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第3話 小鳥遊香恋


涼音が目を覚ましたのは、窓一つない暗い部屋だった。


そこが自分の部屋ではないことは明らかである。彼女の部屋にはあんなにも高そうな家具は置いていないし、いかにも高そうなアンティーク時計など買う余裕はない。


そんなものを買うくらいなら夕ご飯のグレードを上げる。だって数万はしそうだもの、あの時計。時計はスマホで十分です。


さて、何があったのかと己の記憶を呼び覚ます。


確か、帰り道に雪が攻撃してきて………。


ここで、涼音は違和感に気づく。雪が攻撃してくるとはなんなんだ。今時小学生でもそんな妄想しないぞ。いや、でも事実である。


つまり、ここは黄泉の国とかそういう可能性も無きにしも非ず。などと言うつもりはない。涼音の心臓は今も元気に動いている。


では一番可能性が高いのは何か。それは、


「あ、起きたんだね。良かった」

「ぎゃああああ!!!!」


思考の最中に突然話しかけられた涼音は乙女らしからぬ声を上げる。………家の中にあった持ち主不明の宝石を即座に売り払うほどがめつい涼音だが、一応華のJKなので乙女とする。


声の主を見てみれば、それはそれはもう美しい顔面だった。それはもうとんでもないほどの美女である。左の眼を黒い眼帯で隠しているのが中二病めいて残念だが。


「はじめまして、能力者かもしれない女の子」

「あ、はい」


なんということだろうか。この謎の美女が中二病である可能性が30パーセントほど上昇してしまった。

てか、アリスてなんだ。少女が不思議な国に落ちる小説なら知っているが、それはイギリスのある作家が書いた超有名小説である。


「私の名前は小鳥遊香恋。突然だけど、貴女に質問があるの」

「あ、はい」


涼音は先程から「あ、はい」しか答えない。てか、答えられない。この美女、顔は物凄くいいのだが声がどこか淡々としていて、なんというか、あれである。外面とのギャップが酷い。


「貴女は普通では絶対ありえないことを体験したことはない?」

「ありますね。むしろ心当たりしかない」


普通ではありえないこと、それはここ数日で涼音が何度も体験してきたことである。この美女はもしかしたら何か知っているのかもしれない。


「そう、なら、ちょっと貴女には来てもらわなければいけない」

「え」



***



そんなこんなで拉致をされてしまった涼音である。

現在は物凄く豪華な部屋で待たされているが、一体自分は何をされるというのだ。


「お客様、小鳥遊様がお呼びです。案内しますので、まずはこちらへお着替えください」


なんか、凄い真面目そうで軍服着た女の人がすっごい綺麗な服持ってきた。なぜ着替える必要があるんだと一瞬考えたが、自分の格好を見て理解する。

雪に襲われ路上に投げ出された時に制服は汚れ、とても偉い人(多分)に会うのにふさわしい格好とは言えない。


服など着れればどうでもいい乙女として壊滅的な涼音でも、その服が凄い金額にあることは理解できる。

汚しちゃダメなやつだ、と瞬時に判断し傷をつけないように丁寧に身につける。

白地に赤と黒で丁寧に刺繍がされてある上品なワンピースだった。これ一つで涼音の二週間分の食費は余裕でいけるかもしれない。


着替えが終わったのをどうしてか瞬時に察したらしい先程の女性軍人は、スっと出てきて部屋の扉を開けて脇にずれたまま動かない。


え、どういう状態ですかこれは。動いていいの?ダメなの?女性軍人は涼音をじっと見つめるだけである。

恐る恐る部屋の外に出ると彼女は扉を閉め、「案内致します」と言ってスタスタと歩いていってしまった。


涼音が動かないままでいると、歩みを止めこちらをじっと見つめる。あ、ついて行けばいいんですね。このやり取りは2回目である。流石に申し訳なくなってきた。


それから数十分ほど歩いてもまだつかない。

どんだけ広いんだよここ、と内心でツッコミを入れる。学校の敷地よりも広いんじゃないだろうか。だとしたら、さっきの小鳥遊香恋という女は何者なんだ。


敬称で呼ばれていたから、この女性軍人よりは偉い人なんだろう。ならどれくらい上の人なんだろうか。てか、それよりここはどこなんだ。それすらも考えるのを忘れていた。


簡単な話、目の前の女性軍人に聞けばいいだけなのだが、如何せんこの人は怖い。体に剣でも刺さっているのかと思うほどに気配?雰囲気?とやらが張り詰めている。


そして、無言。数十分ほどの間に涼音と、この怖くて真面目そうな女性軍人が交わした会話はなんとゼロ。気まずいったらありゃしない。まず、こ「着きました」「あ、はい」


どうやら、やっとついたらしい。

これまでの会話がゼロから1になった。目の前の扉に目を向けると、なんともまあクソでかい。あと、滅茶苦茶豪華。さっき涼音がいた部屋の扉も相当豪華だったが、それの倍は豪華である。飾りに宝石使ってそう。


「失礼します、小鳥遊様。お客様をお連れしました。入室してもよろしいでしょうか」


コンコンっとノックをし、女性軍人が伺いを立てる。

涼音はいよいよ緊張してきた。だってなんか小鳥遊香恋って人が物凄く偉い人な気がして来たもの。なんか、ラスボス感あるし。


「ご苦労さま、もう戻っていいよ。彼女にだけ入ってもらって」


中から声が聞こえてきた。さっき顔を合わせた小鳥遊香恋の声と同じだ。やはり、淡々としていて少し違和感がある。特徴的な声なので、あの顔面と同じく、恐らくもう忘れることはないだろう。


女性軍人は涼音の方をチラっと見ると、「無事のおかえりをお祈り申し上げます」と言ってどこかへ行ってしまった。


え、待って、そんなヤバイ人なの?


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