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第7話 花の両親への電話

「花の家族に今の状況を連絡しようと思うんだけど、花は今携帯電話が手元にないんだよね?」


「うん。だから龍生の携帯電話から連絡するしかないわ」


「今から花の家族に電話するから電話番号教えてくれない?」


「それなら私が家の電話に掛けるわ。だから携帯貸して」


「分かった」


僕は花に携帯を手渡した。


「私の家に掛けたわ。後はよろしくね」


電話を掛けている状態で花から携帯を受け取った。


プルルルル、プルルルル、ガチャ、


「はい」


「もしもし、相川さんのお宅でしょうか」


「失礼ですが、お名前をお聞かせいただけますか」


「池田龍生です。相川さんのお宅でしょうか」


「そうだが、龍生、何の用だ」


「花の事で伝えたいことがございまして」


「花が亡くなった事なら既に知っている。そんなことを伝えるために電話したのであればすぐに切るぞ」


「いえ、花が生きていることを伝えたくて電話をしたのですが」


「ふざけた事言うな!確かに花は死んでいたんだ…。この目ではっきりと見た!花がバラバラになっていたのを!…あの日いつものように会社で働いていたら花の番号から電話が来たんだ…。出てみれば警察の人からで、花が人身事故に遭って病院に運ばれた、バラバラになっていたからおそらく即死だろう、という内容だった…。私は急いで花が運ばれた病院へ向かった。2時間弱かかって病院に着いた。そこで見たんだ…。頭と胴体と足がバラバラになってしまっている花の姿を!花の変わり果てた姿に私はしばらく泣き崩れてしまったよ…。とにかく花がバラバラになっている姿をこの目で確かに見たんだ!あんな状態になってしまって生きているはずがない!それなのに生きているなんてふざけたこと言うな!」


ガチャン!

ツーツーツー…


電話を切られてしまった。花が生きていることを全く信じていない様子だった。


「花が生きている事を伝えようとしたら途中で切られた。正直言って僕が一生懸命伝えようとしても意味がないと思う」


「「「「それなら今度は私達が電話に出るわ。だから携帯貸して」」」」


僕は花に携帯を手渡した。花がさっきと同じように家に電話を掛ける。


プルルルル、ガチャ


「また龍生か。ふざけた電話はいい加減にしろ!」


「「「「お父さん!勝手に切らないでよ!」」」」


「…え?花?…いや、そんなはずはない。どんなトリックか知らないが花が死んだという事実は変わらないのだから下手な慰めはやめてくれ!」


「トリックなんか使ってないよ!娘の花だよ!いじめが理由で小学校5年生になる時に転校した花だよ!」


「え…。花がそんな暗い過去を他の人に詳しく伝えるか?高校生になっても龍生以外に仲の良い友達は出来ていないと電話で言っていたし…。とはいえ、龍生がそこにいるのなら花の暗い過去についても聞けるはずだ」


「それならお父さんがお母さんに夜景の綺麗な展望台でプロポーズしようとしたら暗くて指輪を渡す時に手間取った事を言えば本当に花だと信じてくれる?」


「ちょっと待て!なぜそのことを知っている!それを知っているのは私の家族だけのはずだ…。龍生に伝えるような事ではない…。ということは今電話に出ているのは花って事になる…。にわかには信じられないが…。本当に花っていうのなら次の質問に全て答えてくれ。本当に花なら龍生がそこにいなくても全て答えられるはずだ。花が龍生に伝えないような内容の質問もするからな」


「えっ…。ちょっと待って!龍生がここにいるのに?龍生に聞かれないようにするからちょっと待って!他のみんなで龍生を洗面所に連れて質問が終わるまで耳を塞いどいて!」

「「「そういうことだから洗面所に行くわよ」」」


「分かったよ。って洗面所に連れて行くのに3人も必要か?」


「「「質問が終わるまで龍生に絶対に聞かれないように全員で押さえつけておくからよ!」」」


洗面所に連れて行かれたと思ったらバンザイの状態で横になるように言われた。言われた通りにしたら2人の花はそれぞれ僕の胸と太ももの上に女座りのような形で座り、1人は頭の上の辺りに座って太ももで腕を固定してきた。


