第2話 初日朝
「はあ、はあ。段ボール箱に入れて運ぶのは失敗だったかな。思ってたよりかさばったし」
龍生は衣服をいれた段ボール箱2つを持って自宅へ向かっていた。
「にしても、何回も花の家に行ったことはあるけどタンスを開けるのは初めてだったなあ。まあ、当然か。そんなことしたらしばらく家に入れてもらえないだろうし。てか、何の修行だよ」
段ボール箱に邪な気持ちを抑えながら衣服(下着等含む)を入れていた時を思い出して罪悪感を感じたため、このことについて考えるのはやめることにした。
「ただいま」
「「「「おかえり、服は4人分持ってきた?」」」」
「ああ、持ってきたよ。思ってたよりかさばったから段ボール箱が2つも必要になったけど」
「それじゃあ、中身を確認するからあっち向いていて。下着なども入れているし」
「いや、意味ないだろ。僕が全部入れたんだから」
龍生は心の中でツッコミを入れたつもりだったが、思わず声に出してしまっていた。
「「「「え…」」」」
花達の顔が真っ赤になっていく。ぷしゅう〜って音が聞こえそうな程だ。
「ってことは龍生の好みの下着が入っているってこと?」
「思っていたより時間がかかっていたしどれにしようか選んでたのね?変態」
「龍生が選んだ下着がこの中に入っているのね…」
「際どいのばっかり入っていたらどうしよ…」
「時間がかかったのは思っていたより重くて時々休憩したからで、下着は手前に入っていたものから適当に4つ取っただけだ!それより確認するんじゃなかったの!」
「「「「これからするわよ!だから早くあっち向いて!」」」」
「じゃあ洗面所に行くから終わったら呼んで」
龍生が洗面所に行ったのを確認して花達は衣服の確認を始めたのだった。
「確かに手前に入っていたものばっかりだね」
「言ってたことが本当で安心したというか好みが分からなくて残念というか」
「下着も含めて衣服は人数分ちゃんとあるわね」
「これでやっと普段の格好になれる」
「…って話全部聞こえてるんだけど。それより確認は終わったように聞こえるんだけどなんでまだ呼ばれないの」
「「「「確認は終わったけど今着替えているところだからもう少し待ってて。今覗いたら容赦しないわよ!」」」」
まだ時間がかかりそうだった。
「「「「着替えも終わったから来ていいわ」」」」
龍生がリビングに向かうとさっきまで花達が着ていた僕の服が床に落ちていた。
龍生は洗濯するために落ちていた3着の服を手に取った。
「「「私達の着ていた服を使って何かいやらしいことでもする気ね」」」
「んなことしねーよ。洗濯機に入れるだけだ。」
「「「ってことは私が着ていた服が龍生の服と一緒に洗われるのね」」」
「思春期の娘みたいなこと言うな。それにこれも俺の服だし。それより僕は高校へ行くけど花達はどうするんだ?」
「制服もボロボロだしそもそも死んだはずの生徒が高校に来てたら大騒ぎになるから家にいるわ」
「そもそも制服も1つしか無いし元々私は1人だったから行くとしても誰が行くかで揉めそうだし」
「それに服は持ってきてもらったけどその中に靴や靴下はなかったからそもそも出られないし」
「それもそうか。そろそろ朝食にするか」
「冷蔵庫の中を見たけど、食材はあまり入っていないわね。調味料は色々入っているけど」
「何勝手に冷蔵庫の中を見てるんだ」
「私達は今出られない状況だから食べ物がどのくらいあるかは重要よ。これだと今日の昼の分があるかも微妙ね」
「元々1人暮らしだから仕方ないだろ。平日なら朝はパンで昼は購買だから夕食しか自分で作らないし」
「食パンの残りは3枚ね。1枚ずつ分けようとしたら1人食べられないわね」
「なんで僕の分を入れていないんだよ」
「これは冗談よ。平日の朝に1枚ずつ食べている残りが今3枚で今日も1枚食べて出かけるのは分かるから。それより4人でパン2枚だと少ないわね」
「米はまだ十分残っているから龍生が出かけてからどうするか決めたら」
「それもそうね。高校に行かないから時間も十分あるし」
「今は高校に行っても大騒ぎになりそうだしね」
「買い物はどうしようか。このままだと全然足りないし」
「外に出るとしたら私だと気づかれないようにしないといけないだろうし」
(4人分の食費が追加だからな。これまでの仕送りの分だけでは絶対足りないよな…。)
これからの食費をどうしようかと考える龍生であった。
「学校からの帰りに私の家に寄って靴と靴下を4人分持ってきてちょうだい」
「あとマスクを4枚買ってきて」
「分かった。でもどうして?」
「私の家から生活用品や着替えを持ってくるからよ。服も今日の分しか無いし洗面用具とかも必要だし」
「それに買い物にも行かないといけないし。毎日学校帰りに4人分の食料を持って帰るのも大変でしょ」
「その時少しでも顔を隠したいからよ。私が生きていることが知られたら大変なことになりそうだし」
「それもそうか。では行ってきます」
「「「「行ってらっしゃい」」」」
(そういえばこの事って花の親は知っているのかな。僕の家にはこっそり来たし連絡手段を持ってなさそうだったし)
帰ってからこの事について花達に聞くことに決めた龍生であった。
続きの展開を少しだけ決めましたので久しぶりに投稿しました。
次回の投稿の予定は未定です。