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黒衣の天使  作者: ちとせ
Ⅰ 学園に上手く潜入出来たようですが……それで?
2/2

一話 仲間はずれ

「おい、そこ。ボーッとしてんじゃねぇぞ」

「はぁ…」


 教室。教師がこっち向かって言う。

 窓の外を観てはやったし。


『えー? マジ叱られたー?(笑)』

『ウケるwww』

『転校生だしねー』


 でもな、あたしだけ叱られなきゃなんないんだよ。

 あーあー。進学の転校生、甘くないわね。

 別にどうでもいいけど。


 外から見覚えのない鳥の鳴き声。烏の一種なのか?




「はぁー、疲れた」


 放課後すぐ部屋に帰る。

 グレーブ魔学園女子寮。


 学園全体は予想したよりずっと大きいし、てかでっかい、迷いやすそう。

 とは言え、この寮、多分百弱の部屋ぐらいある。それはまぁ、確かに多いが、全生徒にはとても足りないじゃない?

 まぁ、兎に角。


「ここ、これから住み所になるねぇ。心配してしまってしょうがないか」


 安全さのことじゃない。他の生徒達もなんとかなると思う。でも……。


「汚れ、濃いな」


 悪魔だらけで、当然だ。

 でもあたしは違う。

 あたし達天使には、汚れと言う物は毒なんだから。


「…仮眠とろうかな」


 睡眠で治る。この程度の汚れに慣れないとここに暮らす事は難しい。


「あ、思ったより柔らかくて気持ちいいベッド」


 見直したよ、魔界。




 ぐぅ〜


「うっ」


 お腹の音で目を覚ますとは。


 まぁ、昨日から何も食べてない。

 実行ランク試験で気絶し、翌朝ギリギリ起こされたし。しかも保健室に。随分道を迷ってて朝ご飯抜き。

 昼休み中、学食探したけど見つからなかった。

 この学園、全く無駄に広過ぎるわ。


「ん?」


 机に何か貼り付けてる事に気付く。


『転校生に学園を案内して』


 そう言えば個人室じゃなくてツインルームって言うやつだったね。

 通りに大きい、じゃ特にないけど、一応風呂付だな。

 一人専用は流石にないな。

 ルームメイトにまだ会ったことないけど。


「仲良くなれる子に見えないね」


 期待も上げずに、ただあいつをほっとく事にした。

 自分で学食を探さざるを得ない様だ。




 ……。


「寮の隣かよ!」


 声を出さなくていられなかった。




 人界スペシャル・ナポリタン。

 ここで何の料理を提供するのかなーと悩んだけど、大丈夫みたい。

 人がいっぱい……まぁ、どこの世界の学食だってそうじゃないかな。


『あそこ、噂の転校生?』

『ホントだー』

『あー、あれね。実験で倒れたって』

『えーダッサ!』


 噂って早いな。

 気に入らないけど、どうしようもないしな。

 にしても、実行ランク試験略して実験……酷い略称ね。


 ……その後帰ってから翌朝起きるまで、ルームメイトは帰ってこなかった。




――――




 教室。同級生も今日もまた下んない事喋る。


『転校生ちゃん変だねー』

『そーそー。誰にも喋んないしー』


 そんで変なのかよ。

 てかあたしだけじゃないでしょ。変って言うなら、後ろ右のあの子じゃん?

 目隠ししてんだよ?