「ちょっとこれはやり過ぎじゃない?」


「「「どうしても聞かれたくないの!質問が終わるまでだから我慢して!」」」


すると2人がかりで僕の耳を塞いできた。直後に準備OKと言う声が聞こえてきた。って耳を塞ぐのは1人で十分でしょ、と心の中で思うのであった。この状況は数分後2人の花が耳を塞ぐのをやめるまで続くのであった。


数分後、花が耳を塞ぐのをやめて全員僕の上からどいた後


「「「花が呼んでいるからリビング行くわよ」」」


と言われたので3人の花と一緒にリビングへ向かうのであった。



--------------------------------------------------

電話に出ている花side


「えっ…。ちょっと待って!龍生がここにいるのに?龍生に聞かれないようにするからちょっと待って!他のみんなで龍生を洗面所に連れて質問が終わるまで耳を塞いどいて!」


「他のみんなって龍生以外誰といるの?」


「龍生の友達とだけど…。詳しい事は後で説明するわ」


「それで質問はいつになったら始めていいんだ?」


「大丈夫になったらこっちから言うからちょっと待ってて」


しばらくして龍生の所にいる花から準備OKという声が聞かれたので


「準備出来たよ」


と答えたら父から花かどうかを確かめるための質問が始まった。


生年月日、両親の誕生日、通った小中学校の名前、中学校の担任の先生の名前、幼稚園児の時の将来の夢、小さい頃いつも抱いていたぬいぐるみ、小学生の時見ていたアニメの好きだったセリフ、○月○日が何の記念日か(正解は花が初めて友達を家に呼んだ日)ついて質問されたので全て答えた。


出された質問に対して全て答えると


「全部正解だ。花が生きていることは今でも信じられないが今電話に出ているのは花で間違いない。なんで死んだはずの花が生きているのか説明してくれないか」


「それより質問はこれで終わりなの?終わりだったら龍生と他の花を呼ぶからちょっと待ってて」


「他の花ってどういうことだ?他の龍生の友達も名前が花なのか?」


「その事については後で話するからちょっと待ってて」


そう答えて携帯をテーブルの上に置き


「質問が終わったからみんなこっち来て」


10秒ほどしてみんな来たので再び電話の会話に戻るのであった。

--------------------------------------------------




「それで他の龍生の友達も花というのはどういうことなんだ?今修羅場にでもなっているのか?」


「違うわよ!みんな仲良くしてるわよ。そうだよね?」


「「「そうでーす」」」

「そうだね、さっきはちょっと揉めていたけど」


「「「「要らん事は言わなくていいの!」」」」


「やっぱり揉めているように聞こえるけど大丈夫なのか?」


「大丈夫よ。みんな心に闇を持っている人同士だったから話し合う内にお互いの過去の事に共感して今では仲良くしているから」


「まあ、それは本人達が問題ないって言うのならいいけど。それより死んだはずの花が生きている理由について説明してくれないか」


「あの日いつも通り帰っていたら踏切の辺りで突然誰かに前から突き飛ばされたの。気付いたら病院のベッドの上にいたわ。そこで私が電車に轢かれてバラバラになり即死だったって内容のニュースを聞いたの。バラバラになって死んだはずの人が無傷で生きている事が知られたら大変なことになると思った私は気付かれないように龍生の家に向かったわ。本当は自宅に行きたかったけど入る手段がなかったから」


「突き飛ばされたって誰に突き飛ばされたんだ!」


「分からないわ。一瞬のことだったし押した人の顔も見ていないから誰に押されたのか検討も付かないし」


実際はクラスメイトに突き飛ばされたのだが大事にしたくない花はその事について詳しくは言わないのであった。


「龍生の家に向かったと言ってたけど今どこにいるんだ?」


「龍生の家よ。死んだはずの人の家で誰かが生活している事に気付かれたら大事になるでしょう?」


「まあそれはそうなんだが…。ってことは龍生の家で生活しているのか?」


「そうだけど」


「それだと生活費はどうしているんだ?」


「とりあえず龍生から数日分の食費をもらったわ。私の財布もキャッシュカードもカバンの中に入れていたから今手元に無いし、おそらくカバンは警察の所に行っているだろうから大事にせず私が手にするのは絶対に無理だし」


