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あいはぐ  作者: おじぃ


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28/33

28,お互いに守りたいものがある

腰越家に突如現れた気迫と黒いオーラが漂う大男。地上げ屋か、それともクール&ビューティーな私をさらいにきた変態ロリコン野郎か!? 今日もまた絵乃は乙女のピンチ!?


「おやおやお帰り。わざわざご苦労だねぇ」


お帰り!? どういうこと? トメばぁちゃんの応対はまるで帰ってきた子供を迎えるように温かい。


「おう、村の一大事だからな」


「おいおいトメばぁちゃん、この人一体何者なんだ!?」


「私をさらいに来たの!?」


さっきから頭を駆け巡る予想を何故か信じたくない私。まさか本当に?


「あぁ、私のせがれだよ」


「「せがれ!?」」


私と大介は同時に声を上げた。信じたくなかった、何故か信じたくなかった。本当に息子さんだったとは…。トメばぁちゃんの雰囲気とあまりにも掛け離れ過ぎだわ。


「おぅ、(いわお)ってもんだ。突然押しかけちまって済まねぇなぁ。お袋が実家を留守にしてたら腰越さんちに来るようにって聞いてたもんだからよぉ」


「済まないねぇ、勝手に呼んでしまって」


「いえいえ、とんでもございません。しかし、この小柄なトメばぁちゃんからこんな大男が生まれるというの!? 妊娠中にお腹破裂しちゃうじゃない」


「いやいや生まれる前からこの大きさって訳じゃないだろ」


「えっ、そうなの!?」


「そうだよ!! 時間と共に人は変わるんだよ、身体も心も!!」


これはちょっとした私と大介の漫才だった。今度は時代と共に人は変わると言う大介に私が突っ込んでみよう。


「そうね、大介は例外かもしれないけれど」


「なにおっ!? 俺だって大きくなってるんだよ、身体も心も」


「そうね、一部を除いては」


「一部?」


そう、それは普段、他の人が目にしない隠れた個性。




「…ビッグボディー・ペニスモール」




途端、ペニスモールは不明としてもビッグボディーというよりはミドルボディーな大介の顔が、沸騰したかのように真っ赤になった。


「おおおおお、女の子がそんな事言っちゃいけないんだぞ!!」


「あら図星?」


「図星じゃねぇ…」


大介って、わかりやすい。いい奴なのよね。


「まぁいいわ、大介のアレの大きさがどうであろうと私には関係ないもの」


「なっ!?」


下ネタで盛り上がっていたら話が脱線してしまった。そろそろ本題に戻りましょう。


「それより巌さん、何か目的があって帰省されたのですか?」


「おぅ、ちょっと野暮用でな」


「巌は街を陰から支える事務所の所長をしているのだけんど、今回はこの村を助けるために帰ってきたんだべさ」


「すげぇ!! スーパーマンじゃん!! でさぁ、街を陰から支えるって、どういう仕事なんだ?」


「大介、巌さんがどんな仕事だって良いじゃない。でも敢えて言うなら、頭領(とうりょう)さんみたいな感じかしらね。とても偉い人で、大事な仕事をしているようだわ」


棟梁(とうりょう)? ああ、確かに街を陰から支える大事な仕事だよな! 家が建てば街が賑やかになるし」


「そうね、確かに棟梁さんは街を陰から支えているわね」


巌さんの職業がどういったものかは、大介はまだ知らなくても良いだろう。


しばらくお茶をした後、トメばぁちゃんと巌さんは帰っていった。


◇◇◇


村の子供たちの引っ越しまで二ヶ月と少し。刻一刻と別れの時は近付いている。そこでという訳でもないが、なんだか寂しくなってきた絵乃は、小学校の全生徒と、中学三年生の洋子、高校一年生の(まこと)を家に呼んだ。


「いや~、絵乃ん()なんて久しぶりだべした。おっ、大介、元気にしてたか?」


「おう! 元気だぜ! 洋子のおっぱいでも揉みたい気分だぜ!」


「よっしゃ! 行けー! 俺は絵乃でもナンパするか!」


「きゃーっ!!」


まりもっこりのように目をニンマリさせた大介がえいっ!! と勢い良く洋子にダイブ!! 欲望のままにBかCカップの胸を鷲掴み!!


ぐおおおおおん!!


