26,ヒミツノハナシ
お正月の三が日はのんびりしていた山興村の人々も、それが過ぎるとついに動き出した。子供たちは、暴動に巻き込まれると危険なので学校以外へ子供のみでの外出は避けるように言われている。
雪がどっさり積もっていて、あまり外出する気にはならないけれど、それでもたまには外に出たい。
そして私には、やる事がある。
それは、この村を守ること。例え私は引っ越しても、そこに残る人々のために、私にとっても、ふと帰って来れば、安心できる、そんなこの村を守るために、全力を尽くさなければならない。
弱冠12歳の私にも、何か出来るはず。そう思って、これまで担任の秋子先生の力を借りて署名活動や、村長や国への抗議文を送ってきた。
しかしそれだけで計画が中止になるほど甘くない事だって解っている。
正直、どうしたら良いか分からなくて、自分の無力さに絶望している。
村を守る活動以外にも、飼育委員の仕事や引っ越しの準備として新居の家具や照明を揃えるために街へ出たり、やる事がいっぱいだ。
ある日、雪が止み、空が真っ青に澄み渡る日があった。
そんな折、私は大介を一年生の頃からずっと自分だけの空間だった秘密基地へ呼び出した。ここには、私の半生の記憶や思い出がギュッと詰まっている。
雪に埋もれて何がどうあるのか見えない秘密基地を、それでも大介は目を丸くして驚いてくれた。
「お前、ずっと一人で秘密基地やってたのか。すげぇな」
「でしょう? 雪に埋もれて座る所すら無くて悪いけど、二人きりで話したかったから、ここへあなたを呼んだの」
言うと、大介は一度唾を飲み、何故か緊張したように身構えた。
◇◇◇
絵乃が一年生の時からずっと一人で守ってきたという秘密基地に呼び出された俺。
まさか愛の告白か!?
ついこの前までおかっぱ頭で、絵乃に対し女子としての魅力を感じていなかった俺だが、近頃はロングヘアになり、かなり可愛いと思うようになった。
学年は絵乃が一つ上というだけで年齢差もほぼないようなもの。恋人になるのだってごく自然だ。
「どうしたらいいか、わからないの」
「ん?」
俺への恋愛感情を抑えられなくてどうすればいいかわからないって?
「私、この村を守りたいの。けど、このままじゃ…」
はっ…
不謹慎ながら、初めてみた絵乃の少し涙を浮かべた辛辣そうな表情にハートを刺された。寒さ以外の理由でほっぺが赤くなっているのが自分でもわかる。
それと同時に、今度は俺がどうすればいいかわからなくなってしまった。
クールでプライドの高い絵乃は、ダム建設計画が公表されてから、どうすればいいかずっと一人で考え込んでいたのか?
それで、ようやく俺に打ち明けてくれたのか?
「秋子先生にも相談したのだけれど、やっぱりわからないの」
あ、他の人にも相談してたんだ。
とはいえ困った。俺が相談される? 不器用だし頭悪いのに? いや、頭で言えばそれこそ秋子先生とか、大人に相談すればいい。あの人だって馬鹿じゃない。
きっと絵乃は、何か違う視点から考えたいから俺に相談してきたんだ。そうだとしたら、応えてやりたい。
しかしその場で答えは出せないので、返事は後日することにした。




