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二人の復讐者の誕生

 放課後、黒野芽衣は一日の学校の終了と同時に下校準備を手早く済ませて教室を抜け出した。

 いつもより今日は早めに終わったので恋人である義弟を迎えに行こうとした。

 周りはいつも義弟に対して芽衣の甘さに思うところがあって口を出してくるが芽衣にはその口出しはうざいだけであった。

 道中にファンクラブ連中が絡むも芽衣は軽くあしらいながら急いで1年生の教室に向かう。


「ん?」


 階段のところで見覚えのある後姿を見かけて足を止めた。

 その後ろ姿はないを隠そう、これから迎えに行こうとしていた義弟の姿。隣には目を引くほどの西洋人形のような絶世の美少女がいて頭の中がぐるぐると回って軽いめまいを起こす。


「う、浮気?」


 いやいや、そんなはずはない。

 芽衣は自分自身に言い聞かせる。

 そもそも、彼はそういうことをする性格ではない。

 だとするのならば、なぜだろうかと疑問を感じる。

 疑心に満ちた感情に突き動かされて、愛する義弟の後をつけていく。

 入っていったのは屋上だった。

 放課後は、特に利用者も少なく基本立ち入り禁止の場所。そんな場所で何が始まるのか。


「ま、まさか告白!?」


 愛すべき義弟がかっこいいのはわかるけどそれは見過ごせない。

 そう、思って屋上の出入り口扉を少し開けながら聞き耳を立てた。


「――災厄さん、私はあなたの願いを叶えに来た復讐サークルの管理人です」


 聞こえてきたのは妙な名称を義弟を呼称していた絶世の美少女の声。


「ふくしゅうサークル? なにそれ?」


 聞いたこともないサークルだった。この学校にそんな部活もしくは同好会があったようなことは記憶にない。

 もし、そのようなサークルがあるとすれば一段と目を引くことだろう。

 思考をつづけていてしまってると話はどんどん進行していた。

 いくつの話を聞き逃したかと焦りを募らせた。

 さらに扉をこじ開けてしまう。だけど、義弟と絶世の美少女は扉の軋む音にさえ話に夢中で気付いていない。


「――『今の自分が心底嫌になる。そして、周りもだ。自分を嬲り貶す連中。俺はそんな連中に報復してやりたい!』だったかしらね。文面にはあなたの恨みつらみを感じ取ったわ」

