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警察官の来訪

 次の日。

 いつもよりも平和な朝の登校日。

 教室に入るとやはり、例の3人はおらずクラスは騒々しくあった。

 噂の種は例の的場と取り巻き二人についてだった。

 朝、開門をしに登校して来た教師が体育館裏での喧噪の声に気づいて行ってみると血みどろで殴り合っていた3人の姿を目撃したというものだ。

 3人は現在、警察のもとに補導され、現在は警察の病院にて治療を受けてるらしいという話だ。

 噂に聞き耳を立てながら勇気はほくそ笑む。

 素晴らしき日常がやっと手に入ったことへの歓喜。

 自分をほめたたえたくて仕方がない。


「ん」


 放送の起動スイッチが入る音がアナウンスにかかる。

 全員が拡声器に目を向けた。


『本日、グラウンドにて緊急の集会を行います。全校生徒はただちにグラウンドへ集まってください』


 アナウンスから伝達終了のベルが終わり、全員が一斉に行動を始めた。

 それなりの優秀生徒が多いこの学校ではしっかりとした早期行動をみんなが徹底していた。

 数分足らずでグラウンドに多くの生徒が集合した。

 グラウンドの目の前には教師陣が参列していて険しい顔を浮かべていた。

 校長のあいさつが始業開始ベルと同時に始まった。

 校長はさっそくと切り出した。


「朝、我が校の歴史において泥を塗るような嘆かわしい出来事が起きました」


 そこから始まる校長の朝に起きた3人の乱闘事件の詳細。

 遠まわしに説明しているがその場に集まった生徒がいったい誰が引き起こしたのかは察していた。

 緊急集会を開くほどの事態。

 それは乱闘事件が原因であったことからわかるとおり、その乱闘事件の当事者が有名生徒であるからだ。

 的場良治は優秀生徒であったが故に教師たちには非常に残念なことになったに違いないからこそ注意を喚起する。

 一部の生徒にしてみれば今さらの話。彼らは元々優秀生徒ではなかったことなど教師たちは知る由もないのだろうかと思えるような説明。その事実を知っていた生徒、特に勇気のいるクラスのメンツは口ブチに「まぁ、いずれそうなる期してた」「だよなぁー」「いなくなってせいせいした」などと安堵の言葉と愚痴をこぼした。

 教師の注意が一通り終わり、マイクの前に妙な人物が出てきた。

 全員が騒ぎ出す。

 マイクの前に立ったのは警察。

 一体なぜだろうかとみんなの興味を引きながら警察官は口を開いた。


「○×警察署の駆動と言います。今回の事件においては大変嘆かわしく我々警察官一同も思います。そこで、私共警察は現在捜査において一点だけわかった大変ショックな事実をお伝えせねばなりません」


 生徒一同に不安が募りだす。


「この事件は3人だけに限った事件ではないということです。警察はこの事件に他にも関係していた人物がいるとみています。3人の証言ではある女性をめぐったトラブルだと聞き及んでいますが彼らは一向にその女性について口を割りません。ですから、その女性がいったい誰なのか知っている生徒がいたらぜひ教えてください」


 生徒が全員沈黙した。

 誰もがその女性が誰かを少なからず知っていたからだ。

 だが、その人物はみんなが敬愛する存在であるからこそ売るような真似はしたくない。

 そんな気持ちが生徒一丸の心情だった。


「警察関係者からは以上です」


 教師がそのあとの会話を引き継いで今後のスケジュールなどを軽く伝えた後に集会は収量を迎えた。

 勇気はその終わりをほっとすることはできなかった。

 警察が動き、第4人目の女性に事情聴取を図ろうとしていた。

 いや、その女性をもしくは容疑者扱いにでもする気なのだろうか。

 不安は募る。

 勇気は唇をかみしめて教室に戻って行った。


 ******



 放課後になると朝の集会のことなどみんながわすれて各々が部活や帰宅の準備を始めていた。

 勇気のクラスももう、的場良治という存在を忘れていなかった者扱いをしながらさっさと準備して教室から出ていく。

 的場はクラス内でもそれなりにもてはやされていた存在だというのにあっさりと落ちぶれればそんな扱いだった。


「やっぱり世の中腐ってるわね」

「っ」


 後ろからそっと耳打ちされてどきりとした。

 後ろを振り返り少し鋭い目つきをしながら彼女を見た。


「怖い顔しないでよ。そんなに気に障ったならごめんなさい」

「いいや、今のことじゃない。3人の件だ」

「3人?」

「的場たち……俺が報復した奴らのことだ。彼らに植え付けた女性をどうしてしっかりと名前を刻まなかった」

「ちょっと、勝手すぎるんじゃない? 私はこれでも十分手助けしてるのよ。彼らにある特定の女性によってトラブルを引き起こしたなんて高度な記憶の植え付けはできないわ」

「っ! このままだと芽衣姉さんが危ないんだぞ! 彼らは芽衣姉さんのファンクラブに入ってた。あの現場には芽衣姉さんはいた。そこから足は突く。事件現場にいくら芽衣姉さんがいた証拠がなkろうとファンクラブ経緯から芽衣姉さんが疑われてもおかしくない状況だ」

