二 学校の七不思議
私が通っていた学校には、余所でもよく聞かれる七不思議ってやつがあったんだ。和美も知ってるよね?
で、これもよく言われているやつだけど、七不思議全部を知っちゃうとよくない事が起こる。これ、うちの学校の七不思議でもあったのよ。
という訳で、私が話す以外の七不思議を知っていても和美は喋っちゃだめよ?
七不思議で私が知ってるのは、旧校舎の二階角の教室と実験室の喋る標本、それと音楽室のピアノの話。
「和美、大丈夫?」
「平気。それは私も知ってるから。というか、それ以外のやつを知らないよ」
「そっか。じゃあ続けるね」
喋る標本辺りはよく聞く話のやつだよ。真夜中、実験室を覗くと人体標本が他の標本と話してるってやつ。何でも、いつも立ちっぱなしで辛いって愚痴言ってるんだって。
これはまあ、あんまり怖くない七不思議だね。実際、みんなで話していてもどっちかっていうと笑い話になっちゃうし。標本が愚痴かよって。
旧校舎二階角の教室の話は、ちょっと怖い。その教室自体はもう使われていないんだけど、同じ旧校舎に教材が置いてあったりするから当番の生徒が入る事はよくあるのよ。
で、その二階角の教室は、放課後になったら絶対行っちゃいけないって言われてるの。特に晴れて夕焼けが綺麗な日はね。
放課後にその教室に行って窓から外を眺めていると、いつの間にか隣に女子生徒が立っている。でも、彼女が着ている制服は、セーラー服なの。うちの学校、創立が古いからか一回制服のデザインが変わってるんだ。セーラーは古い方で、新しい方はブレザー。
その古い制服の女子生徒を見ても、何故か顔がよくわからない。夕焼けで赤く染まっているからかと思ってよく見てみると、その赤は血の赤なんだそうよ。
それに気付くと、あっという間にその子の制服は真っ赤に染まって消えるんだって。
この子は出会っちゃうと怖いだけで実害はないんだけど、次の音楽室は場合によっては実害が出るらしいよ。
音楽室のピアノはよくある話で、夜中の十二時に誰もいない音楽室でピアノが鳴っているって話。
うちの学校では曲にレパートリーがあって、ベートーベンの月光、ショパンのノクターン、モーツァルトのトルコ行進曲。
でもね、実はもう一曲あって、学校の校歌を弾いてるバージョンがあるんだって。
で、これは絶対聞いちゃいけないの。聞こえてきたら、その場から走って逃げろって言われてる。
もし最後まで聞いちゃうと、不幸な事が起こるんだって。
私が聞いた話だと、十年前に無断で学校で肝試しをしていたグループがいたそうだけど、そのうちの一人の女の子が最後までピアノの校歌を聞いちゃったらしいの。
で、その子、翌日学校近くの大通りで赤い車にひかれて死んじゃったんだ。
でもおかしいんだって。どれだけ目撃者を探しても、誰もその事故を見ていないの。真っ昼間だったのに。でも、何故か彼女をひいたのは赤い車だって話は出回ったの。
結局、今でも彼女を引いた車は見つかっていないんだって。
でね、その夜中のピアノ件だけど、弾いてるのは二十年くらい前に赴任してきた音楽教師だって話なんだ。
その先生、赴任してきて半年くらいで音楽室で首をつって死んじゃったんだって。何でも、妻子持ちの同僚教師と不倫して、それがバレたからって話だよ。
でね、その先生、通勤に赤い車を使っていたんだって。