推察
古着屋や雑貨屋で賑わう隣駅の町には度々足を運ぶ。
歩いていける距離なので、高架下を辿りながら行くのが常だった。
まだ暑いので、日が沈むのを待ってその日は高架下の家路を歩いた。
町を歩けば色々な人とすれ違う。
制服を着た学生さんや、手を繋いで歩く親子。
高架下の道は商店街よりは人が少ないものの、人の往来で、ゆっくりと歩けば背中から誰かに追い抜かれる。
そこで私は歩きながら遊び半分にあるゲームを思いついた。
後ろから近づく音を頼りに、次に自分を追い越す人がどのような人か当てるのだ。
パカッ、パカッ、パカッ
という音を立てて近づいてくる音があった。
なるほどこれはわかりやすい。
これはサンダルが歩行の度に足の裏から離れ、地面への着地の際になってる音だ。
音の大きさからして体重のある男性に違いない。
答えを確認すると、予想どうりにサンダルを履いた中年男性が前を通り過ぎた。
チリリリリリ
これもわかりやすい自転車だ。
正解。
コツッコツッコツッ
革靴を履いたサラリーマン。
ハイヒールの女性だ。
外れ。
ザッザッザッザッザッ
音の感覚が短い。
これはランニングマンだな。
正解。
シャワ、シャワ
何かが擦れる音。
これは、ビニール?
なるほど買い物袋を抱えた奥さんかな。
正解。
と、こういう風にして遊びながらノロノロと歩いてたのだった。
そうしていると、
カツカツカツカツカツカツカツカツ
と何やら硬い靴を履いたような足早な歩行音が聞こえてきた。
早足の人が来た場合は解答時間が短い。
その音は大きくなってきて私の真後ろまで近づいてきた。
革靴のサラリーマン!
と心の中でギリギリで回答して、
私の目の前を通り過ぎるのを待った。
カツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツ
おかしい。
いっこうに私を追い抜く気配がない。
カツカツカツカツカツカツカツカツ
と音は背後で鳴り響いている。
振り返ってみると、
そこには口をニッと開き、
上下の歯をカツカツカツカツと鳴らす女が立っていた。