表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/22

二人目の復讐 いじめっ子に報復を

 次の日。

 朝を迎えて登校準備に取り掛かる。

 身支度を済ませてリビングに向かう。キッチンからは野菜を切ったりくつくつと夜間でお湯が煮えたぎるような音が聞こえてきた。

 ずっと、聞いてこなかった朝の調理風景を思わせる音たちだ。

 キッチンをのぞいてみれば吃驚することにエプロン姿の芽衣の姿があり心臓が高鳴った。


「め、芽衣姉さん? 何してるの?」

「ずっと、こうした朝食をしてきませんでした。あの悪魔のような母親が支配した一階ではそのような行いをするのは難しかったからです。でも、今日は違うからしてみたくなりました」


 にこやかな笑顔。それは今まで芽衣が見せたこともないようなまぶしいくらいの笑顔だった。

 勇気は茫然と立ち、感涙してしまう。


「あれ……あはは、おかしいな、なんだこれ?」


 目元からあふれてくる涙を必死でぬぐいながら勇気はそっと芽衣に「手伝うよ」と言った。

 芽衣も目を瞬き、笑みをこぼして「皿の準備をお願いします」と言った。

 そう、まるでそれは勇気と芽衣が長いこと願っていた普通の朝だった。


 ******


 第一の復讐が完了したことで朝の幸せを手に入れてそれをかみしめた上で登校をした。

 登校途中は朝食の幸せは消え去って気分はダダ下がる。

 なぜなら、この先に待つのは勇気が最も嫌悪する学校と言う環境だ。芽衣が休みを申し出たが勇気はそれを断った。

 なぜなら、行かねばならない理由があった。


「本当に無理しちゃだめですよ?」

「ああ、平気だよ。少しばかり気分はいいからさ。ふつうの朝を楽しめた俺は今までとは違うよ」


 靴を履き替えて昇降口で芽衣と別れた勇気は教室へ向かって行く。気を引き締めて教室の扉に手をかけ中へ入った。

 いつものように教室では賑やかなムードで話し合いがされていたが勇気が入った瞬間に一瞬だけ会話が止まるが平然となく会話を再開させるクラスの人たちに勇気の気分は悪くなった。

 第3者から見ればその表情には陰りがさしたように見えるだろう。


「ヨウ、黒野」

「まぁだ、学校くるんだし」

「死んでろっすよ。ぎゃはは」


 あいもかわらず的場良治とその他、2名が嫌味なことを言いながら勇気に絡み始めた。

 勇気は無視をしながら窓際の席に着席する。

 後ろを見てみれば雪菜はまだ登校していないようだった。


(そういえば、彼女はどこに住んでるのだろうか? 昨日の復讐の後、普通に分かれたけど)


