謎の転校生 前編
次の日。
いつものように勇気は義姉とともに仲良く手をつなぎながら学校へ登校した。
生傷絶えない体を必死で隠しながら昇降口で別学年である義姉と別れ、陰鬱な表情で自分のクラスに向かい教室へはいった。
教室では妙に騒々しく盛り上がっていた。
椅子に座ってさっそく寝たふりになるといやでも耳にはその騒々しい元凶の噂が耳に入って来た。
「マジで!?」
「マジだって。めっちゃかわいい転校生がウチらのクラスにくるんだぜ」
「見に行こうぜ」
噂の信憑性を確認しに行くべく職員室に向かう数名のメンツ。
クラス内の人数が減っていくのはうれしい限りであり、おちついた心境になれる。
勇気にとってはクラスさえ居心地の悪い環境だ。
(早く学校終わらないかなぁ)
そんなことを考える。
カースト最下位でクラスは敵しかいおらず勇気にはもう学校と言う退屈な環境から早く脱却したいという気分でいっぱいである。
高校から大学に進学をしたくないのはそれが大きな理由でもある。
学校という環境は自分には合わない上に性格からして最初に周りになじめることができない。
人に対して嫌悪感があるのだからしょうがない。
それでも、義姉だけは別だ。姉でありながら恋人でもある。
彼女と付き合い始めたのも高校入学と同時期。元々長いこと一緒に生活して来た中で互いが支え合う生活を送っていくとそれが次第に恋に芽生える。そう、まるで一つの物語のような展開で勇気と芽衣の関係はある。
「芽衣姉さん」
そう彼女の名前を吐露するといつものように勇気に嫌味なくらいに絡んでくる3人組の表向きは優秀生徒の不良グループがやってくる。
「おい、勇気朝のHRまで時間あるしちょっとツラ貸せよ」
鋭くとがりきった猛禽類のような瞳で勇気を射抜き、その腕を掴みあげ立たせた。
そのまま勇気も否応なく従い、いつもあの誰も来ない裏庭にやって来た。
「てめぇ、またウチらの学園のアイドルさまと仲睦まじく登校してたんだってな。何様だぁ? あぁん?」
「姉弟だからとかってちょーしにのって仲睦まじく登校してんじゃねぇーし!」
「本当本当うらやましいっす!」
勇気はあきれながら右から順に3人の顔色をうかがった。
結局は嫉妬が原因だった。
芽衣は学園内では知る人ぞ知る人物。そのかわいらしい容姿や頭脳明晰な人当たりの良い性格をしてる。
勇気とは正反対な立場にある学内の彼女。
そんな彼女が学園ではアイドルのような扱いになっており裏ではファンクラブもあったりしていた。
特にこの3人もそのファンクラブのメンバーであり勇気をこうしてリンチしたりするのもそういったケースが多分に含まれていたりもするのだ。
「結局そうやって嫉妬か……みっともないな」
「んだとぉ! ちょーしこいてんじゃねぇぞ!」
3人組の頭角の金髪が勇気の腹を蹴りあげる。強い衝撃に肺から空気が漏れて一瞬酸欠状態気味になった。
そのあとに続けて突き従う二人が乱暴に頭や背中などを踏みつける行動に走る。
何度も何度も殴り続けられる。
「相変わらずサンドバックだし!」
「コイツまじてーこーしねぇからいいっすね!」
馬鹿な頭脳がばればれな感じのしゃべりをする二人。
それもそうであり頭角は優秀生徒であったとしてもこの二人は勇気とさほど成績はかわらないのである。
しかし、彼らが何故カースト上位にいれるのか。それは頭角の彼の友人と言うポジションがあるから。
どんな時でも立ち回りとは大事なこと。彼らはうまく取り入ってるにすぎない。
それらが彼らの立場を大きく動かすものだ。
「やめろ。あとは俺がする」
二人はぴたりと動きを止めて勇気から距離を置く。
頭角の不良、的場良治が金髪をすくいあげて勢いよく拳を顔面に振り下ろした。
勇気は口内がきれ、血反吐を吐き捨て地面にうずくまる。
「ハハッ、てめぇのような野郎が芽衣さまの弟とか何かの間違いじゃねぇか。あ、そうそう芽衣様にちくってみろよ。そうしたら、俺らが芽衣様にどんなことするかわからねぇぞ」
ふっとなにかが勇気の身体で堕ちた様な気がした。
ゆっくりと立ち上がると的場の肩を思い切りつかみこちらを振り向かせて思い切り顔面に拳を叩き落とす。
的場は鼻を押さえて後ろへ数歩と蹈鞴を踏んで下がった。
「あがぁ……あ?」
「的場さん!」
「平気っすか!」
的場は一体全体何が起こったのか目をまわしながら自分の手をみた。
血がべったりと付着した手の平。そこでやっと殴られたという自覚をした。
「てめぇ! もう殺す!」
的場は懐からナイフを取り出す。
ついにナイフを取り出した的場に突き従っていた二人はへっぴり腰になってビビりまくり。
それとは逆に標的にされている勇気は平常心だった。
「うらぁ!」
思い切り振りあげられたナイフが勇気の腕を切り裂く。
痛みに顔を引きつらせて血の滴る左腕をだらんとさげた。
「次はその腹に刺してやる」
的場がぎらついた目を向けた時に、裏庭に誰かが入ってくる足音が響いた。
「あ?」
「うぉ」
「めっさ美人っす」
裏庭にやって来たのは腰まで届く長く艶やかな金髪、鋭利な刃物のように感じさせる細みな目。スッ通った鼻梁に小ぶりな鼻、そして桜色の唇。ありとあらゆる顔のパーツが洗練されており体つきも勇気の恋人である芽衣に負けず劣らないスタイルだった。まるで、西洋人形が現代に出現したらこんな感じの美少女になるんではないかと言うほどだ。
現れた謎の美少女は間の悪いことにリンチ現場に遭遇した。
勇気はどうすることもできない悪い予感を感じながら的場たちの反応を見た。
「見られたか」
「どうするし、的場さん?」
「やるッスか」
「ああ、おまえら捕えろ。そして口を聞けぬようにちっとばっかし調教しようか」
的場に着き従う二人がゆっくりと美少女に近づいていく。
美少女は薄ら笑みながら「あら、何かしら? 私をおもちゃにでもする気なの? あはは」などとことの状況を理解しながらも余裕綽々とした態度でいた。
二人がそのまま腕を掴んだと思ったら、砂埃が舞い二人が倒れていた。しかも、気絶していた。
「な……に?」
「まったく、転校初日に面白いものを見つけた上に面白い状況にさせてもらえて光栄ね黒野勇気さん」
「え?」
一瞬、自分の名前を呼ばれた気がしたが勇気はそんなわけはないと自分にいいきかせた。
それもそうである。彼女を勇気は知らないし彼女とは初見のはずである。
だから、聞き間違いだと思いこんだ。
だけれど、彼女の眼はずっとこっちを見ながら近づいてきていた。
「女、無視してんじゃねぇぞ!」
的場が襲いかかり、美少女はそれを赤子をあやすように手でいなすように流して避ける。
的場も必死で食らいつくように襲いかかり続けたが彼女も呆れたようにナイフをはたき落とした。
「あぁあ?」
何語か分からない擬音を叫ぶ。
そのあまりにも奇天烈な光景に勇気は我を忘れていたが今が逃げるチャンスと見て、学校内へ向け逃げだしていった。
背後で美少女がまた自分の名前を叫んだ気がしたが気のせいだと再度言い聞かせた。
教室について早々にチャイムが鳴った。




