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第4話 分担

「誰も居ない今の間に課題を終わらせておくか。色々としなければいけないことがあるし」


龍生が課題に取り掛かってから20分後、大きめのリュックを背負った花とスーツケースを持った花が帰ってきた。


「「ただいま〜」」


「おかえり。あれ、2人だけ?」


「うん。服などを運ぶのに使えそうな大きなカバンが2つしかなかったから運ぶ2人と家で必要なものを出していく1人に分かれてきた。今から服を出すからいいって言うまで絶対こっちを見ないでよ。下着とかも入れているんだから」


「分かった。いま課題をしているところだからそれは大丈夫。それにしても分担の仕方ってどうやって決めてるの?」


「初めは話し合いで決めようとしたけどやりたいことが全員同じで喧嘩になっちゃって」


「まあ、全員花だから仕方ないな」


「それならじゃんけんで決めればいい、って話になったんだけど、何回やってもずっとあいこになっちゃって」


「じゃんけんの出す手まで同じなんだ」


「仕方ないからトランプで勝負して決めようと話になったんだけどババ抜きの順番を決めるじゃんけんが終わらずゲームが始まらなくて」


「うんうん」


「仕方ないからトランプのAから4までの4枚を使ったくじ引きで決めた」


「引く順番はもめなかったの?」


「4枚を床に置いて同時に取る形にしたから順番は揉めなかった」

「順番はもめなかったけどみんな同じカードを取ろうとして揉めたよね」

「考えてることはみんな同じだしね。輪になってたから距離が1番近かった人が取りたいカードを取っていったし」


「でも、僕が帰ってきてからそんなことしてた様子はなかったけど」


「揉めたのは私達が朝ごはんを食べた後だったからね。その時は誰が食器を洗って誰が洗濯をするかで」

「それでさっき言ってた感じで決めたんだけど、次は誰が荷物を取りに行って誰が買い物に行くかで揉めちゃって」

「その時にくじ引きで今日1日全部の選ぶ順番を決めることにしたの。まあ、そこでまた揉めたんだけど」

「後出しのルールで1日全部の順番を決めるのはずるいってね」

「1回目ので結果でいいじゃん、って私は言ったんだけど、1対3で2回目のくじ引きを要求されて私の意見は通らなかったわ」

「それで2回目のくじ引きで小さい番号を引いた2人がここに来たの。2回目のくじ引きでAを引けて良かったわ。龍生と一緒に居られるし」

「ほんと良いわね、私は最初のくじ引きでAを引いたけど2回目は2だったから荷物を出し終わったらすぐ家に戻らないといけないし」


「それじゃあ、仕事が全部4を引いた人に回ってしまいそうなんだけど」


「それは大丈夫。並行で行えることがあれば1つ小さな番号を引いた人がそれをすることになるから」

「全員が何かしらしていたら最初に手の空いた人が次のことをするようにしているし」

「それにしてもババ抜きで決めるのが却下されて良かったね」


「何があったの」


「特にすることが無くなってから4人でババ抜きをしてたんだけど、残り2人になってから全然終わらなくて」

「ずっと2人でババばっかり引いてて暇だった」

「2回戦は相手が自分だと気付いて取り方を変えたらババが動かないまま終わってしまったし」

「その後も極端な試合ばっかり起こったからね」

「全員が残り2、3枚になってから全然試合が動かなくなることもあったし」

「順番を決めるたびにこれだと疲れちゃう」


「ははは、それは大変だね」


「それで他のトランプゲームもしたんだけどなんか全体的に盛り上がらなくて」

「つまんなくなってきたからやめた」


「そうなんだ」

(極端な話1人で複数人でやるゲームをしているようなものだしな…)