 3人を放置して一人考えこんでいたところに机を蹴りあげられた。周りがシーンと静まり返る。

 的場は平然と今までの優等生という仮面をかぶることを放棄したように勇気の胸倉をつかみあげた。


「おい、無視してんじゃねぇぞ」

「殴れば? そうすれば、あんたの人生終わりだろ?」


 的場はちらっと周りを一瞥して含み笑いをする。


「知ってか? このクラスにいる連中は全員俺の味方だ。俺がここで何をしようが見て見ぬふりをしてくれる。これが優秀生と劣等生の違いだ」

「優秀生徒ね、昨日遅刻したからもう優秀生徒じゃないんじゃないかな、ぷぷっ」


 勇気は目をそらしながら遠い目をして嘲笑した。

 額に青筋を浮かべて恫喝した的場がその胸倉をつかみあげた状態で勇気を地面にむけ叩き落とす。

 激痛が背中に走る。

 勇気は体を持ち上げたところへ、的場が顔面に向け、拳を一歩手前で寸止めした。

 始業チャイムが勇気の命を助けた。


「命拾いしたな。放課後、覚悟しておけ」

「それはあんただ」

「あん?」


 勇気はただほくそ笑みながら席に座り戻り、的場たちも席に座っていく。

 そして、教室から先生と一緒に雪菜が教室へはいってきた。

 勇気は首をひねりながら雪菜を見てみた。

 どことなく、雪菜の顔に焦りがにじんでいた。


 ******


 放課後になって勇気は朝の計画通りの仕掛けに準じて的場たちとともに教室を出る。

 その間に雪菜に携帯で連絡を入れた。

 的場たちに勇気はついて行く。そこで、言葉を発する。


「そういえば、この時間って体育倉庫って誰も使ってないみたいだよ」

「あ?」

「話し合うならそこでしたい」

「なんだ? なんか企んでるんじゃないだろうな」

「企む? 的場君はこの俺が何かを企てるような人に思えるの?」


 的場の苛立ちきった怒りに燃えた瞳が勇気を睨みつけたが他二人がいい具合にはやし立てた。


「リョージ、コイツが何かしたところでどうせい平気だし」

「そうそう、コイツ馬鹿っす。何かしたところでどうにかなるわけないっしょ」


 的場は頷きながら勇気の髪を引っ張って体育倉庫に連れて行った。

 体育倉庫に到着して乱暴に倉庫に押しいれられてマットの上に寝転がされる。そのまま、まず的場の拳が顔面へ叩き落とされた。

 口の中が裂けて血の味が充満していく。

 吐き捨てた時に歯まで出てきて歯が欠けたのだとわかった。


「朝は言いたい放題言ってくれたよなぁ、ユウキィ」

「へへっ、事実を言っただけ」

「ッ! そのふざけたニヤケ面がむかつくんだよ!」


 顎を砕くばかりの強烈な蹴りが入った。

 脳が揺れて軽い脳震盪状態に陥る。

 そこにたたみかけて弱り切る勇気に容赦なく的場にいっつもついてる二人組が殴打を始めた。

 いつもの流れである。

 そう、いつもいつもこのような日常を体験させられてきた。


(今日は違う)


 的場たちがすっきりした表情で体育倉庫の扉に手をかけた。

 だが、顔が恐怖に染まる。


「おい、あかねぇぞ!  誰かそこにいないのか! おい!」

「マジでやべぇし!」

「良治どうするっす! あ、携帯!」


 3人が一斉に携帯を取り出して電話をかけようとしたがつながるはずもない。

 圏外となっている。


「くくっ、あははは」


 勇気はパニックになってる3人を見つめながらにゆっくりと起き上がった。

 忍び笑う勇気の声に的場がむかっ腹が立ったように激怒した。


「何笑ってやがんだ! てめぇも一緒に閉じ込められてんだぞ! 今日はここに誰もこねぇって言ってここに来させたテメェの責任だぞ!」

「頭いいのにこういうときだけ頭悪いんだな、的場君」

「なに?」


 剣呑な空気を立ち昇らせ、的場はずかずかと勇気に近寄った。

 そのまま、首を絞め髪を掴みあげる。


「もう一度いってみろ? 今馬鹿にしたのか? あん?」

「ああ、そうだよ。だって、ここに的場君たちを誘導して閉じ込めたのは俺だ」

「なに?」


 一発の銃声が響いた。的場が絶叫をしながら右足を抑えて倒れこむ。右の脛から血が流血しマットに血が滲み悶え苦しむようにうずくまってる的場の顔を容赦無用に蹴りあげた。


「あがぁぁ……あぁあ……がぁああっ」

「何言ってるか聞こえないな」


 勇気はその的場の眉間に銃口を突き付けながら他二人が近づくのを阻止するように「動くな!」と怒声をはった。


「正気だし! 銃刀法違反なうえに殺人まで犯す気だし!」

「いくら俺らが憎いからってやり過ぎっす!」

「やりすぎ? てめぇらの方が十分やり過ぎだろうが!」


 もう一発の銃弾を撃ち抜かれてはいない左大腿部に射ち的場の絶叫が倉庫にこだまする。


「そうそう、いくら叫ぼうが無理。鍵を閉めてくれた俺の仲間が防音や人よけをしてくれてるからね。だから、銃声の心配もない」

「しょ、正気じゃねぇし!」

「狂ってやがるっす!」



 勇気の心の闇はそれほどまでに深かった。長い間にいたぶられ続けてきた身体と心。それを発散するために今こうした仕返しを行う。勇気の心は的場を痛めつけるたびに歓喜に満たされていた。