「ってことは龍生のお金で生活しているのか。龍生に詳しいことを聞くから代わってもらってもいいか」


「分かったわ」


花から携帯を受け取った。


「花から生活費は龍生の分から出してもらっていると聞いたがお金は足りるのか?」


「全然足りないです。電話した大きな理由は花達の分の生活費が足りないから花の両親に相談するためです」


「そうか、それならとりあえず今月の花の生活費は龍生の手元に行くようにしておこう。それより花達ってどういうことなんだ。私の娘は1人なんだが?」


「それは花が4人いるからです」


「どういうことだ?」


「僕もよく分からないです。花からも病院で目が覚めたら4人になっていて理由も分からないと言っていました」


「4人になっていたことについて詳しく聞きたいから花に代わってもらってもいいか」


「分かりました。ただいま代わります」


さっきまで電話に出ていた花に携帯を手渡した。


「龍生から花が4人になっていたって聞いたけどどういうことなんだ?」


「私も分からないわ。病院のベッドで目が覚めたら私が4人になっていたのだから。分かっていることは4人とも見た目も記憶も完全に同じということだけ」


「それだと4人になった原因は分からないって事か…。そもそも4人になった事が信じられないが」


「とにかくバラバラになって死んだはずの人が4人になって生き返ったなんて知られたら大騒ぎになって私もどんな実験に巻き込まれるか分からないわ。だからこの事は誰にも知られないようにしないといけないと思っているの。だからこの事は誰にも言わないで」


「分かった。ということは私達以外誰もこの事を知らないと」


「多分。私を知っている人が買い物に出かけたり私の家にあったものを龍生の家に運んだりしている事に気付いていなければの話だけど」


「龍生の両親もこの事は知らない?」


「知らないと思う。龍生が個人的に伝えていなければの話だけど。龍生、この事って龍生の両親に伝えた?」


「伝えてないけど」


「伝えてないみたいからおそらく知らないと思うわ」


「そうか…。3日後の土曜日にアパートの契約の件でそちらに行くから詳しいことはその時に今後のことも含めて話し合おう。4人になったということも信じられないし。予定が合えば中学生の時みたいに龍生の両親も一緒にだ」


「分かったわ。あと、4人になった事は実際に見てくれたら信じるしかないと思うわ」


「その話はとりあえずここまでにして最後に母にも花の声を聞かせてくれないか」


「分かったわ」


「花、本当に花なの?」


「お母さん、花だよ。世間では亡くなったことになっているけど確かに生きているよ」


「…それじゃあ詳しいことは土曜日に直接会って話し合う事に決定だ。話し合いについてはまた金曜日に相談だ。どこに集まるかとかも決めないといけないしな」


「ええ、分かったわ」


「それじゃ、切るぞ」


ガチャ。ツーツーツー…


「とりあえず花達の両親に花が4人になって生きていることは伝えられたし、これで生活費はなんとかなりそうだな」


「「「「ええ、そうだわ」」」」


「そういえばさっき私が電話に出ている時に全員で押さえつけておくって言ってたけどどんな感じだったの」


「横にさせられてから上に座ってくる感じだった」


「私が電話に出ている間に龍生と密着していたのね。ずるいわ〜」


「ちょっと急に抱きついてこないでよ。…って4人全員から抱きつかれたら動けないから」


4人の花に前後左右から抱きつかれる龍生であった。


その後花達が落ち着いてから龍生が両親に電話で今の状況を伝えた時には既に花の両親から龍生の両親に連絡がいっており、何かあったのならもっと相談していいんだよ、と母から電話で言われるのであった。

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