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裏切り

 翌朝。

 勇気は鳥の囀る音に導かれるようにしてゆっくりと瞼を開けて目を覚ました。

 携帯を手探るようにして頭上の棚に手を伸ばす。

 棚の上にあった携帯を手に取り時刻を確認する。

 土曜日の8時。

 今日は土曜日で学校が休みであったことを思い出す。


「いや、しばらく休みになったのか」


 昨晩、事件現場から雪菜と別れ帰宅して家に着くと留守電が入っていた。それは学校からだった。学校の電報で事件の調査により一時的に学校をしばらく休校にするという連絡。

 開始日程は決まり次第伝えるということであり、それなりに事件が大事なのだという実感を感じさせた。

 確かに、校庭で学生の死体が出ればそうなるであろう。

 勇気は1階に下りる。すると、何処からともなく包丁の音やヤカンが火を吹く音が聞こえてくる。

 泥棒かと思い生唾を飲み込み、玄関廊下の壁に立てかけてある物などを取るように置いてある木製つっかえ棒を手にしてダイニングに向かった。

 キッチンと隣接してるダイニングにいたのは黒野真紀だった。彼女は物静かに何かを作っていた。


「な、何してんだよ?」

「起きたのかい」

「ああ」

「休みだってのに学生にしては早起きじゃないか」

「芽衣姉さんに早起きは大事って言われて育てられたからな」

「そうかい。朝飯がもう直できる。顔洗ってきな」


 今までに何もしてこなかった彼女の突然の母親らしい振る舞いに驚きと動揺が走った。

 彼女が何かを企んでるんじゃないかといらん疑りを探った。


「なにを考えてるんだ?」

「なにさ、突然、母親が息子のために飯を作ってちゃおかしいかい?」

「――だって、そうだろうが! 今までのあんたは俺をさんざん痛めつけてまともに飯さえ与えやしなかった! それが姉さんが捕まった途端に突然なんだよ! どういうつもりだよ!」

「……もう、人に奴当たるのはつかれたのさ……」

「はぁ? ふっざけんなよクソババア!」

「ののしって結構さ。朝飯は置いおくさ。食べるなら食べるで適当に食べたい時に食べな。あたしもそうする」


 勇気はますます癇に障って頭を掻き毟った。

 その苛立ちをどこにぶつければいいのかさえ分からず「クソッ!」と口に出して怒鳴った。

 そのまま洗面所に向かい身だしなみを整えて目覚めをすっきりさせた。鏡にはやつれた自分の顔がうつりいら立って鏡を殴った。盛大な砕けた音が響いて真紀がやってくる。


「なにしてるんさ」


 彼女の言葉を無視し勇気は切れてしまった自らの拳にふれてわらう。

 あまりにもその光景は不気味だった。


「躓いた拍子に鏡をおもいきり殴っただけだ。こわしてわるかった」


 洗面所の床から玄関廊下かけて血の跡がつたい真紀はひどく顔をゆがめた。

 彼のその背中は小さく感じた。

 今にも消えてしまいそうなほどに。


「ちょっと食べる前に待つんさ」

「んだよ」


 玄関廊下のところで呼びとめ、真紀は彼に近づいた。

 その手を引いてリビングに入る。

 ゴミだらけだったリビングはいつの間にか綺麗になっていた。

 ソファと小物や棚、テレビなどがあるような洋風の一室にかわり唖然とする。

 真紀は知ったかのように一つの棚の引き出しから救急セットを取り出し勇気の拳を手当てした。


「ありがとう」

「礼なんて言いさ。さっさと朝飯食いな」

「…………俺を怒ったりしないのかよ、もう」

「なにさ、怒ってほしいのかい?」

「ちがう! 俺はあんたにひどいことをしたんだ。それなのに、急にこんな風に優しくして……」

「ひどいことをしたのはおたがいさまさ。それに言ったろう。あたしはもう疲れたってさ」


 そのまま彼女は椅子に座り食事を始めた。

 勇気はあっけにとられた。


(まるでいつまでもうじうじしてる自分が馬鹿みたいじゃないか……)


