れるのは難しいと思ったけど、問題は無いようだ。

 大事なのは人からその部位を切り離して食べるって事かもしれない。


 一応スキルの内容とかもその都度質問するか。


『――スキル【ガニバリズム】の詳しい発動条件とスキル【カリスマ】の内容を教えてもらう事は出来るか?』

『スキル【ガニバリズム】は人間の部位を食す事で発動します。食べた部位や量によってはスキルを盗めない場合があります。例えば爪だけ、髪だけでは盗めません。対象が複数スキルを持っている場合、食べた量によって盗めるスキルの数が増えます。その為多くのスキルを対象が保有していると、それを全て盗む為に全身を食す必要もあります。【カリスマ】は対象となりうるモンスター或いは人間に対して強さを見せつける事で対象を魅了、仲間・恋人・友人を作りやすくなります。それでは貴方に神の御加護がありますように』


 見た目が悪くても、性格が悪くても、自然と周りに人が集まっている人っていうのはいた。

 あれもスキルによる効果だったって事か……。


 そして俺が食べた指の主はそういった人間で勿論スキル:【カリスマ】持っていたって事なんだろう。

 ……俺が出会った冒険者の1人はリーダーと呼ばれていたけど指はあった。

 だからそれとは関係が無い別の人間の団体がここに押し入って返り討ちにあったのかもしれない。


 ゴブリンは思った以上に弱かった……。

 どうする?傷の痛みはさほどじゃない。このまま洞窟に入っても問題な――


「「きききっ!!」」


 俺が洞窟の中に入って恐らく複数いるであろうゴブリンを掃討出来るかどうか思考を巡らせていると、外に出かけていたゴブリン3匹が帰ってきた。

 慌ててその場から離れて繁みに隠れる。

 ゴブリン達は一瞬俺が動いたことで発生した音に反応を見せるが、直ぐにそんな事を忘れて洞窟へ向かう。

 

 自分達の巣の近くって事もあるから普通少しでも不自然に思えばその不自然の原因を探って処理しようとするはずだが、今のゴブリン達はそんな事を気にするどころじゃないようだ。

 何故ならその頭上には縄で縛り上げられた人間の女性が持ち上げられていたから。

 ゴブリン達からしたら最高の晩餐が待ってるってのに、そんなちょっとした事で時間をとられたくないってわけだ。


 ……それにしても冒険者がこの森に侵入するのはこうやって人間を攫うゴブリンを掃討するクエストを受けているからか?

 という事は今この洞窟は人間が運ばれ、人間が勝手に入ってくる状態。

 俺からしてみればこんなに住処としていい状態の場所はない。


 そういえば俺自身が運ばれてきたのはこの森から。

 そしてあの人間達の目的が元々ゴブリンだったと仮定して、もしかしたらここが卵だった時の俺が最初に居た場所……。それと、冒険者をボロボロにした凶悪なモンスターの住処になっている場所?


 だったら今後の進化先、自分の親についても知れる生まれ故郷って可能性もあって早く足を踏み入れてみたいが、危険過ぎて入れない。


 やっぱり当面は安全なレベル上げ……人間を狩りに出かけたゴブリン達を待ち、巣に戻る前に殺すのが一番効率的。

 強敵である冒険者を巣で待ち構えてみたい気もあるけど、今はそうやってコツコツやってくしかなさそうだ。


『【鑑定LV1】』


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種族:ゴブリン

状態:興奮

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種族:ゴブリン

状態:興奮

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種族:ゴブリン

状態:発情

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種族:人間

状態:裂傷、流血【小】、気絶

-------------------------------------


 1匹発情人間の女性の尻の下にいる奴が発情状態なのが気になるが……襲っちまうか。

 試してみたいスキルもあったから丁度いい。



「「――きき?」」



 ゴブリン達が滝の裏に続く道に入る前に俺は口を開き喉に意識を集中させた。

 すると口の奥が段々と熱くなり、げっぷを出したい時に近い感覚に襲われる。


 ゴブリンはそんな俺の放つ熱気に気付いたのか、それとも俺の口が光って見えたのか、理由は分からないが俺の存在に気付いて首を傾けると流石に無視出来なかったのだろう、人間の女性を地面に置き恐る恐る近づいてきた。