「っ! 何を根拠にそんなこと言えるんだよ」



 絶世の美少女が何かを説明して勇気を困らせていた。

 激しく戸惑っている。

 勇気に何かあれば気が気でない芽衣はそろそろ割り込む準備を構えた。

 だが、次の瞬間衝撃的なものを目にした。


「根拠? 根拠はあるわ。それは――これよ」


 彼女が何食わぬ顔で宣言をする。

 何を宣言したのかさえ分からないことだったが芽衣はその言葉の意味よりも彼女の姿に目を奪われた。

 彼女の背中からカラスのような濡れ羽色のように漆黒の翼が二つ生えていた。夕日のせいか、瞳も赤く見えた。何よりも赤く――紅蓮の瞳。

 一体全体彼女は何。

 腰を抜かして扉の取っ手から手を離してへたり込む。

 頭を抱えて人生の中で一番動揺をしている実感を感じるほどに動揺をした。

 数分間ほど心臓がバクバクと高鳴って落ち着きを取り戻せなかったがどうにか落ち着いた時に決断をする。


「ユウくんを助けなきゃ!」


 扉の取っ手に手をかけて勇気が化け物の女から銃をもらい受けとり何かを話し合った時、目を焼きつくような漆黒の光が眩いた。


「きゃっ! 何っ!?」


 光は次第に鎮静していく。勇気たちが何かの決断の話を続けてるがかまわずに割り込むように飛びこんだ。


「二人とも何してるのよ」




 *******



 勇気は硬直した。

 この場にはいてはいけないような人がなぜここにいるのか。

 愛すべき人で大切な家族である人物、黒野芽衣がなぜここにいるんだ。

 勇気はサッと、さっき手渡された銃を背中に隠した。だけど、芽衣は明らかに気付いているように勇気の反応を見咎めていた。


「ユウくん、後ろに隠したの出しなさい」

「め、芽衣姉さんこれは……」

「いいから出しなさいっ!」


 今までに聞いたこともないくらいのキツイ声を聞いてびっくりした勇気はおずおずと後ろ手に隠したその赤黒い無骨な拳銃を出した。

 芽衣は目を瞬き、眉間にしわを寄せて勇気の隣にいる美少女転校生、久遠雪菜を睨みつけた。


「あなた、何者です? 人? 化け物? なんなのですか?」

「はぁー、まさか人払いの結界をしていたはずなのに侵入されるとは思いもよらなかった」

「答えてください! ユウくんになにを吹きこんでこんなものを渡したのですかっ! ユウくんも今すぐその銃を捨てて!」


 ヒステリックに叫ぶ芽衣に嘲笑う久遠。

 勇気はただ戸惑い、久遠が芽衣に何かしないかと気が気でなかった。


「久遠さん、芽衣姉さんには手を出すなよ? 出したら契約はなしだ」

「んー? それはもう無理よユウキくん」

「は?」

「だって、その腕の刻印は契約をした証であり契約を放棄するなどと言う行為は承諾されない。死体のであれば命を捨てるほかないの」


 その言葉は勇気の身体を震えあがらせる。

 おもわず、自分の腕についた入れ墨を二度見して彼女を見た。


「だ、だましたのか?」

「だましてない。契約をしっかりと果たせば死なないってだけ。放棄は命を削るって話。あなたはしっかりと承諾した。途中から抜け出すとかはないってことを言ってるのよ」

「ぐっ」


 何事もリスクはつきものとはよくいった名言であると勇気は思った。

 これが復讐を犯すために行う自分のリスク。何よりも重い。


「なんの話をしてるんですかっ! ユウキくんをたばかったんですか!」

「たばかる? あはは。私は助言をしたのよ。彼に手を貸してあげたの。復習を手助けするということをもちかけただけ。私を呼んだのは彼の方よ」

「え? どういうことユウくん」


 戸惑った表情がよく窺える。

 久遠の言い回しはすくなからず間違いではない。だが、ココに連れてきたのは彼女であるのではないか。

 呼んだというのは元をただせば勇気にはなるが勇気はそれを承諾しかねた。


「ユウくん?」


 彼女の顔に悲しみの色が浮かんだ。

 勇気が黙り込んだことがそうだと認めたことだと考えたと知る。


「め、芽衣姉さんこれはちが――」

「ユウキくん、私が来たのはあなたが復讐サークルにお願いをしたからよ。忘れたわけじゃないでしょ?」

「ぐっ」


 それ以上の言葉は喉まで出かかったが彼女の途中からの言葉で飲み込むことになった。

 勇気は目の前の芽衣に言い訳を考える余地さえもらえずその場に膝をついて銃を胸に抱きしめた。


「ユウくん」

「ほぅら、ね。どう、わかったかしら黒野先輩でいいのよね?」

「っ! ……ん……」

「なに?」

「ユウくんを元に戻しなさい!」


 近づいていった久遠に容赦なく芽衣は張り手を振りあげた。だけど、その手は容易に掴まれて食い止められた。


「そう、そういうこと。その異様なあなたと彼の間に感じる何か。あなたたち愛しあってるのね。それも家族と言う絆の愛ではない。もっと深い愛で」

「っ!」


 芽衣は顔面蒼白でその腕を振りほどこうと必死にもがいた。

 だけど、久遠は決して離さない。


「久遠さんやめてくれ! 芽衣姉さんは俺の大事な人なんだ!」

「くふふっ、人とは愛で満ち溢れてる生き物よね。いいわ。放してあげる」


 そっと、その掴んだ腕を離して含む笑いで芽衣を久遠は見下ろす。

 顎に手を添えてその耳元にそっと囁いた。

 それは勇気には聞こえない言葉。

 勇気は小首を傾げた。

 すると、芽衣は彼女を突き飛ばして頭を振り乱す。


「そんなことそんなこと考えてません! 私は、私は……」

「あらぁ? でも、あなたの心にはそう見えたのだけど。あなたと彼の関係を邪魔するものをすべて消したい。何よりも母親と父親を消してやりたいという願望」

「違います!」


 喜々として演説でもするように大手を振るって久遠は勇気にも言い聞かせるように彼女の気持ちを語った。

 勇気は乱れた芽衣の様子に唖然とした。

 何かをかける言葉すら見つからずに戸惑ってしまう。


「あなたのその心を埋められるわよ。私ならね」

「何を言うんですか? 私はそんなことを考えていません!」

「本当にそうかしら? あなたはずっと彼と二人で同居したいがために幾度となく母親の殺害を考えてきた。バイトもしてるのは将来は彼とどこか遠い土地で暮らす資金集めも兼ねてる」

