33,悔しさと夢を胸に
数日間雪が降り続き、ようやく晴れた3月中旬、今日は小学校の卒業式。とはいえ卒業生は絵乃のみなので、教室にて卒業証書とピンクの薔薇の花束を渡して僅か30分程度で終了。
この6年間、大人の事情で疲れることが山ほどあったけれど、友達と遊ぶようになったり、ダム建設阻止に向けて懸命に頑張った日々は、良き思い出へと変わりつつある。
ダム建設については、絵乃が村内に太陽光発電設備と風力発電設備を設置しか水力発電所の代行とする計画を立案し、巌に進言してもらったところ、受理される見通しが立った。
廃村を免れたため、村民には立ち退き料の支払いを中止したが、代わりに太陽光発電や風力発電によって村内の電力を賄える見通しのため、光熱費を格安にできるほか、余った電力を電力会社に売って得た利益を節電褒賞として村民に分配し、健康で文化的な生活を送れるよう取り計らうこととした。
また、村民の節電により、僅かながら都市部への電力が融通可能となるため、エコ活動と発展的な経済活動の両立に貢献し、全国に水平展開を行えば京都議定書に記された目標を達成するための排出権取引を行う必要がなくなる可能性も秘めている。
ただ、ダム建設工事の中止に伴う違約金の発生や、太陽光や風力といった所謂クリーンエネルギーは安定した発電を行えるのかなど、問題や不安要素を残す結果となった。同時に、巌の経済力に依存した部分が大きい点についても、絵乃としては満足とはいえなかった。
ただひとつの大きな成果といえば、廃村を免れたという事実一点である。
絵乃はこの日、将来の夢を見付けた。
私、人も自然も、みんなが快く共存してゆける世の中を創りたい。
今回は結局、子供のみでは力及ばず、大人の助けを借りた。それがとても悔しかったけれど、いつか自分の力で大切なものを守れるようになりたい。
一方、廃村は免れても父の転勤による引っ越しは免れない。これは事情だが、やはり子供の力ではどうにもならなかったのが悔しかった。5日後、荷物を纏めた腰越家の三人は近所や友だちに挨拶回りをして、新しい仲間が待つであろう神奈川県へと発った。
お読みいただき誠にありがとうございます!
大変長らく更新が滞りまして誠に申し訳ございません。
この物語は事実上、現在執筆中の『いちにちひとつぶ』(リメイク版)のスピンオフとなりました。また、大人になった絵乃は『れでぃーすとりっぷ』という作品にも登場しておりますので、よろしければご覧ください。旅行をテーマにしたトーク番組のようなコメディー形式となっております。
それでは筆者ともども、今後も拙作をよろしくお願いいたします!