 勇気は彼女と一緒に椅子に座り食事を始め、その時初めて勇気は義母と食事をした。


 ******


 朝食後、勇気は外出用のカジュアルテイストの私服に着替えて手持ちのある物をかばんにしまって家を出た。

 真紀にはただ出かけると一言だけ伝えている。

 勇気が向かうのは芽衣が捕まっているであろう警察署である。

 警察署の前には携帯であらかじめ待ち合わせをしといた雪菜が待っていた。

 彼女とともに警察署に入っていく。

 さっそく、受付にて例の男を呼んだ。

 最初は取り次がなかったが次第に騒がしい事態に彼が出向いた。

 そう、例の男は駆動捜査官である。

 彼はこっちの存在に気づくと大仰にため息をつきながらやってきた。


「君は確か黒野勇気君だね。お姉さんの釈放でも要求に来たのか」

「ああ! 姉さんは無実だ、だから、その証拠となる物をもってきた」


 その時に勇気は眼で雪菜と合図する。

 それは昨晩、この証拠を見せた時に決めた打ち合わせがあった。



 ********




 的場宅にて証拠を見つけそれを「殺人の容疑者の毛髪繊維となる証拠としてつきだす」という話をした時だ。

 雪菜はそのことについて疑問を言う。


「証拠をどうやって提示するつもりなのよ? 相手にこれを提示したところであなたは不法侵入罪で捕まるはずよ」

「そこだよ、そのために久遠さんがいるんだろ」

「は?」

「証拠を提出する時に催眠暗示とかかけられないのか? たとえば、俺の要求にはすべて受け答えられるとかさ」

「そこまで、悪魔は万能じゃないのよ。悪魔がなんでもできると思ったら間違いよ!」

「なっ! それじゃあどうするんだって言うんだよ!」

「知らないわよ! でも、催眠暗示なら芽衣先輩ができるでしょ」

「その芽衣姉さんはつかまってるじゃないか! 今回芽衣姉さんを助けるために言ってるのに意味わからねえ!」

「いいえ、可能性はあるの。彼女と連絡を取り合う手段はね。これよ」


 雪菜は自らの腕を指差した。

 そこには勇気や芽衣と契約した時についた痣である。

 契約のしるしとも言うべき痣。


「それがなんだよ」

「これは契約者と話ができる機能をゆうしてる」

「は?」


 すると、しばらくして勇気の頭の中で彼女の『これは念話というのよ』と聞こえた。


「なんだこれ!? すげぇな」

「これで、彼女と連絡を取り彼女にあの『dagger trigger』で駆動捜査官を操ってもらうのよ」

「斬りつければそういえば、芽衣姉さんのトリガーは操ることができるんだったな」

「そうよ。トリガーは本人の心の中の武器。だから、いつでも念じれば呼び出せる」

「じゃあ、さっそく念話を――」

「慌てないでよ。今してるわ」


 しばらくして、雪菜は彼女とつながったのかいきさつを説明しながらその行動を支持する説明に入った。

 そして、彼女が○×警察署の刑務所に拘留されたことを知る。


「芽衣姉さんは殺しちゃいないのに」

「ますます状況がまずいわね。まぁ、明日の昼にでも警察署で待ち合わせしてその証拠を突き出せばいいわ。そうすれば、証拠がDNA検索されて犯人が特定される。それが獣だろうと人だろうとね。おおよそ、これは悪魔の使い魔よ。だとすれば、その使い魔は人に化けてるわ」

「じゃあ、その奴もわかるのか」

「使い魔がDNA情報を市役所とかに出してればね」



 *******


 昨晩の経緯を振り返り勇気は駆動捜査官が証拠を受け取った行動を見ながらドキドキする。


「証拠はどこで見つけたんだ?」

「それは的場宅だ」

「なに?」


 勇気は顔を硬直させた。あまりにも反応が想定外。

 彼は険しい顔をしながらその証拠を放り捨てる。


「そうか、君も共犯か」


 駆動捜査官は即座に勇気の腕に手錠をかけた。

 雪菜は目を瞬いた。

 その雪菜も警察官に囲まれ始める。


「ちっ! あなたがそうなのね! 悪魔の使い魔!」

「何をわけのわからんことを言ってるのか知らぬが犯罪はゆるされないことだよ。さぁ、おとなしくお縄につくんだ」


 雪菜は即座に悪魔の脚力を生かして警察官の包囲網から脱出。

 置いてけぼりにされた勇気はただ権利を読みあげられるのを傍らで聞きながら絶望に叩き落とされるのだった。


(雪菜は俺を裏切ったのか! あのくそアマァアアアアアアア!)

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