高校生が救世主になった日
─異世界「ル・モンド」のとある街はずれ─
「くっ、は、離れなさい、汚らわしい魔物たち・・・!」
「ムリ。オマエ、ハイシャ。オレタチ、ショウシャ。ハイシャ、ショウシャノイイナリ」
「・・・わ、私一人に対して、そんな大人数で襲うなんて、卑怯だとは思わないんですか・・・!」
「ドンナカタチデモ、カチハカチ、マケハマケ。イウコトヲキケ、ニンゲン」
「・・・うう・・・」
私、シロン・エルドールは、コボルトの集団に捕まっていました。
ある人物を探している途中にコボルトの集団に見つかり、30対1という圧倒的不利な戦いに負けてしまったのです。
このままでは、エットーレ王国から託された使命を達成できないばかりか、コボルトたちにされるがまま、殺されるかもしれません。
助けを呼ぼうにも、この近くには魔物からの襲撃を避けるため住民はすでに避難しており、助けてくれそうな人は辺りを見渡してもいませんでした。
私は、コボルトたちのいいなりになる前に、達成できなかったことを呟きました。
「アルマン女王陛下、申し訳ありません・・・シロンは、ヘルトを見つけることができませんでした・・・」
そんな時でした。
ヘルトこと、ソースケ様が現れたのは。
俺の名前は留能 宗介。 「るのう そうすけ」と読む。決してフランスの某自動車会社ではない。
特に飛び抜けた長所もなく、かといって目立つ悪いところもない、いわゆる「モブキャラ」高校一年生である。
・・・まぁ、強いて変わったところがあるとすれば、「機械が好き」ということだ。それも車と兵器。
数年前、「中学合格祝いに、何か欲しいものがあれば買ってやる」と言われたので、当時発売されて話題になってたテレビにつなぐタイプのゲーム機と気になってたカーレースゲーム、それにFPS─ファースト・パーソン・シューティング─を買ってもらった。そしてそれで遊んでみた。
全てが変わった。
美しいグラフィックで映し出される精悍な車を運転することができ、オンライン上にいるプレーヤーとリアルなレースができるレースゲーム。
「敵を倒す」という目的のためだけに作られた、無駄のない機能美に溢れた銃や戦車、戦闘機を駆って戦うFPS。
みるみるうちにこの二つのゲームにのめり込み、さらにとある出来事も重なって、気がつけば暇な時間があればずっと遊んでいた。
コーナーでライバルを抜き去る快感。試合でのキルデス比や獲得経験値で一位になった時の達成感。二つとも現実では決してできないことだけに、よけいに嬉しかった。
・・・しかしこの経験が、のちに重要になってくるとは、この時はまだ知る由もなかった。