15,Dead or Alive
去る夏休み、真は就職試験に向けて毎日勉強していた。
勉強する範囲が広い上に、知能テストのような試験問題が多くて頭は血管が詰まったような感覚で重たい。
そんな中、幼なじみで恋人の洋子から『真に聞いてほしいことがある。外部に言い振らしたら何があるかわからない、けど、マジだったら絶対ヤバイ』と相談された。何やら聞いてはならないようなことを聞いてしまったのだろう。
◇◇◇
「はぁぁぁぁ!? なんだべそれ!? ってかマジなら黙ってらんねぇべ。今すぐ抗議しに行くぞ」
洋子が告げたのは、村人の間で騒がれている山興小学校廃校を大きく上回る事態だった。よく聞く話ではあるが、自分の身に降り懸かると不安や焦りが込み上げ、力なき自分にはどうしたら良いか分かず、脳はフリーズ状態になってしまった。
「ちょっと待って、だから慎重を欠くとマジでヤバイかもだって。それにたった二人で立ち向かったところで勝ち目ないよ。
そこで私は考えたんだけど、この情報は村ではまだ公務員しか知らない筈。
だから、小学校の生徒だけに伝えて公務員たちに集団抗議する。もちろん、みんなには保護者をはじめ大人には絶対内緒にしてもらう。大人の中には立ち退き料を貰えるから賛成する輩もいると思うの。これは私たちの一生を左右する賭けよ。村を水底に沈めるなんて、絶対に許さないんだから。なんとしても廃村を撤回させるわ」
村は今のところ、校舎の老朽化と生徒数不足による維持困難のため、小学校を廃校にするとの発表はしていたものの、廃村にしてダムを建設するなど全く知らせていない。村人に意見させず、発表時期を出来るだけ延ばしてダム建設計画を強引に推し進める計画だろうか。
二人は先ず、小学校の最上級生である絵乃にそれを知らせるため、腰越家に来たのだった。
三人でちゃぶ台を囲み、お茶をしながら冗談を言ったりして談笑して、会話が途切れたのを見計らい、洋子は一秒、息を呑んで話を切り出した。
話を聞いた絵乃は意外なことにあまり驚いた表情もなく、少し考え込んだ顔をして、至って冷静に言い始めた。
「そう。もしかしたらって、思ってはいたけどね。分かった。私も抗議運動に協力するわ。けど大人は汚い生き物よ。だから他の生徒は巻き込まないほうが良いと思う。協力してもらうにしても、五年生の湯沢君までね。アスタ君や他の子には、利益を求める人の醜い姿なんか、まだ見るべきではないわ」
とても小学六年生の子が吐くような台詞とは思えず、二人はある意味、廃村以上に驚愕して呆気にとられた。
しかし、その通りだ。まだ小さな子供たちに、人の醜さなど見て欲しくないし見るべきでない。協力してもらうのは五年生の湯沢君までとした。
その後すぐに三人で湯沢君の家に行って彼を呼び出し、絵乃の時と同様に廃村計画がある事を告げ、協力を請うた。
「おうっ、そういう事なら俺に任せろ! 戦いのニオイがするぜ」
湯沢君は廃村計画に驚いたというよりは、戦いのニオイに闘志を燃やし、まるで全身から炎のオーラが出ているようだった。
今日は作戦を練り、そして明日、村の存亡と村人の未来を賭けた決戦の火蓋が切り落とされる。