「さぁって、次はどうするかな」


 そう言いながら、昼飯時に食った弁当についていた串を取りだした。

 的場は一体何をするのかと恐怖におびえた表情で見てくる。


「て、ユウキ何する気だ! やめろ! おい!」

「あーうるさいしその手邪魔!!」


 勇気の首に伸ばそうとした手を身動きとれなくするように勇気は拳銃の引き金を引く。的場の両肩は撃ち抜かれ手さえ動かなくなった的場は涙を流しながら天井を見上げていた。


「あー、死なないでよ。殺す気ないから。それと、うるさいからこれ。的場くんが大好きな俺の恋人のハンカチ。あんたなんかの口に入れるのは癪だけどこの際我慢しようか」


 そう言って強引に的場の口の中にハンカチを放り込んだ。的場は勇気の指をかみちぎろうとする。

「おっと、あぶないなっ!」

「あがぁ!」


 喉元に容赦なく銃の底を叩きつけられ過呼吸になる。いつ死んでもおかしくないほどの出血と暴行の数々に、的場にいつも従う二人は恐怖して後ずさって扉に向かってどんどんと叩きつけ助けを呼んだ。


「うっせぇ! 黙ってないと次はお前らだ!」


『っ!』


「うん、それでOK。ふんふん♪」



 鼻歌交じりに的場の手を掴み取りその爪の間に串をさしこんだ。的場が絶叫する。串が深く差し込まれてくほどに爪がはがれていき血が滴り落ちていく。


「あー、痛い? そうだよね。それが俺が今まで味わってきた痛みだよ。徐々に感覚がなくなってくるほどの痛み。さんざんあじわったんだ。苦しんでもらわなきゃ」



 愉悦する。

 勇気はどこまでも的場が苦しんでく姿を見て笑いがこみあげてしまう。

 すべての爪に串を突き刺し終えたところで的場がピクリともしなくなり叫び声さえ上げなくなった。


「あれ? おい、死んでないよね? 生きてますか―?」


 乱暴に頭を揺さぶって、ハンカチを取る。呼吸を確認する。


「くそったれ」

「なぁーんだ、生きてるじゃん。これからが本番だから死なれたら困るんだよ」

「なんだと?」



 カチャと眉間に突きつけられる銃口。

 それで的場が叫んだ。


「やめろぉお! よせぇ! 今までのは謝る! だから、殺さないでくれぇえ!」

「殺すな? 俺は殺されるくらいにいたぶられたんだ。やめろって懇願もした。だけど、的場君はやめなかった。わかる?」

「すまない、ほんとうにすまなかった」


 的場が泣き崩れたところで銃口を持ち上げた。

 そこに的場に従う二人が勇気へ飛びかかった。 

 容赦なく頭を殴りつけて殺しにかかった。


「死ねぇ死ねぇ!」

「こいつきえるッス!」


 しばらくして勇気の体が動かなくなった。

 二人は素早く的場を担ぎあげ扉をこじ開けにかかった。

 やっとの思いでついに開いた扉。

 脱出を試みた3人の前に二人の女が立っていた。

 一人はクラスにやってきた転校生、久遠雪菜。もう一人は学園のアイドル、今叩きのめした勇気の姉、黒野芽衣だ。


「久遠さんに芽衣様?」


 的場は薄ぼんやりとした意識の中でそっと二人を見て不思議に思った。

 なぜ、体育倉庫なんかに来てるのだろうか。


「た、たいへんなんだし!」

「さっき、そこで的場が黒野勇気に殺されかけたッス」


 的場にいつもよくついてくる二人がさっそく助けを求めた。

 だが、的場はここでその頭の良さで理解をした。


「二人とも彼女たちから離れろっ!」


 その二人が伸ばしたその手は憧れていた学園のアイドルに斬りおとされた。

 絶叫を上げる二人。

