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第4話 アリス狩り


部屋の中に入ると、なんか凄そうな人達が五人。会議室のようになっていて、扉の真正面に三人と左右に一人ずつ。

なるほど、これは生きて帰れるかどうか分からない。てか、怖い。さっきの女性軍人の数百倍は怖い。


そして、ここの人達も軍服を着ている。そして、五人中四人が眼帯を付けているし、付けていない初老の男性も顔に傷がある。


つまり、ここは中二病の集まり。と考えるほど涼音は馬鹿ではない。てか、この張り詰めた閻魔大王も逃げ出したくなるような空気をただの中二病が出せるわけない。


恐らく涼音を呼んだのであろう、小鳥遊香恋をじっと見つめるが、特に何も反応はない。

何も言ってくれなければ対応のしようがないのだが、如何せん誰も喋らないのである。そして、涼音から声を発することなどしたくない。まず、する勇気もない。


誰も動かず、誰も喋らないというこの沈黙の時間が数分ほど続いた。


「うーん、誰も喋らないんじゃ埒が明かないね。なぜ彼女がここに連れて来られたとか、説明した方がいいんじゃないの?」


一番最初に言葉を発したのは初老の男性の反対側に座っていた年若そうな青年だった。人の良さそうな顔面で、この強ばった空気が少し柔らかくなったような気がする。


「そうだね。能力者ということは分かったし、そろそろ口説き始めようか」


小鳥遊香恋の隣に座っていた、これまた顔がいい黒髪の女性が柔らかく微笑んだ。その微笑みに少しだけ心臓が鷲掴みにされた。

今思えば、ここにいる人はみんな顔がいい。まるで顔面偏差値のバーゲンセールである。


「はじめまして、能力者の少女。私の名前は小鳥遊香織。アリス狩り組織の当主です」


なんか既視感のある自己紹介の後に、恐ろしいことぶっ込んできたぞこの人。

いや、アリス狩りってなに。能力者ってなに。色々ツッコミを入れたいところだが、処理が追いつかない。


「混乱してるようだから、まずはアリスのことから説明しましょう」


涼音の混乱を何故か察した香織は淡々とアリスについて語った。

長かったので要約すると、アリスとは300年ほど前に現れた人々の破滅を目的とする異端組織だという。

彼らには物理攻撃や化学兵器などを用いた攻撃などが全くもって通用しなかったらしい。


「そして、そのアリスを一番初めに殺したのが、私たちのご先祖様だったってわけ。質問はある?」

「なんで殺せなかったアリスを殺せたんですか?」


純粋な疑問である。300年前の武器の質とやらはよく分からないが、殺せなかったアリスを香織の先祖は殺した。普通に矛盾している。


「いい質問ね、それが本題よ。私たちのご先祖様はね、能力者だったの」


そして、能力者の説明もされたわけだが、長いのでこれも要約すると、何か固有の特殊能力を持つ人間のことで、その人数は極わずか。物凄く希少で価値の高い人間だという。


「だから、ご先祖様と同じ能力者である貴女には、是非うちに入ってもらいたいの」


と、言われたわけだが。涼音は学生である。授業があるし、やらなければいけない課題もある。いくら美女で、物凄く偉い人で、凄い人でも、これだけは譲れない。


「すみませんが、遠慮させていただきます」


なので、即答である。

アリス狩りをするということは、学業も疎かにしてしまう可能性もある。志望大学に行ってお金を稼ぐのが目的な涼音にとっては避けたい事態だった。


「お給料もらえるわよ」

「ちょっと考えさせてください」


即答である!!

貧乏人はお金に目がないのだ。宝石を売ってお金にしたものの、お金はどれだけあっても困らないというし、考えを改めても何も不思議ではない。


「学校に通いながらでもできるし、アリスを一体殺すごとに報奨金として最低10万はもらえるわよ」

「入らせていただきます」


チョロいな、コイツ。ここにいる誰もがそう思っただろう。しかし、当主殿よ。お金をチラつかせてくるのはずるいのではないだろうか。


「まあ!ありがとう!じゃあ入隊試験が再来月にあるから受けてちょうだいね!」

「あ、入隊試験あるんですね」

「当然よ。何の実力もない子を組織に入れるわけにはいかないもの。でも、大丈夫。身体能力をテストするだけだから、簡単よ」


身体能力をテストする。そう言われて涼音は内心冷や汗をかき始めた。え、待ってヤバイ、身体能力テストとか無理。運動音痴には辛い。


「じゃあ、あとのことはお願いね。香恋」

「いえっさー」


とりあえず、運動始めよう。じゃないと身体能力テストとか無理。涼音は退出しながらそう考えるのだった。



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