「とりあえず服は全部出し終わったから私は家に戻るね」


「行ってらっしゃい」

「行ってらっしゃい」


片方の花がリュックとスーツケースを持って出かけていった。


「ところでタンスやクローゼットで空いているところはある?」


「タンスは1番上の段なら空いてる。クローゼットも掛けるスペースはある。下のスペースは冬用を置いてるから空いてないけど」


「これなら下着はタンスに全部入れられそうね。服をどこに置くか決めないといけないけど。リビングと和室とどちらの部屋にいることが多い?寝てる時以外で」


「うーん、どうだろ。リビングかな。でも横になってゲームやパソコンをするときは和室にいるし」


「それだとなんとも言えないわね。とりあえず今は和室に置くわ。もう1回荷物をここに置くし」


花は服を和室に運びだした。その途中で「もう後ろ向いてもいいわよ」と聞こえた。どうやら下着をタンスに入れ終わったようだ。


「今から着替えるから洗面所に行ってくれない?」


「今課題してるところだから机から動きたくない。そっちは向かないから課題進めさせて」


「絶対だよ。もし向いたら後で全員でお仕置きだよ!」


「分かった分かった」


「絶対の絶対だよ!フリじゃないからね!」


「分かったから。課題に集中させて」


花の着替えは何事もなく終わった。まあ、後でどんな目に会うか分からないから後ろを向くわけがないけどね。1対4で仕返しされるのは目に見えてるし。


花の着替えが終わってから数分後、買い物に行っていた花が帰ってきた。


「ただいま〜」


「おかえり」

「おかえり」


「死んだはずの私だと気付かれないか心配で緊張した…。特にレジの時。今日は何も聞かれなかったから大丈夫だとは思うけど…」


「それなら大丈夫だと思う。まあ、思うというより思いたいだけど」


「普段と買う量も時間も違うからもし聞かれたら他人の空似で誤魔化そうとは思っているんだけど…」


「誤魔化し切れるかどうかは分からないしな」


「今日は会わなかったから良かったけど海鳥高校の生徒と会ってしまうとバレてしまう可能性が高いからね…。今日はまだ部活をしている時間だったし」


「部活帰りの時間とぶつかると生徒の誰にも会わないのは難しいよな。買い物も時間が限られそうだな」


「となると授業時間の間に買い物に行くのが良さそうね。食べ物を買う必要がある時にはテーブルの上にその分のお金を置いて出かけてくれない?その前日に言うから」


「分かった。でも今はお金が足りないから両親に伝えてからでないと十分な額は用意できないと思う」


「やっぱり高校生の1人暮らしと同じ額で5人で暮らせって言われても無理な話だよね。通ってる高校はバイト禁止だし、親から必要な額だけもらっているのよね」


「そこなんだよな。バイト禁止だからバイトするわけにもいかないし。特別な事情を説明しろっていうのも無理な話だし」


「そうなると死んだはずの私が4人もいる事を言わないといけないしね。それより今から着替えたいから洗面所に行ってもらえない?」


「またかい!今課題しているところだから机の所に居たいんだけど」


「それなら大丈夫よ。さっき私がここで着替えたけど後ろ向くことはなかったし見張っておくから」

「それなら安心ね。しっかり見張っててね」

「了解〜」


「よく考えたらそっちが洗面所に行って着替えたら何の問題もないと思うんだけど。前みたいに4人で着替えるのでなければスペースは十分あるし、バラバラに着替える度に課題を中断されると全然進まないし」


「それもそうね。洗面所で着替えてくる」

「それなら私はここで洗面所に行かないか見張ってるね」


「どれだけ信用ないんだよ!」


「ってよく考えれば家用の服がないと着替えられないじゃん」

「それなら和室に置いてるから」

「ホントだ。それじゃあ着替えてくる」

「私はここで見張ってるね〜」


「結局見張るんかい!着替えているところには行かないよ!そんなに信用出来ないのか?」


「信用はしているよ。さっきも後ろ向かなかったし。それよりもずっと龍生を見ていたかったから…」


「花…」


「龍生…」


「何2人だけの時に熱くなってるの!花だけずるい!」

「そっちこそ花じゃない。それにくじ引きでAを引いた特権よ」

「後で残り2人の花に言いつけるわよ」

「抱きついたりしているわけでもないし別に問題ないじゃん。それならそっちがAを引けば良かったじゃん」

「その時はこうなるとは思ってなかったわよ。それに今日1日の順番を決めることになったけど、いつAを引けばこんな風に2人っきりになれるのか分からないじゃん」

「ずっとAを引き続ければいいだけの話じゃん」

「そっちだって1回目はAを引けてなかったじゃん」

「2連続4を引いて落ち込んでたあんたに言われたくないわよ」


「うるさい!これじゃあ課題に集中できないよ!」


「「あ…、ごめん…」」


(これから何度もこんな感じになるのかなあ…)

これからの生活についてこれまでと違う理由で不安になる龍生なのであった。

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