↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

848/1334

128-7 ハロウィン当日

 そしてハロウィン当日、皆が思い思いのスタイルで集まった。

 シルは蝶のコスチュームで、レミの芋虫と御揃いにしたようだ。


「いいでしょ、これでコスチューム姿も立派な親子よ」


 煌びやかなオオアゲハの衣装で、にっこりと笑うシル。

 これはこれでまた新鮮な魅力が。


 しかしレミは、変身小道具の魔法のステッキを使って、蛹を経て蝉に羽化した。

 せっかく芋虫と親子コスチュームに揃えたシルが、ちょっと微妙な顔をしている。

 どうやら蝉の幼虫のコスだったらしい。


 困惑するシルの代わりに俺が訊いてみた。


「えーと、あの、レミさんや? 何故に芋虫が蝉さんに?」


「えっとね、らいねんこそ、おいしいセミちゃんをぜひパパに。

 これは、きあいのひょうめいなの」


 ううっ、今からそれですかあ。

 そこまで蝉に拘っているのか。

 まだ秋なのですけど。


 こ、これはなんとしても逃げ延びねば。

 来年の夏あたりはレミもそれなりに大きくなるから、自力でいっぱい蝉を集めてきそうだし。


 男の子達はゾンビ軍団を演じている。

 スプラッタ・バンテージとかを着込んでいる子もいた。

 そのあたりは魔女フランネルの差し金だろう。

 今日はまだ書き入れ時なので、あいつは来ていない。


 遊びに来てくれたハイドの海賊王には、麦わら帽子と半ズボンを着せてみたが、さすがに長身の西洋風美男子には似合わなかった。

 さすがにちょっと無理があったか。

 貴公子に着せるようなもんじゃなかったしな。


 奥さんの方も、その相方みたいな女の子の服装をチョイスしたのだが、本人にはあまり好評でなかったようだ。


「何故、上はこんな下着みたいな感じで下が長ズボンなんでしょうか。

 航海士って一体何ですか?」


 こっちも失格だな。

 あまりにも上品過ぎる。

 この人も武の子孫なので魔法は姉妹の中では一番得意なのだけど、バトル系は苦手そうだし。

 海洋国家の王妃様なのだから航海士風コスでもいいかなと思ったのだが。


 そのあたりはシルと一緒だ。

 シルの方がもう少し活発だけどね。

 攻撃魔法みたいな物は姉よりもシルの方が得意だ。

 それとても、うちでは宝の持ちぐされになっているけどね。


 彼女メリーヌ王妃は、あの空中庭園事件の時でも只の攫われた囚われの御姫様役だった。

 さすがに、あのバランじゃ相手が悪い。

 俺だって裸足で逃げ出したんだものな。

 それがちゃんとわかるから俺はまだここで生きていられるし、ケモミミ園も守れたのだ。



 親方御一行は不意討ちにもほどがある『バイキング』スタイルだ。

 ヤバい、こいつは似合い過ぎるぜ。

 想像してみよう。

 あの図体にバイキング兜を被せた姿を。

 ローマ百人隊長の兜もなかなか似合っていたのだが、これは考えていなかったな。


 トーヤとエディも『小さなバイキング(ケモミミ・バージョン)』スタイルで、また可愛いったらありゃあしないぜ。


 女将さんがまたヤベエ。

 上下黒の少し使い込んだ感のある厚地の革スーツで、頭が角の有るバイキング兜の美女だ。

 何かこう、ハリウッドの大作映画にも出てくるような感じの不思議なキャラになってしまっているが、これまた半端ない威力だ。


 そしてバイキング達は輪になって座り込んで酒盛りを始めた。

 いや、構図としては特に間違ってはいないと思うのだが。

 むしろ、そのまんまで映画に出てくるようなバイキングの集団だわ。


 シルベスター離宮の給仕達は、細かい事は一切気にせずに料理を次々とバイキングの輪へと運んでいく。

 こんな事は、いつもの事なのだから。


 そして彼ら自身も仮装していた。

 エジプト風に、またあるいはメソポタミヤ風に、そしてローマ時代やインド・中国などの皇帝や王などに仕える給仕のコスプレなのらしい。


 このあたりの拘りはシェルミナさんの肝煎りかな。

 稀人の世界である地球の催しなので、公爵家の面子に懸けて『稀人風の仮装』に固執しているようだ。

 まあ別にいいのだけれども。


 俺が色々と提供した地球の資料から、各自でそれらの扮装をチョイスしたようだ。

 まるでアメリカ人のウエイターのように、実に楽しそうにリズムに乗って仕事をしている。


 王太子妃殿下は、草原の王女様(地球のファンタジー小説風)だった。

 そして何故かケンタウロス・コスチューム(ゴーレムスーツ)を着込んだ王太子殿下に跨っているし。

 王太子殿下も妙に嬉しそうだ。


 後ろ半分に入っている奴は一体誰だ!