刹那、まるで鐘の音のよう、大介の二つの玉は洋子の膝による衝撃を受けた。


「ぐおおおおおっ!!」


その場で(もだ)え膝を畳みモジモジしながら左右に転がる大介。うぅ、あぁ、と、か細く喘いで薄れゆく意識を保とうと奮闘しているのだ。


「あぁ、うぅ、くはぁ、あぅ…」


そのままガクン、と大介は眠りに墜ちた。


一方、高校生の真は小学生の絵乃をナンパ。危険だ。


「なぁ絵乃、子供の作り方知ってるか? 俺が教えてやろうか?」


「あら、小学生の私にそんな事を教えようとしてくれるのはこの変態ゾウさんかしら?」


絵乃は不敵な笑みを浮かべ、胡座(あぐら)をかいている真を優しく押し倒し、股間を踏み付けてそのまま円周状に足を回す。


「あっ、あうぅっ!」


小学生に攻撃されて天国に居るような気分を味わう危ない高校生、もとい真。


「ほんっと、真と大介ってそっくりで仲良しよね!」


その口調は何処か嫌味のようにも取れる強いものだった。


「「おう! 心の友よ!」」


二人は立ち上がって肩を組み、キリッ! と答えた。


「洋子ちゃん、男の友情に憧れてるのね」


「絵乃ちゃん、私たちは女の友情で対抗よ!」


「ええ、頑張りましょう」


一方、一年生から四年生の四人は、四年生の明日太(アスタ)を筆頭に別のコミュニティーが構築されている。明日太が話を切り出す。


「さて、この村は新しく出来る予定の水力発電所に水を供給するためのダムを造るということで滅亡の危機に立たされているのですが、そもそも何故、水力発電所が必要なのかという議題で話を進めて行きたいと思います」


「はい!」


黒くて(ふち)の細い眼鏡を掛けたお坊ちゃん頭の三年生、渋川宇宙(しぶかわ そら)がハキッと挙手。


「宇宙君、どうぞ」


明日太が決して指を差すことなく宇宙に右手を差し延べた。


「僕のデータによりますとですね~、山興村の近辺は水源が豊富なため、ダム建設に適しているということですが~、そもそも水力発電所が必要とされている理由の一つに、国の予算を調整するためという事と、原子力発電所が故障した際の電力不足を回避する目的があるということなんですね~」


「なんでダムを建てようとしてる人たちは、原子力発電所が故障するかもって思ったのかな?」


二年生の高崎(たかさき)すみれが疑問を投げ掛けた。




このように、高学年や中高生の四人がじゃれ合っている最中(さなか)、中、低学年の四人は真摯(しんし)にディベートを繰り広げているのだ。


◇◇◇


子供たち八人は絵乃の家を出て、村役場付近の雑木林から大人たちのダム建設反対運動を覗き見ようとしていた。


「あら、今日は役場の中に乗り込んでるのかしら?」


「きっと中で大乱闘だぜ?」


いつもなら役場の玄関前で大声を上げてデモ活動をしているダム建設反対派の大人たち。しかし今日はその姿がない。なので絵乃と大介は役場の中でデモ活動をしていると推測した。


「君たち、何をしてるんだい?」


「何をしてるって、そりゃあデモを覗いてるに決まってるじゃんか」


「そうかい」


「って、あれ?」


俺と会話しているのは誰? 大介は硬直しそうな身体を無理矢理回れ右して振り返った。


「えっ!?」


大介は驚愕の声を上げた。


七人の子供たちも声は上げなかったものの続いて驚愕。緊張が走った瞬間だ。


背後に居たのはダム建設を推進する機関の作業着を着た、白髪で七三分け、大きな四角い眼鏡を掛けた中肉の中年男性が子供たちの背後にから声を掛けてきたからだ。


やばい、ピンチだ。低学年の三人は身の危険とガクガクブルブルしそうなくらいの焦りを覚えた。しかし男性は意外にも含みのない柔和な表情だ。


「みんなは、この村がダムになるのはイヤかい?」


「イヤに決まってるだろ!!」


「えぇ、好ましくないわ」


他の子供たちも怯えながら揃って頷いた。


「そうか、そうだよね、おじさんも気持ちは良くわかる。でも国を守るためには仕方がないんだ。みんなは、そもそもなんでここにダムを造ろうとしているかは知っているかい?」


「ええ、原子力発電所が故障した時の予防策として新設する水力発電所に水を供給するためでしょ?」


「うん、その通りだ」


男性は複雑な心境なのか、表情を曇らせ、重たい口調で肯定した。機関の人に肯定されてしまい、子供たちの心中では村がダムになる計画の現実味が更に強くなった。


「おじさん、村、ダムにしないで」


不意に男性のズボンをくいっとつまんで涙目で言ったのは、最年少、一年生の倉賀野希(くらがの のぞみ)。希の澄んだ眼差しに、男性は途端、目を潤ませた。


「ごめんよ、ごめんよぉ、こんな事になってしまって、本当にごめんよぉ…」


そのまま泣き崩れ、近くに立っている木に右手を着く。


「おじさん、良かったら教えてくれませんか? その涙の理由を」


言って絵乃は男性のぶら下がる左手を両手で握り、上目遣いで見つめた。

約半年ぶりの更新です。この物語は震災発生前に構成したフィクションですので、あくまでも仮説として受け入れていただければと思います。

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