「考えすぎよ。あくまで、捜査の一環で事情聴取をするだけでしょ。焦る方が逆に疑われるわよ」

「考え過ぎだと……ふざけんなっ!」


 おもわず声を荒げて椅子から立ち上がった。

 その荒ぶれぶりにクラスにわずかに残っていた生徒の注目を浴びた。

 奇妙な光景を見るような視線が突き刺さりひそひそと噂話を始める。


「ちっ」


 勇気はかばんをもって教室から出ていく。その後ろを久遠もついてくる。


「ついてくるなよ」

「あら? 私とあなたは契約してる仲よ。常に一緒の方が何かと都合がいいわよ。それにユウキくんが次の復讐をいつするのか聞いてないわ」

「…………今はそれどころじゃなくなった。例の男がいる刑務所に行くにしても警察が動いた以上下手に動けない。なんだってこんなことに……本来はただの暴力事件で済んだ話だろ……」

「焦ってるところ一つ補足説明するけど、別に牢屋にぶち込まれるほど疑われてるわけではないでしょ。何をそんなに焦る必要があるのかしら?」

「なぜ、そう言いきれる! 君の能力で植え付けた彼らの記憶はあくまで『女のトラブル』による喧嘩だ。つまりはその女性が誰かもわからないからこそ警察が疑った。そのせいで今は芽衣姉さんが仕向けたなんて考えになったらまずい。第一元々あいつらは仲のいい3人組。的場は表向きは優秀な生徒だ。たかが、女程度であそこまでの乱闘騒ぎを起こすとは考えるはずはない」

「へぇー、なかなかの推理力ね。でも、何度も言うけど考えすぎね」


 彼女のその言葉は覆ることになった。

 アナウンスから呼び出しがかかった。呼び出しは黒野芽衣だった。

 勇気は走り出した。


「ちょっと、どこいくのよ!」

「芽衣姉さんが呼ばれた校長室だよ!」


 ******


 校長室にたどりつく。

 中には警察官の駆動と芽衣の話声が聞こえた。校長の声も聞こえる。

 勇気は聞き耳を立てながら必死で会話を聞こうとする。


「くっそっ! 全く聞こえない!」

「はぁー、そんな心配してると逆にあなたが怪しまれるわよ」

「だったら、3人にうまい記憶の植え付けをしてこいよ」

「それはもう無理。一度記憶改ざん能力を使った相手には2度目は使えないの」

「つっかえねぇ」

「ひどいわね。これでもユウキくん、私はあなたのご主人さまなのよ」

「なにがご主人様だ。ばかばかしい」


 久遠の目つきが座った。勇気の身体にとんでもない激痛が走った。 

 まるで、熱したナイフを刺しこまれたかのような痛みだ。

 激痛に思わずうずくまり声を抑え込むように腕を噛んで必死にこらえた。


「口のきき方には気をつけることね」

「て、てめぇ」

「いいから、この場からそろそろ離れたほうが身のためよ」

「あ?」

「出てくるわ。彼女たち」

「なに?」


 その忠告は遅かった。

 校長室の扉が開き、警察官の駆動と芽衣と校長の3人と勇気は目があった。

 おもわず、硬直して口をパクパクさせて立ち往生する。


「君は?」

「ユウくんっ?」

「黒野さんの知り合いかな?」

「あ、はい。弟です」


 駆動の質問に即座に答えた芽衣は勇気の手を引いて立ち上がらせる。


「お姉さんのことが心配で聞き耳でも立ててたのかな? 心配することはない。黒野芽衣さんには少し事情を聞いていただけだ。悪いようにはしないから安心したまえ」

「あ、はい」


 彼のにこやかな笑顔を浮かべて説明してくれた言葉に胸をなでおろして芽衣に一緒に帰るように促した。

 そのまま帰宅しようとした勇気の背中に駆動は「あ、そうだ」と声をかけた。


「君、1年生だね。クラスは?」

「A組ですけど」

「ほぉー、なら的場君と一緒か。クラスの中の彼はどうだったかな?」


 一瞬、鼓動が高鳴り冷や汗を流す。

 落ち着いて彼のことを答えた。


「あまり親しくはないので見たまんまの感想ですけどクラスでは非常にいい人でした。誰からも慕われる人でしたよ」

「そうか。だったら、君も妙な話だとおもわないかい。そんな彼がどうして、女一人のためにつるんでいた親友二人と死闘のようなことをしていたのだろうか。いくら女のトラブルとは言えやり過ぎな気がするんだよね僕は」

「そうでしょうか。彼だって男ですから愛する女が寝とられでもしたら争い合うことだってあるんじゃないですかね」


 勇気はそう言った。

 なにもおかしな答えを述べてないと自負しながら大好きな芽衣と平和になった日常を謳歌するために家に帰っていった。

 その彼の言葉を聞いた警察官、駆動は彼の背を見つめながら妙な感覚があった。


「何か臭うな」


 そっとそうつぶやくのだった。

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