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最悪の結末

 彼女の登場によって勇気らの脱出劇は始まった。

 まず、雪菜と一緒に地下牢へ向かい、芽衣姉さんを救い出す。

 そのあと、外へつながる裏口に向けて走った。

 その間に勇気はざっとあらましを雪菜から聞いて衝撃を受ける。


「まさか先生が……」


 勇気らのクラス担任であった飯倉桃子の正体。

 それは残虐極まる種族、悪魔であるということ。

 さらに彼女はこの町を自らの供物として警察署を利用していた。

 それがあの地下牢の結果だったのだろう。

 警察署にいる職員は雪菜の推察では全員が悪魔の傀儡になっていてえ、特に勇気らを容疑者認定していたあの捜査官は飯倉桃子の使い魔であるというのだ。


「最初から騙されていたということですか?」


 芽衣は急激に冷え切った冷徹な瞳を雪菜に送る。

 勇気は傍らで見ているだけで背筋が凍り付いた。


「なぜ、似たような存在であるあなたはそのことに早く気づかなかったのですか! 気づいてもよかったんじゃないですか? そうすれば、私やユウくんがこんな目にあうことはなかったはずですよ?」

「……申し訳ないわ。でも、弁明させて。似たような存在でもお互いが力を隠す方法はいくらでもある。だから、存在を視認できないことだってあるの。特に相手は大魔王。私程度の下位の堕天使には見抜けるはずもない」

「結局、使えない堕天使ですよね」


 あまりにも優しくもない一言は雪菜を苦しめさせた。

 勇気は傍らでそれを聞いて芽衣をとがめたが彼女は聞く耳を持たずそのままずかずかと歩みを進めた。


「本当に私は役立たずですわね……」

「そんなことは!」

「あなたも私を恨んでいたでしょう。裏切り者と思っていたじゃない」

「それは……」

「いいの、わかってるわ。悪魔にまんまと利用されてただ養分を与えすぎてしまった。本当に役立たず……」


 彼女の沈み切った瞳を見て心から勇気は悔やんだ。

 彼女を一度は疑ってしまった後悔。

 彼女はいつだって味方だったというのに翻弄されたことで勇気も彼女を恨み憎んだ。

 でも、元を考えると彼女は悪くはなく、飯倉桃子が悪い。

 飯倉桃子がいまだに悪魔だといわれて信用できる保証はどこにもないが先ほど助けてもらったことで勇気は今では雪菜の言葉を信用していた。


「あれ? 芽衣姉さん?」


 考え事をしていた勇気は目の前から芽衣姉さんが消えていたことに気付く。

 慌てて彼女の名前を呼んだが返事がない。

 冷汗が流れて不安な感情が高ぶりだす。


「芽衣姉さん! 姉さん!」

「落ち着いて、勇気!」

「でも、芽衣姉さんがどこかに消えて!」


 雪菜は翼を広げて上空に上がろうとしたが何かに阻まれてそのまま落下した。

 周囲に勇気は目を凝らす。

 今自分たちがいるのは住宅街の細道。

 芽衣姉さんが一瞬で消えるはずもない場所にいるのだ。

 そして、今しがた雪菜が何かに阻まれて落下した。

 要因となった天井を見た。

 そこには幾何学模様が浮き上がり何か透明な膜が見えた。


「結界ね」

「結界?」


 その時だ。

 どこからか、拍手の音が聞こえてくる。


「いやぁー、お見事だよ。あの場から逃げ出した人間は君が初めてだ勇気くん。さすがは我が主のお気に入りの餌だ」

「駆動捜査官!」


 前の交差路の左側から歩いてきたのはスーツを着込んだ男、駆動捜査官。

 勇気たちを的場良治を精神的に追い詰め殺害したという疑惑をかけて容疑者にした首謀者。

 実際は、彼とその主というものが仕組んだことだ。

 そして、駆動捜査官は右手で芽衣姉さんを抱え込んでいた。

 その首筋に刃物が押し当てられる。


「動くなよ、動けばこの女は殺す。主からの命令で計画を変更し、さらなる絶望を与えよとのことなんだ。だから、まずはこの女を殺す」

「やめろ! 芽衣姉さんは離せ! 殺すなら俺を殺せ!」

「あーダメダメ。主の命令では勇気くんは殺すなってやつだ。だから、ダーメ。じゃ、バイバイお姉さん」


 芽衣の首筋が切り裂かれ、血が噴き出す。

 勇気は絶望に打ちひしがれ絶叫する。

 雪菜は駆動へとびかかりその胸元へ右手に宿した光の刃で突き刺した。

 駆動捜査官は一瞬の出来事に目を丸くして「え」と呆けた表情をしながら火炎にまみれて炭とかした。

 あまりにもあっけない終わりだった。

 勇気はとっさに芽衣姉さんのそばに歩み寄って彼女をゆする。

 しかし、彼女の目に生気は宿っていない。


「いやだ、うそだ! そんなのうそだぁあああああああああああああ!」


 その時だった。

 女の哄笑がどこからともなく聞こえた。

 ゆっくりと、勇気は顔を上げる。


「あらぁ、ごきげんよう勇気さん。お元気かしら。いや、元気じゃなくって絶望してるぅう? キャハハ!」

「飯倉……桃子!」


 勇気はその時、本当に彼女が悪魔だったと分かった。

 彼女の姿は普段の姿ではなく、黒い翼に角や刺青を浮かべた顔をゆがませて恍惚の笑みを見せている。

 舌なめずりしながら、雪菜に目を流す。


「まだ、生きていたの堕天使。まったく、よくもウチの駄犬を殺してくれたわぁん」

「どこまで、彼を苦しめが気がすむの?」

「あら、堕天使が人間の心配? 落ちぶれた天使のくせにまさか人間に情を沸かせるなんてねぇ。キャハハハ!」

「あなただけは許さないわ。今ここで殺してあげる!」

「いいわ、来なさい。遊んであげる。今の私は絶望をたらふく味わって気分最高だから!」


 そうして、最終決戦ともいえる悪魔と堕天使の対決が始まった。

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