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新たな日常。温かさ。

 ゴールドフィッシュを倒してから十分程、ミストストーカーは最後に残ったテイルラットが倒される事で全滅した。

 統率者であろうゴールドフィッシュが居なくなったせいか、その後のミストストーカー達は闘争心が消え去ったように守りに徹するようになってしまい、空に逃げるバットを僕が撃ち落として地を走るテイルラットを西野さんが殴りつけていった。

「全滅」

 西野さんはそれだけ言うと、僕に近づいて僕の右手を掴み取る。回復していたとは言え全快でも無く、あの後傷も増えたのだろう。西野さんは僕の魔力を使う事で身体を癒していく。

 戦いが終わったとは言え、流石に西野さんも魔力が心許ないだろうから僕の魔力を使うのは妥当だろう。

「初めての相手だったけど何とかなったノ。こは間違いなく少年のおかげなノ」

 ラビは珍しく僕の肩に乗ってくる。器用に動かしていた耳はダラリと垂れ下がり、短い手で僕の頬を叩いてくる。

「終わったんだね」

「ええ。大きいけど時間が経てばこの空間もちゃんと消え去る」

 ラビに向けていた視線を西野さんへ向ける。思えば、正面からこの距離で魔法少女の西野さんを見るのは初めて会った時以来だろうか。

 普段とは異なる金色の髪を靡かせている西野さんを見ると、非日常に居ると分かりながらも安心を覚える。

「僕ばっかり安全で、西野さんばかり傷を負わせちゃってごめんね」

「当たり前よ。私は守る側で、涼太は守られる側。そういう定め」

 男として格好のつかない返しだ。

 逆の立場を望まれても僕は身体強化や自己回復が魔法で出来るわけではない。出来るのかもしれないが、そんな自分を創造出来ないのだから多分才能は無いだろう。

 これからもきっと、僕は守られる側なのだろう。悔しい話だ。

「けれど今回は助けられた。涼太が居なかったら私はこの空間で力尽きていた。ありがとう」

 西野さんは僕に笑いかける。先ほどまであんな痛々しい姿をしていたのに笑顔を作れるのだから、西野さんは強い人だ。

「こちらこそ、守ってくれてありがとう。そして、これからもよろしくね」

 ここに来る前には口にしていなかったから、改めて僕は口にする。今回足を引っ張る場面は多々あった。けれど改めて一緒に戦って、僕にも出来る事が新たに増えた。きっと西野さんでは難しい分野だろう。

 僕が上手く扱えるようになれば、きっと足を引っ張る事は少なくなる。肉体面で足を引っ張ってしまうのはすぐにどうこう出来る事ではないので、一旦外へ置いておこう。

「うん。よろしく、涼太」

「コンビが決まった所で、とりあえずこの空間から出るノ。返って休んで、明日からは少年の強化期間なノ!女の子に抱えられてばかりの少年にはビシバシと鍛え上げて貰わないと見てて恥ずかしいったらないノ」

 やはり外には置いとけないようだ。

 それに本当は僕も諦めたくない。女の子にお姫様抱っこをされて何も思わない男と、抱える魔法少女の絵面は需要も無いし、きっと魔法少女界で前代未聞だろう。

 今は強化期間なんて考えたくない為、この発言については触れないでおこう。

「さぁ、帰ろうか西野さん」

「うん。行こう」

「偶にはラビの事も気にかけてほしいノ!」

 突然の転校生に突然の怪奇現象。

 蓋を開ければ命をかけたやり取りで、吹き飛んで衝突したのはその転校生で魔法少女。

 転校生自体は珍しく無かったが、こんな出来事は人生で一度きりだろう。

 そしてその出会いに身を任せた僕は、きっとこれからも体験した事の無い出来事に携わるだろう。巻き込まれるわけで無く、あくまで僕が身を任せた結果だ。そして隣に居るのが西野さんであれば安心出来るだろう。

 氷のお嬢様と呼ばれた彼女は、別に表情が無いわけでもなく心が凍ってるわけでもなく、表情変化が乏しい人を守るために命をかける事が出来るかっこいい女の子だったのだから。

 出会いは突然だった。

 けれど別れは突然であってほしくない。

 だから僕は通じる限り、この力を使おう。何で僕に大量の魔力が宿っていたのかはこの際後回しだ。

 僕と西野さんは晴れ晴れとした表情で、扉を潜る。

 先程までは隠されていた上空に煌めく星々は、今の僕にとって最高の出迎えだ。

 繋いだ手を放す事も忘れ、僕たちは日常へ戻っていく。

 これからはここも、僕にとっての日常だ。

 出来事が起こるのはいつも突然。その中には幸も不幸も交じり合ってる。

 魔法少女との突然の出会い、この手に伝わる温かさを独占出来るのだから、この出会いは間違いなく幸運だ。

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