27,震える声
絵乃の秘密基地で俺が相談を受けてから何日か過ぎた。
村を守るためにやる事というと、ダム賛成派の連中に学校の飼育小屋に居るウサギの糞を顔面にぶちまけるとか、グラサンとマスクで変装して爆竹とか金属バットで襲撃するみたいな過激な行動しか思い浮かばない。
まぁ、大人達は嫌がらせに家畜の牛糞を連中のアジトである仮設テントに投げたとか、ガラスを割ったとか聞いたがそれは犯罪だろ。
うん、無理だな。そもそも一人で考えるからだめなんだ。とりあえず絵乃の家に行って一緒に考えよう。
「いぃぃ、いらっしゃいぃぃ…」
身体も声もガクガク震わせながら俺を迎えてくれた絵乃。豪雪の冬、古い民家ではこたつから出ると突き刺すような寒さに襲われる。毎年のことで慣れてはいるが、やっぱりキツイ。
「いぃぃ、いらっしゃいました…」
「ささささ、寒いから、ま、わ、私の真似してないで、とっ、とりあぇず上がって…」
「おぉぉ、お邪魔します…」
絵乃、さっき雪がどっさり積もった秘密基地では震えてなかったよな。
「おやおやこんにちは、大介君かい」
「こんちはっす! トメばぁちゃん久しぶりっ!」
「元気にやっておるかい?」
「元気ゲンキ超元気!!!」
大介が来てまだ数分、再びカラカラカラカラ、と横開きの玄関の扉が開く音がした。
絵乃が玄関へと向かう。
俺はそれを障子戸を5センチくらいそっと開けて様子を窺う。
見ると、黒いスーツに真っ赤なネクタイ、そして司会者のタモリさんのようなサングラスを掛けた、がっしりとガタイの良い男が立っていた。
山奥にある豪雪の村でこの格好はかなり不自然だ。
リアル雪男?
悪徳セールス?
借金取り?
いや、まさか、ダム建設のために雇われた地上げ屋か!?