 確か二人一組になるように作っておいたのだが。

 まさか中の人(後ろ側)はミハエルなのか!?

 さっきから奴の姿が見えないし。

「弟よ、お前に殿(しんがり)と俺の命は任せたぜ」って感じなんだろうか。


 真理は何故かスペーススーツを着込んでいる。

 昔の和製スペースオペラ系なのか、何かのアニメのキャラなのかよくわからない。


 俺は上下とも真っ赤でピッチリなスーツだ。

【爆炎】のアルフォンスなんだから、それでも悪くはないのだが。

 いつも真っ赤な衣装を着込んでいるんだし。


 なんていうか、アレだよ、アレ。

 左手に銃を仕込んだ、あの方の仮装だ。

 一応、通販で買ったレプリカの玩具(じゅう)を、左手に装着しておいた。


 仕上げが安っぽくて気に入らないといって、トーヤ達がきっちりと仕上げてくれたのだが、こいつがまた凄い出来になったようだ。

 まるで本物だわ。

 俺はプラモとかを買っても塗装とかは余りやらないタイプだし。


 こういうのもモデルガンなんかだとよくある話だ。

 昔、アメリカのガンショップの人がプラスチック製のモデルガンを手に取って「この銃は軽くて仕上げも素晴らしくて凄い」と言ったので、日本人のガン雑誌の人が「それはモデルガンだ」と言っても全然信じなくて、銃口を覗いてみろと言われて覗いてみたら穴が塞がっているのでようやく信じたという。


 そういや、ガンショップで日本のモデルガンがやけに高額で売られていたので何故だろうと思っていたのだが、きっと米国のヘビーなモデルガンマニアが趣味で買うんだな。

 チャチで安物な仕上げの本物の銃よりも、精巧に作られていて仕上げの良い日本製のモデルガンの方が高価なのだ。

 あの当時で八千円くらいで買える本物の拳銃と二万円以上するモデルガンが並んで売られていた気がする。


 この左手に装着した銃は只の玩具だけど、当然魔法は普通に撃てる。

 もちろん、それもハリボテである銃からではなく左手の先から魔法を出して撃つだけなのだが。


 命中すれば、宇宙空港とか宇宙戦艦なんかも軽く丸ごと吹き飛ぶ威力がある。

 腰にはお気に入りの12.7ミリ拳銃(リボルバー)【M500(本物)】をぶち込んである。

 そいつはジョゼのボディガードが見せびらかしたので、しっかりとコピーさせてもらったものだ。


 俺は、只のパンチ一発でドラゴンだって吹き飛ぶ腕力だし、こんな馬鹿でかいハンドガンでも速射できる。

 離陸前で、まだ地上にいる宇宙戦艦ならばパンチのみでの撃沈も可能だろう。

 ベスマギル刀なら宇宙合金製の船体も余裕で斬れそうだし。


 このM500はリボルバーのくせに、アイテムボックスを用いてアーケードゲームに登場する銃みたいに無限リロードできるし、魔法金属の素材に換装してあるので、どれだけ撃っても銃身は焼けたり変形したりしない。


