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あいはぐ  作者: おじぃ


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22/33

22,クリスマス

クリスマスがやって来た。


雪がどっさり積もり道や田畑、敷地の区別がつかなくなる。木や建物だけが、雪に埋もれていてもその存在を認識出来る。


凍てつくこの地は、例年なら人々の心は温かかったが、今冬は暖房器具だけが温もりを感じさせてくれそうだ。


羽毛がたっぷり入ったもふもふしたジャンパーを着てても刺されるような寒さの中、役場の玄関前でダム建設反対のデモ活動をする村人が多数居た。


絵乃は感じていた。


互いに助け合って生活してきた村人たちの絆が消えようとしているのを見ているのは、切なくて、淋しくて、悲しい。先の見えない不安と胸のざわめきから一刻でも早く解放されたかった。


故郷がなくなるという不安は徐々に現実味を帯び、金が入り喜ぶ者が少数、悲しみに暮れる者が多数、ダム建設を止めようと闘志を(みなぎ)らせる者は大多数だった。


人々の絆が途切れつつある中で、何も出来ず無力感に浸る自分があった。


◇◇◇


 留守番中、私は火燵(こたつ)蜜柑(みかん)の皮を剥いていたところ、役場での集会から父が帰ってくるなり唐突に告げた。


「絵乃、村の退去期限日が決まったよクリスマスの今日から数えて約四ヶ月後の四月一日。それまでに引っ越さなきゃいけないんだ」


じんまり重たい口調で言った父の目には涙が浮かび、それが流れるのを堪えるように唇を噛み締めていた。


父は勤め先の会社で若い頃に落ち込んだ事も何度かあったが、それを乗り越えてからは順調に業績を伸ばし、昇進もして昇り調子だった。そんな時に知らされたダム建設計画は、本来なら幸せを感じられるようになってこれからもっと前進しようと思っていた矢先の話だった。


まるで幸せになる資格すら奪われたかのように。


生まれてからずっとこの村で暮らしてきた父にとって、この地が水底に沈むのはきっと私より辛い。


当の私は、とうとう決まったその日に実感が沸かず、うん、としか応えられなかった。


他人事のような感覚。まるでテレビで見る事件のニュースのように。


◇◇◇


 村の雰囲気が悪かろうと今日はクリスマス。一年に一度のこの日に、せめて子供たちだけでもと思った担任の秋子先生が彼女宅(借家)でクリスマスパーティーを開いてくれることになった。


粉雪が舞う中、先生の借家まで歩いて現地集合。私の家は洋子ちゃんの通り道にあるので二人一緒に行った。道中、二人は寒さで滑舌悪く話していた。


「さっきお父さんが言ってたのだけれど、来年の四月一日までに引っ越さなきゃいけないのね」


「えっ!? 何それ初耳!」


「なんだか実感湧かないわ。それに、納得いかない。大人たちの勝手な都合で故郷を奪われるなんて」


「そうなんだ、とうとう無くなっちゃうんだね、この村」


言いながら洋子ちゃんは切なさを含んだ笑みを浮かべていた。


借家に着いて、ピンポーンと軽快な音をだすベルのマークがプリントされた呼び出しボタンを押すと、外開きの玄関の扉が10センチくらい積もった雪を掻き分けながら重々しく開き、秋子先生が出迎えてくれた。


「いらっしゃい。寒い中来てくれてありがとうね。これで今日来れる人はみんな揃ったわね」


「さ、寒かったわ、雪の妖精のように白い私の肌が青ざめそうなくらい。で、でも、冬も湿気があるお蔭で美肌が保てるわ」


私は全身をガタガタ震わせながら、豪雪地帯のメリットを豪雪地帯の住人(秋子先生)に語った。後で冷静になると、なんて無意味で間抜けなアピールだったと気付いた。


「こんにちは~、私、秋子さんの卒業生じゃないのにお招きありがとう!」


私以外に集まったのは卒業生の(まこと)君と洋子ちゃん、五年生の大介君、四年生のアスタ君だった。


秋子先生のお蔭で、今年も楽しいクリスマスを過ごせそうだ。

平成22年2月22日に第22話公開です。


未公開作品を執筆してたら更新こんなに遅くなっちゃいました。継続して読んで下さっている方、いらっしゃいましたら申し訳ございませんm(_ _)m

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