「っ!」

「何よりも過去、父親にレイプされそうになった時彼が止めなければ自分の手で殺していた。違う?」


 ずばずばと彼女の心を射抜いてるのだろう。

 その言葉を聞くたびに芽衣の表情はぐしゃぐしゃに崩れていく。

 それを見て、久遠が右手に乗せた漆黒の短刀を彼女に握らせた。


「おい、久遠さん何をしてるんだ!!」

「ユウキくん、この行為を止める権利はあなたにはないのよ。あなたも彼女が決死で止めようとしたのにその手を取らなかったし彼女の声も聞かなかった。これは彼女が望む行為」


 悪の道に走らせるようにして彼女にやさしく微笑む久遠。

 それは聖母マリアのような笑みに見えるが実際は、悪魔の笑みに近い。


「望むならこの短刀を手に取るのよ。そうすれば、黒野先輩の望みは叶う。ユウキくんとともにいる生活。未来が叶うのよ」

「みらいが……でも……」

「そう、復讐をしてみない?」

「ふくしゅう……」

「そう、復讐。知ってるかしら? 彼があの拳銃を手に取ったのは復讐を願ったからよ。自分をいじめる奴らに復讐を願ったの」

「いじめ?」

「あら? 知らなかったのね。彼、学園ではひどいいじめにあってたのに」

「っ!」

「恋人なのにそんなことも知らないで彼の邪魔をしようとしたの?」


 その言葉が引き金となったのか芽衣の涙腺は決壊し、大粒の涙を流して号泣した。感情も大きく乱れ壊れてもう声にもならない悲鳴を上げていた。

 勇気も久遠に激怒しようにもできない。彼女をこうして学園に呼び出した自分の責任も感じているからだ。もし、呼び出さなければ芽衣を泣かせることもない状態があった。


「ユウキくん、そんな怖い顔で私を見ないでくれる? 私はただ助言をしてあげたのよ」

「芽衣姉さんに助言? ただ追いつめただけだろう。俺をダシにして止めを刺すなんて卑怯だ!」

「あら? そう。でも、みなさい」


 彼女に言われて目にするとその短刀を胸に抱き彼女はぽつりと言った。


「これはどう扱えばいいのですか?」

「ね、姉さん!」

「ユウくん、ごめんね。私知らなかったんです。ユウくんが学校でも苦しんでたなんて。だったら、もう世界のすべてを壊して復讐をしたいです。まず、私とユウくんの関係を壊そうとするやつらを排除したいです。そして、ユウくんを苦しめる奴らもです」


 彼女の決断に揺るぎはないように瞳に力強さのある意志を感じた。

 いくら、勇気が言っても彼女は止まらないだろう。それ以前に勇気にその資格はない。


「――今日は二人も契約者を得られて幸せよ。それと、一つ。私が渡した『権能』はそれぞれ効果が違うから注意よ。では、説明をするわね」


 そう言って堕天使久遠雪菜は説明を始めた。

 説明の内容は勇気に説明した通りのこと。

 トリガーの名前にそのトリガーが悪意によって力を起動すること。

 そして、契約の対価として自分には善意を支払うこと。その善意がどうやって支払えあ場いいかなどと言う質問を芽衣はぶつけたが彼女はただ笑うだけでトリガーを使えばわかると一蹴する。


「じゃあ、復讐の日程を決めたいわ。いつがお望みなのお二人は? いえ、まずは誰を復讐対象にするかかしら」

「私はユウくんに任せる」

「芽衣姉さん?」

「だって、私はユウくんのために復讐をしたいから」


 芽衣の強い希望に勇気は辛くもうれしくもあり複雑な気持ちを痛感した。

 その気持ちを答えるように自分の決意を口にした。


「だったら、まず最初の相手は決まってる。俺たちの母親である黒野真紀だ」


 勇気は決行を決める。

 この時にその復讐者の誕生を祝福するように日の落ちた夜闇の学校屋上の空に流れ星が煌めくのだった。。

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