 そんな状況で俺はげっぷを出したい時に近い感覚に我慢出来なくなり、口の奥から溜まっているものを吐き出した。



 ――ぼうっ。



 低い音と共に勢いよく口から放たれた炎はゴブリン2匹の顔面に火をつけた。

 スキルLV1だからか威力は低いみたいだが、ゴブリン相手なら有用。

 事実、火のついたゴブリン達は地面に転がり苦しがっている。


 慌てて水の中に入っていく2匹のゴブリン。

 残されてしどろもどろのゴブリン。


 3体1に若干不安を感じていたけど、これなら問題なく殺せる。


 俺はしどろもどろのゴブリンの手に噛み付き、腰に巻いている布でなんとか提げていた武器を握れなくする。

 ゴブリンはこれはまずいと思ったのか巣まで走ろうとするが、背中を見せるのは愚の骨頂。


 今度は首に噛み付いて骨をかみ砕くと喉を潰す。

 ゴブリンは動かなくなりその場に倒れる。これでこいつは放っておいても勝手に死ぬだろう。


「「きききゃあっ!!」」


 そうこうしていると顔に付いた火を消す事に成功したゴブリン達がこん棒を握りしめて向かってきた。

 不意を突かれて攻撃された事に怒っているのか、いつもより表情が怖い。

 とはいえ、火傷状態のゴブリンが相手。痛みからなのか動きは鈍い。


 俺は振り下ろされたこん棒を躱す。2匹が相手だと噛み付く暇がないから、カウンターとして尻尾で顔面をはたく。


 万全の状態のゴブリン相手なら大したダメージにはならないだろうけど、火傷している箇所ならば相手を数秒止める位のダメージと衝撃に。


 躱して躱して躱して、はたいてはたいてはたいて、そんな攻防を繰り返していると遂に1匹が地面に膝をついて動かなくなった。

 これはチャンスと思った俺は、まだ立って動くゴブリンの喉に噛み付き食いちぎった。


 だらっと流れる大量の血。

 このゴブリンももう終わり。

 残すは1匹だけ。……勝ったな。


 俺は地面に膝を着くゴブリンの元に勝ち誇りながら近づく。

 一応大声を出されても困るから喉に穴を空けてっと……

 どうせならスキル:【ファイアブレス】のレベル上げもしたいからそっちで殺してやろうか――


「ん゛んぅうううううっ!!」

「がっ!?」


 背中に何かがぶつかった。

 痛みは大した事が無い。

 だけど、今の衝撃で地面に顔をぶつけてしまった。

 少し擦りむいたのか、鼻の辺りがヒリヒリとし、俺はそこを手で撫でる。


 俺は自分の身に何が起きたのか確認する為にそこでようやく振り返った。


 するとそこには縛られた状態で逃げようとする女性の姿があった。

 脚を縛られている所為でうさぎ跳びの様に移動しているのがなんとも滑稽だ。

 それにしてもいつの間にか気絶から回復して、逃げる隙を窺っていたなんて、人間はやはり油断ならない。


 このまま逃がせばドラゴンがこの森に住み着いていると情報が出回り、より強い冒険者がここを訪れ始めるかもしれない。

 女性を殺すっていうのは姉がいた俺からすると、モンスターっていう立場でもちょっと躊躇いが……いや、ないな。


 最初に冒険者を食い殺した時はなんだかんだいって申し訳なさが若干あった。

 まぁそれも食べ始めてしまえば一瞬で消えていったけど。


 今回は一切そんな気持ちが沸かない。

 これも慣れって事かな。


「ん゛んんっ!」

「があ……」


 俺は逃げる女性の前に立ち塞がり、口を開いた。

 女性は恐怖からか震えながら失禁し、涙を流す。

 しかし、俺の口は女性に近づく事を止めようとしない。

 もう頭にあるのはこの女性がどんな味がするのか、どんなスキルを持っているのか、ただそれだけ。


 『いただきます』

 俺はゴブリンに火を点けてやる前に2人目の人間の捕食、女性の肉を味わうのだった。

お読みいただきありがとうございます。

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