9,大切なのは血縁より絆だよね? byアスタ
あくまでも小学生が主人公ですm(_ _)m
僕は山興村に住む小学四年生、新治明日太。友達からはアスタと呼ばれている。
山奥の村に住む僕は、全校生徒僅か六人の小さな学校に通っている。校舎は木造で、建てられてから五十年以上。
季節は五月、この村にもようやく桜が咲いた。学活中だけど、桜にうっとり。
「え〜、今日から飼育委員にアスタ君が入りま〜す♪♪」
教壇に両手を着いて立つ担任の美佐島秋子
先生が教室に居る全校生徒に告げた。
美佐島先生は二十七歳、ショートヘアでスラッとした体型の美人教師として生徒や職員から人気の先生で、いわば学校のアイドルだ。ちなみに全学年、全生徒が同じ教室で学んでるからクラス担任の教員は一人しか居ない。
「アスタ君、動物さんたちのお世話、宜しくね」
「うん、宜しくです」
その日の放課後、早速飼育委員の仲間に入り、飼育小屋で鶏やウサギの世話を始めた。三年生までは動物の世話は危険だから彼等の世話をしていなかったものの、以前からウサギを撫でたりしていた。しかし、四年生からは飼育に強制参加となり、彼等の命を預かる事になる。なので小さな学校で例え強制参加でも『委員会』という責任のある肩書きが付き纏う。らしい。
「おうアスタ! 今日からこっちでもよろしくな!」
「うん、よろしく! 湯沢君!」
湯沢君は活発でサッカーが五年生。だけど学校では一緒にサッカーしてくれる友達が一人しか居ないから、いつも校舎裏で一人、ボールって言う友達と遊んでるんだ。
飼育小屋に入ると、そこには二羽の鶏が居る。雄鶏と雌鳥が一羽ずつ。正におしどり夫婦の二羽は、玉蜀黍を粗挽きした餌を食べていた。
「コッコッコッコッ!」
「コッコッコッコッ!」
「コッコッコッコケーッコッコッコッ」
あれ? なんか増えてる。三羽居る。しかもでっかいの。鳴き声棒読みだなぁ、でっかい三羽目…
「あら、アスタ君、こっちでもよろしくね」
鶏が喋った! でっかいのが喋った!
じゃなくて、鶏の衣装を着ている六年生の絵乃ちゃんだった。絵乃ちゃんは活発なタイプではなく、ちび○子ちゃんのようなおかっぱ頭、成績優秀で少し大人しいタイプだけど、たまに予測不能な行動を取る。やっぱり天才は何か違う…?
「ははは、よろしく…」
あれ? 絵乃ちゃん?
「絵乃ちゃん、何抱えてるの?」
「卵を温めてるの。そうじゃなきゃ鶏の衣装なんか着ない」
黄色いクチバシとトサカがどこか間抜けな衣装を着た絵乃ちゃんが無表情で返事をした。
………
翌日の放課後、普段着姿の絵乃ちゃんが四年生の教室に走って来て、息切れしそうな声で僕に訴えた。
「ハァ、ハァ、う、生まれる…」
陣痛?
「絵乃ちゃんのお腹に赤ちゃん居るの?」
「そう、あなたの子よ」
ええっ!? 僕ですか!! いつ絵乃ちゃんと結婚したんだろう? それともドラマで見た結婚しなくても赤ちゃんが出来るって話は本当なの?
「それは冗談だけど、ヒヨコが生まれそうなの!」
息切れして思考能力が低下してるだろうに、よくそんな冗談が言えたもんだ。
絵乃ちゃんと一緒に飼育小屋に駆け付けると、既に卵は殻にひびが入っていて、親鶏のガーデンが卵を突きながらヒヨコが生まれるのを手伝っている。親鶏がタイミング良く卵を突かないとヒヨコは死んでしまう事があるらしい。
「ふほ〜っ、ふほ〜っ、生まれる、生まれますぞ〜ぉ、僕はもうすぐ空を見るんだ、あの青空を」
絵乃ちゃんが生まれそうなヒヨコに勝手な台詞を吹き込んでいる。その口調はやや興奮気味だけど冷静で淡々としていた。
それから間もなく一羽のヒヨコは青空の下に誕生した。
僕は思った。この飼育小屋には雄鶏のブロイラーと雌鳥のガーデンが暮らしている。しかしガーデンはここに来てから日が浅い。
このヒヨコの父親はブロイラーなの?