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あいはぐ  作者: おじぃ


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12/33

12,今度こそ、護らなきゃ

母校がなくなること、母校がなくなれば飼育小屋の動物たちが保健所に連れて行かれる可能性があること、知りたくなかった未来、でも知っておいたほうが良い未来。村の子供の中でそれを知っているのは、私と大介のみだろう。


私たちの課題は二つ。


一つは動物たちの命を護ること、もう一つは母校の山興(やまおこし)小学校の廃校を止めること。


そうは言っても、一体何をすれば良いのか検討がつかない。私たち二人は夕陽が差す放課後の教室で懸命に知恵を絞って考えた。


「決めたわ、飼育小屋の動物はうちで引き取ろうと思う。先生や両親と相談してみるわ。それ以外、私には思い付かない。大介はどう?」


「賛成だな。俺もそれが良いと思う。俺も家に帰ったら親に相談してみるよ」


◇◇◇


帰宅した私は両親に行き場を失う飼育小屋の動物を引き取って育てたいと話を持ちかけたが、二人とも難しい顔をした。


「動物にはね、人間と同じで命があるのよ。動物を飼うってことは、絵乃は一つのとても重い命を背負わなきゃいけなくなるの」


「分かってるわ。だからこそよ。だからこそ行き場を失うあの子たちを放っておけないの!」


「その気持ちはお母さんにも分かる。でもそれにはお金が沢山かかるし、病気や怪我をしたら山を下りて市街の動物病院に連れていかなきゃいけないのよ? あなたにそれが出来るの?」


市街までは約30km。車で約50分、、自転車で2時間半、JR運賃480円の営業キロに当て嵌まる。その計算だと、休まず歩いても片道約八時間はかかるだろう。子供の私には無謀過ぎる距離。不幸な事に私の家には自転車がない。それどころかこの村で自転車など滅多に見かけるものではないし、鉄道やバスさえもない。


「言っとくけどお母さんはノータッチだからね。病気になった時も全部アンタがやるのよ」


そこで黙っていた父親が口を開いた。


「おいおい、それはあんまりじゃないか。絵乃はまだ年齢的に車の運転が出来ないんだ。せめて動物病院くらい連れてってやってもいいだろ」


「これも一つの勉強なの。自分の事は自分でやり通すべきよ」


「だからといって動物の命を犠牲にする必要はない。それは別の機会を設ければいい」


「うるさいわね、アンタは黙ってて」


その母親の言葉が気に障ったのか、父親は怒りはじめた。


「黙っててだと!? 俺だって絵乃の事を考えてるんだ!! それに絵乃だって学校で動物を飼育出来ないからうちで飼うって言ってるんだろ? 俺だって動物を飼う事は難しいと思うし賛成出来るかと言えば考える必要はあると思う。けど今回絵乃が行き場を失った動物を飼いたいって言ったってことは、優しい心を持った良い子に育ってくれた証拠だと俺は思ったよ。それをお前は病気になっても知らないとか、否定的な言葉ばっかりかけてるじゃないか!!」


「優しいとか優しくないとかじゃなくて、実際問題飼えるかどうかって話をしてんの!!」


それから話は脱線し、単なる夫婦喧嘩が延々と続いたので、私はそこからそっと居なくなり自分の部屋に戻った。


物心ついた頃から夫婦喧嘩の多い両親。週一回はしていると思う。私はその度、頭が重くなり、胸焼けのようにざわざわした症状を発し、現実から目を背けて耳を塞ぎたくなる。


ベッドに飛び込むとそのままふわふわした枕に顔を埋め、目を閉じて知恵熱や複数の要因が引き起こすストレスで怠い頭を休めた。すると、怠い気が枕に吸い込まれて行くような感覚があった。そのまま意識も吸い込まれそう。



◇◇◇



度々、小さな頃の事を思い出す。


私が五歳だった頃、今は引っ越してしまったけれど、近所に新婚の夫婦が住んでいて、ドラという雌猫を飼っていた。やがてドラは三匹の子猫を産んだ。


その少し後、ほぼ同時期に夫婦にも赤ちゃんが生まれた。


私はドラと遊ぶため、よくそこにお邪魔していた。お昼寝をして、目が覚めると隣にドラが一緒に寝ていて、それがとっても可愛らしい。


ドラと私は昼寝、子猫三匹はパタパタ走り回ったりじゃれあったり、そんな日々が続いていた。しかし、夏のある金曜日の午前中、雨が降っていた日のこと。無邪気に走り回っていた三匹の子猫が旦那さんによって突然ゲージに入れられた。三匹とも、目を潤ませながら私を見て、『ニゥ、ニィ』と、切ない声を発していた。


旦那さんが彼等を車に載せて行った。旦那さんと一緒に子猫たちが戻ることはなかった。


その理由を旦那さんに尋ねると、子猫たちはこれから赤ちゃんにちょっかいを出すかも知れないから保健所に連れて行ったと何食わぬ顔で答えた。


それから間もなく、その夫婦とドラは引っ越して、村から居なくなった。


私はそれを思い出す度、なんで保健所がどんな場所だか知らなかったのだろう、なんで、あの澄んだ眼差しの無垢な子猫を守れなかったのだろう、毒ガスで苦しませて、短すぎて(むご)い命の終わりを迎えさせてしまったのだろう、そんな悔しい思いになる。



自分たちの赤ちゃんのためという気持ちはわかる。


だけど…。


だけど…。



命の重さは、みんな一緒なのに…。



その時から、もう犠牲は出したくない、人間の都合で動物に惨い運命を辿らせてはならないと思念するようになった。


「今度こそ、護らなきゃ」


もう誰も犠牲になんかさせるもんか!

保健所では、猫だけでも年間13万匹以上が毒殺されるそうです。面倒見切れなくて、引き取り手も見つからなければ、せめて動物愛護病院にでも預けて欲しいものです。



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