 弾丸も魔法金属製だから貫通力も半端ではないし、極限までアローブーストをかければ、チタン合金製の甲板を持つ巨大な空母さえも一発打ち込めば真っ二つに出来るだろう。


 俺の本気モードの握力やパンチ力は、一体何メガトンあるんだろうか。

 多分、計測できる機器が地球には存在しないだろうな。


 それに仮装キャラの方が元になった本物キャラよりも強そうというのは如何なものだろうか。

 生憎な事に、それだけの腕っぷしがありながら、俺は冒険の旅にも出ないで自分が建てた離宮でビールでも飲んでいるか、あるいは子供の面倒を見ているだけなのだが。



 ファルは俺が作った変身キットでファルス形態となり、ドラゴンの衣装を装着していたが、なんと全長七メートルの大きさに成長していた。


「こ、これは。

 さすがにもう、俺でも抱っこするのは無理だなあ。

 レインも抱っこするんだったら、お前が人間形態の時だけだね」


「えー、そんなあ。

 二重奏の時はどうするのさ」


「隣で歌えばいいだろ。

 もう、お前が上に乗ったらレインが潰れちゃうって」


「むう」


 そして庭で凄まじく吼えている奴がいた。

 ゴン太だ。

 さっそく見に行ったのだが、これがまた。


「おお、これは中々映えているな」


 なんとゴン太は、あの有名な放射能怪獣の着ぐるみを着ている。

 吼え声も、ちゃんとそっくりに物真似しているし。

 俺が忙しかったので、こいつの分は真理が仕立ててやっていたのだ。

 しかもこれは昭和の時代の第一作、俺が子供(赤ん坊)の頃の本式バージョンの奴だな。


 残りの二匹は巨大な海老と蛾のコスだった。

 そういや、俺は怪獣が三匹出る海の大決戦の奴を見に行きたかったんだよなあ。

 父親の仕事が忙しいのと、母親が病気だったので映画なんて殆ど行った事がない。

 せっかく学校で休みの度に怪獣映画の割引券をくれていたのにな。

 その分は、おっさんになってから密林動画でたっぷりと、ビール付きで堪能させていただいたわ。 


 たまたまなんだろうが、何故か親父と行った二本の映画だけは超大画面で「おっぱい」が登場していた。

 狙って連れていってくれた訳じゃないんだろうがな。

 小学生ながら「おっぱい」が心に焼き付いたぜ。


 親子で見に行く映画でおっぱいなんか出させるなよな。

 アメリカだったら完全にアウトな案件だぜ。

 本当にあの頃って昭和テイストそのものだったよな。


 でも、あの頃は日本の映画館も輝いていた時代だった。

 今はシネマコンプレックスばかりだ。

 それすらも供給過剰で古いところは無くなったりしているし。


 蛾や海老の着ぐるみをドラゴンに着せるのは、さすがにちょっと無理があっただろうか。

 しかし、こうしてドラゴンにジャイアントな怪獣のヌイグルミを着せてみると、さすがにシュールな光景だった。

 やっぱり昭和の時代は凄かったんだなと妙な感心をしてみる。

 ああいうのは勢いというかノリでやる物だから、今じゃ絶対にああいう物は作れないよな。


 リメイクしたとしても非常に陳腐というかチープというか。

 その辺の事情はハリウッド映画でも似たようなもんだ。

 そういう物も、ハンボルト家あたりが金に糸目を付けずに手掛ければ、また話は別なのだが。


 そしてレミが、とことこと中庭にワゴンを運んでくる。

 直径二十センチくらいある、料理を保温するための半球状をした金属製の蓋付き皿が載っていた。


「おや、どうしたい?

 御腹が空いちゃったのかい?」


「ううん、これはパパのだよ」

「え?」


 そして、レミが浮かべた満面の笑みと共に外した半球型をした金属製の蓋の下から現われたそいつは!


 イ・モ・ム・シ。


 丸々と太って、じゅうじゅうと音を立てた熱々の。

 パンパンに膨らんで、今にも肉汁が溢れそうな雰囲気を放っていた。

 こいつは紛れもない、本物のイモムシだった!


「そ、そ、それは~!」

「たべて~」


 俺は思わずシルの方を見る。


「あの、『わかってる』って言ったよね?」


「え、ええ。

 ちゃんと用意してあるわよ?」


 ああっ!

 夫婦でも全然通じていなかったよ。

 やっぱり親しい関係でも、ちゃんと言葉にすべきだよね。

 外国人の嫁さんをもらうと、こんな物なのかもしれない。

 こういう「言葉で言わなくても相手に気持ちは通じている」と勘違いするのは日本人の悪い癖なのだ。


 俺は脂汗を垂らしながら、泣く泣くそれに手をつけた。


「うわ、トロっとして凄く美味い」


 これは、あれだな。

 オーストラリアの先住民が食べているような奴で、日本人が食っても凄く美味い奴だ。

 しかも、滅茶苦茶に美味いのがまたなんとも物悲しい。

 でも俺は芋虫が大嫌いなの!


 しかし娘にじっと監視されているので、止むを得ず全てを平らげたのだった。

 男(親)は辛いよ!


「おっさんのリメイク冒険日記」

 書籍4巻 コミックス1巻、好評発売中です。

 コミックス発売即重版決定のようです。応援ありがとうございます。


「ダンジョンクライシス日本」、ハヤカワ文庫JAより書籍化決定です。

https://ncode.syosetu.com/n8186eb/




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。