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あいはぐ  作者: おじぃ


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25/33

25,最後のお正月

元旦、山興村は例年並みに車が埋まるくらい雪がどっさり積もっていた。


お正月は近所に住むトメばぁちゃんと一緒に過ごすのが腰越家の恒例となっていたけれど、三月の終わり頃に引っ越す事になってしまい、これが一緒に過ごす最後のお正月になりそうだ。


三が日は村役場の玄関前で毎日行われるダム建設反対を訴える村民のデモ活動もお休み。村は束の間の静けさを取り戻していた。


私は例年通り、こたつに入って駅伝大会の中継を観ていた。今度引っ越す所は、この駅伝大会のコースに近い場所だ。来年の今頃は、生でこれを観ているのかも知れない。


今、私が居るこの村は、雪がどっさり積もっているというのに、駅伝のコースはそんな様子など微塵もなく、蒼く晴れ渡っていた。


そんな遠い所に引っ越しちゃうんだなぁ…。


そう思うと、やっぱり淋しい。


そんな事を考えながら黄昏れていると、キッチンからトメばぁちゃんが、お雑煮をお椀に入れて持って来てくれた。


だし汁の中で混ざり合う大根、人参、ほうれん草、そして角切り餅。我が家のお正月の定番。


うん、美味しい。


「トメばぁちゃんはこれからどうするの?」


「はて、どうするべした。オラは何だかこう、追い出されちまうってのが、実感出来ねぇ」


私にだって追い出される実感がないのに、ずっとここで暮らしてきたトメばぁちゃんは余計にそうだろう。


しかし三が日が過ぎれば、いよいよそうも言っていられなくなるだろう。引っ越しの準備や、反対運動が本格化するのは間違いない。


これを境に、平和な生活とは暫くお別れとなりそうだ。

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