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133-3 日本にて

「ごめん、待った?」

「いや、今来たところさ」


 俺が誰と待ち合わせているかというと、これがまた日本の真理さんなのだ。

 せっかくなので、日本で一緒に神社巡りでもしようと思って。

 真理さんの彼氏も一緒だ。


 うちの真理も一緒に来ているので、二人が並んで立つと、まるで顔がそっくりな姉妹のようだ。

 二人とも今日は着物を着こんでいる。

 真理の着付けは、うちのエルフさんが担当した。


「ひゃあ、相変わらず真理ちゃんにそっくりだなあ」


「そりゃあそうよ。

 御兄ちゃんが私をモデルにして作った子なんだから」


「あはは、今日はまだ行事が忙しくて国王陛下は来られないから、非常に残念がっていたよ」


 うちはシルとレミ、それにファルだ。

 トーヤとエディは、ミシン屋の宮里さんのところへ遊びに行っている。

 今年は遠方にいる孫が遊びに来てくれないらしく、それならという事で、あの子達が御泊りで遊びに行っているのだ。


 あいつらは本当の孫のように可愛がってもらっている。

 ドワーフなんて年末年始は飲んだくれているだけだから公務なんてないので、まだ子供だから飲まない二人は日本の御正月を選んだ。


「じゃあ、まずは北方から行こうぜ」


 そう言って転移した先は『日本最北端神社』宗谷岬神社だ。

 いかにも岬に設置された神社といった趣の小さな神社で、普段は御賽銭さえ郵便受け越しに投入するようになっているらしい。


 うちの家族は珍しそうに、その小さな神社を眺めていた。

 異世界船橋神社は俺が豪勢に大きく作っちゃったからな。

 よく考えたら、あそこも正月限定公開の収納式神社なのだった。


「寒っ、滅茶苦茶寒いんですけどっ!」


「うわあ、いきなり景色が変わった。

 テレポーテーションだ~」


 転移魔法初体験の彼氏君が喚いている。

 いきなり一面雪景色の極寒の世界へ跳んだからな。

 雪一色の方が一気に簡易な風景にリセットされて、脳の処理がさほど混乱しなかったかもな。

 派手な色彩から派手な色彩へと瞬時に移行すると、かなり脳の処理が戸惑うのだ。

 俺も寒いのは苦手だが、エアコン魔法があるので平気だ。

 うちの家族も。


「おいちゃん、寒くて雪もいっぱいだね」


 ファルだけは最北端のムードを真面に楽しんでいた。

 レミはミントの手袋をして、シルと一緒にネコミミ付きの可愛い雪ダルマに挑戦している。


「あはは、最北端の体験を体で味わえただろう。

 じゃあ温度調節の魔法を使うか」


「もう、園長先生ったら。

 そういう良い物があるのなら最初から使ってよね」


「だって、それじゃ季節感がまったく無くって寂しいじゃないか。

 せっかくの最北端なのに。

 年寄りじゃないからヒートショックで死んだりはせんだろう」


 まあ死んだらエリクサーに出番が回るだけだけどな。


「まあ確かにそうなんだけど」


「すごいな、これが魔法か。

 便利なものだねえ」


 この彼氏君は、限りなく山本さんに近い人種だな。

 山本さんは異世界へ行きながら、切った張ったなんてことは一切無く、今日もぬくぬくと異世界で暮らしているのだが。

 魔法なんて、本当に只の便利な物くらいにしか思っていない。


 織原なんかは能力だけを見たら限りなく俺に近い奴なのだが、あいつは好戦的ではないので戦いは好まない。


 俺だって普段は喧嘩一つしない大人しい性格なのだが、気は短く沸点は低めだ。

 その辺りは親譲りなのだから仕方がない。

 異世界では、それはもう大暴れしちまったぜ。


 山本さんは、もう異世界の暮らしが完全に日常となり、日本へ帰って暮らすという発想すらないらしい。

 俺なんか日本へ帰りたくて転移魔法を求めたり、攻略のためダンジョンで魔物相手に訓練していたりしていたのだが。


 裏ダンジョン探索なんていう事までやっていたし。

 御蔭で頭の中に妙な神すら飼う羽目になってしまった。


 あの人を見ていると、日本へ帰ろうとして向きになっていた自分が馬鹿みたいだ。

 あれくらい、のほほんと構えていればよかったのだ。

 性格的に絶対無理だけど。



 神主さん常駐の神社としては北門神社が最北端のようだが、地理的にはここが最北端だ。

 正月と特別な行事の時にしか宮司さんがいないらしい。

 今日は正月なので有人モードだ。

 明日くらいから、また無人神社と化すのだろうか。


「どうして日本人って『最北端』をありがたがるのかしらね」


 うちの方の真理が首を捻っていたが、俺もうまく答えられない。


「さあ、でもバイクや車で行った時には、ひたすら最北端まで走って行ったけど。

 上の方って、大きな空港が無いんで行くのが大変なんだよ。

 日本人の休みって短いから、そんなところまで行くのも大変だ。

 だから最北端は行く事に意義があるんだ!」


「だからって近所でもないのに、こんな正月に来るところなのかしら」


 日本の真理さんは、空色のミントの手袋で覆った両手に息を吹きかけながらボヤいた。

 エアコン魔法を使っているので別に寒い訳じゃないのだが、周りの人はそうやっているので、つられてそうしている。


「だって神社って正月でも行かない人も多いし、ここは正月くらいしか宮司さんさえいないのだから」

「まあ、確かに滅多に来られるところじゃないよね」


 周りには、雪の積もった中で氏子さん達が立てたらしき幟が何本も立っており、普段はないはずの社務所もあるようだ。


 雪が無いと、いささか趣に欠ける気がしないでもないが、こうして雪が積もって飾りつけなどされていると非常に趣があっていい。


 ただ、一般観光客が普通に辿り着くのは至難の業だなあ。

 みんな、地元でお正月していたり帰省していたりするのだろうし。

 転移魔法万歳!


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