32,地熱発電所に関連すると推測されるリスク
ハートフルなアクションと経済戦略の両立は、これからの私たち人間の生活と、地球環境保全の両立を鑑みて最良の選択肢と考えられるが、どうも経済戦略が先走ってしまうのが現代社会の現実であるらしい。
それは、この山興村でも例外ではない。
この村では少し離れた街にある原子力発電所が建設から四半世紀を迎え、寿命のため近年中に廃炉予定だ。その代替としてこの村を廃村にし、水力発電所を建設する準備が進んでいる。
巌さんと対談した翌日、私は大介と洋子と一緒に図書館でスナック菓子をつまみながら会議を開いていた。
「やっぱポテチはうす塩だぜ!」
「梅しそ味もなかなか良いわよ」
「私はコンソメパンチも良いと思うな~」
「でもやっぱうす塩は基本っしょ!」
「そうね」
「だね~」
同時に納得した私と洋子。うす塩あってこその、他の味ということで、ポテチに関する議題は決着した。
「ううう…」
突如、洋子ちゃんが苦痛の表情を浮かべた。
「どうしたの?」
「どうした洋子ちゃん!?」
突然の訴えに心配する私と大介。
「生理痛が…」
洋子ちゃんは私より4歳、大介より5歳上の16歳。生理痛に悩むお年頃。
「せいりつう?」
大介は生理痛の意味を理解していない。
「女には色々あるのよ」
「よう嬢ちゃんたち」
談笑していると、頭領のような貫禄が滲む巌さんが私たちの前に威風堂々と現れた。
私たちが挨拶をすると、巌さんも同じように返してきた。
「子供だってのに、大人より頑張って村を守ろうとしてるな」
「はい。正直、子供の力ではどうにもならないと諦めかけていましたが、巌さんのお力添えがあって、私たちは希望が持てました」
「絵乃ちゃんは口が上手いな~」
「いえ、本当の事ですから」
しかし、私がこの村で暮らせる時間は残り僅か。今月中旬には小学校を卒業し、4月からは父の仕事の都合で神奈川県の葉山へ引っ越しだ。それでも私は、故郷を守りたい。この村にはずっと、残っていて欲しい。
「でだ、俺も村を残すために、建設業者を買収したり、新しいエネルギーについて考えたのだが…」
建設業者を買収するとは、この人はどのようなスジの人なのだろう。街を陰から支える仕事をしているらしいけれど…。
「新しいエネルギーについては、私たちも考えました」
「おう! 図書館でバッチリ調べたぜ!」
私に続いて、大介も言った。私は、村の地下に温泉脈があり、地熱発電所を建設出来る可能性を巌さんに話した。
「あぁ、それなんだがな、地熱発電所を建設すると、硫黄の臭いが村に漂ったり、地熱利用で自然のリズムを壊して地震が起きるかも知れねぇんだ」
「マジかよ!?」
大介をはじめ、驚きの表情を見せる子供たち。だが私は地熱発電のリスクについて隅で考えていた。
そもそも、この村からすれば今の原子力発電所が無くなったからといって、新しい大規模発電所を建設しなければならないほど困らない。但し、周囲の栄えた街が困る可能性があるのだ。なら栄えた街に発電所を建設すれば良いではないか。村人の中にはそう考える人も多い。
大規模発電所、周囲の街…。
私の中で、何かがパッと閃いた。これを言葉に変換するまで刹那。
もう時間がない。卒業までも、ダムの建設工場開始予定日までも。
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地熱発電所周辺で発生する地震について、現段階では地熱発電所の設置によるものとは言い切れないようですが、何等かの関連性があるのではと考える人はいらっしゃるようです。