 ……いや、知らない事情があるかも知れないけど。


『実験気絶だって』

『そりゃノーランクだろ?』

『いやオチじゃね?』


「あんたさ、どんなランク?」


 突然前の子に話し掛けられる。


「えっ、そいや言われなかった…」

「ウソ。言いたくないのか?」


 うるせぇな。


「だから知らないって」

「うわーっ。マズイに決まってるー」

「お前なぁ!」

「静かにしろ!」


 ヤバい。またやってしまった。

 だからあたしには向いてないって言ってたのに。

 目立っちゃうじゃんか。




 昼休み。昨夜寮の隣の食堂で買ったパンを食べて、学園を探検することにした。

 まず屋上に行こう。そうしたら……。


「?」


 そこに、女の子一人立っている。

 短い銀髪と、黒い目隠し。見違えるはずがない。

 うん、クラスのもう一人の変な子。あたしは普通なはずだけど。


「あ……」

「……」

「……」


 気まずい。目合わせた気がする。見えないけど。

 それ以外も無表情で、何を考えてるのか全然分からない。


「……慣れた?」

「え?」


 何を?


「学園」

「あ、あー。まだ全然」

「そう……」


 ……。

 うん、やっぱ気まずい。

 えー、なんて話そうか?


「なんか変だって言われてるけどな」

「転校生だから仕方ない」


 あーそう言う事か。


「……シネカ」


 その子の名前?


「……デスティネアよ。よろしく」

「長い名前ね」

「……」


 初耳だがな。


 シネカと友達(?)になった。




 まだ半週も経ってないのにある事に気付いた。

 そう考えながら、廊下で止まる。


「あっ」


 そして、左腕に何かぶつかった。


「どこ見てんのよ!?」


 振り向くと、ムカついてる女子生徒がこっちにつべこべ言う。

 そっちからぶつかったんでしょうが。


 って事は、つまり、悪魔って予想通り悪ガキだらけって事。

 

「きゃっ」


 また何かぶつかった。正面に。

 あ、今度はあたしのせいか。道を見ないで歩いたし。

 小さい何かにぶつかった。


「あ、すま――」

「あ、ごめんなさい。道見てなくて」

「え」


 謝った?

 正直な顔で謝りながら立ち上がる少女。

 茶髪のボブにヘアバンド、そして大きな緑の目。


「いや、こっちこそ。ぶつかったのはあたしだし」

「そんな事は……」

『リリッセ、置いとくぞー』

「あ、待って〜。では」


 お辞儀して小走りする女の子。

 あ、叱られてる。一応廊下だし。

 ……そんな悪魔もいるんだね。リリッセ、って言ったっけ。




 部屋に戻ったら、知ってる奴を発見。


「何であんた?」

「ルームメイト」

「でしょうね」


 貼りメモを見たら立ち上がるシネカ。

 机の方で何書いてあるのかここからよく見えない。


「行く?」


 また何? 突然。


「え、どこへ?」

「案内」


 あー、それもあったっけ。

 で、案内に連れていく。




 大事な施設やよく使う所を見せてくれてる。教室、部室、保健室など。

 学食いくつかも見せて、客のピーク時まで丁寧に。

 商店街まであるんだなー、ここ。

 

 考えると、この子、ちょっと変わってるけど意外と真面目にやってる。

 いや、真面目って言うかしっかりやってる。

 だから気になるな。


「ねぇ」

「ん?」

「昨日、どこにいたの?」

「?」


 何を言いたいのか、と聞くようにこっちを見つめる。


「案内、昨日予定だったでしょ?」

「いなかった。放課後」


 そいや早速帰ったな。

 いやそれでもさ。


「じゃなくて、昨日帰って来なかったよね」

「あー」


 聞いて良かったのかな? プライベート過ぎじゃないよな?


「寝てた」


 いや意味分からん。


「寝てたって?」

「寝てたから邪魔したくなかった」


 なーんだ。そう言う事か。

 こいつも()言葉苦手だな。

 ()()()が寝てたって意味かよ。

 分かる分けないじゃん、それ。

 で、寝てたあたしを邪魔しないように、夜遅く帰って来たとか。


「じゃあ、朝早起き?」

「日直」


 まあ、なんだ。シンプルだな。意外と普通な子じゃん。

 いや普通よりも気が利くやつかな。


「早寝した方がいい」


 でも会話スキルは低過ぎ。全然ついてけない話だ。


「朝から実行」

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