 その血のついた顔を芽衣はこちらに見せて今まで見たこともないような彼女の鬼の形相を目の当たりにして的場は尻もちをついた。

 畏怖に失禁する。


「私のユウくんをいじめたのはあなたたちだったのね」

「め、芽衣様?」


 ゆらりゆらりと身体を揺らしながら近づく彼女。

 そして、一定の距離、攻撃距離範囲にたどりついた彼女は短刀の刃を煌めかせて振り下ろす。


「芽衣姉さんっ」


 短刀の刃は的場の眉間の手前で刃は止まった。


「止めは刺さないで。俺の復讐はまだ遂げちゃいない」


 勇気は銃をてにして的場に歩み寄っていく。


「ユウキ、俺が悪かった! な? 頼む逃がしてくれ! このことは誰にも言わない!」

「そう言ったのは俺もだよ的場君。だけど、きみはやめなかった。じゃあね」


 勇気は的場の眉間に銃弾を撃ち込んだ。


 *****


 薄暗くなった部屋。

 的場は自分は死んだのだと思った。

 だけど、妙だった。手足はある。

 何処からともなく音が聞こえた。

 あれはなんだ?

 光が差し込み開けた視界に広がり見えた景色。

 中世の人殺しを見せる処刑法のような首吊り台に自分はいた。

 そこには大勢の人が集まり自分に野次を飛ばしている。


「死ねぇ殺人鬼!」

「いなくなっちまえ!」


 大勢の人は全員クラスの連中だ。


「最低なやつ!」

「なぁにが優秀生徒だ!」

「人殺し!」


 的場は隣に人の気配を感じた。

 隣には首を斬られた友人二人の姿。

 的場は叫んで絶叫した。


「はぁい、それではこれより殺人鬼的場良治君の公開処刑を始めまーす」


 クラスの担任教師、飯倉桃子がにこやかに首吊りの手動機を作動した。

 的場の視界は暗転した。



 *****


 倒れた的場を見下ろす3人。

 他の二人も出血多量で悶え苦しんでいた。

 そこに雪菜が近づき二人の額に手を当て昏倒させた。


「これで、二人は明日まで目を覚まさないわ。記憶改ざんもしておいたわ。3人で女をめぐったトラブルを引き起こしたということをうえ付けておいたわ」

「ありがとう、久遠さん」

「いいわ、これは手助けの一部よ。だけど、保険として『dagger trigger』で操っておいた方がいいかもしれないわよ。目覚めた後に喧嘩をするなんてね」


 そう言いながら久遠は芽衣に目を向けた。芽衣はお安い御用とばかりに二人の腕にトリガー起動コードを発して斬り付けた。


「起きた時に喧嘩をするようにしました。朝に殴り合いで血みどろの倉庫やこの場所を見て騒ぎになるでしょう」

「そうなれば、的場たちは警察行きで退学処分になるか」


 的場にも芽衣は同様の行いをしていく。

 串は勇気の犯行だと手がつかないように抜いておく。

 切断された腕を見て勇気は顔をしかめた。


「なぁ、久遠さん。さすがにこのままだと死んじまわないか?」

「あら? あなたは憎しみの相手にそのような感情をまだ抱くの?」

「は?」

「……はぁー。いいわ」


 彼女は心底がっかりしたような溜息をついてから二人組の男の腕を拾い上げてその切断面にくっつけると光眩き接着した。

 堕天使の力の凄さをつくづく勇気は感心した。


「証拠隠滅は完了か……」

「ええ、これで復讐は終わりですね、ユウくん」

「いや、まだだ芽衣姉さん」

「え? まだってどういうことですか?」

「まだ、あいつがいる。俺たち共通の憎しみの相手が」


 勇気はそう言ってどこか遠くを見つめた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