128-3 小道具係
「さあてっと。
じゃあ、さっそく作ってみるとするか」
そう言って俺が引っ張り出したのは、作りかけの『変身キット』だ。
要は、アイテムボックスの衣装換装機能を持たせた小道具なのだ。
こいつの肝は、そのスタイルにこそある。
さて、どんな小道具にするか。
バトン・コンパクト・眼鏡・スマホ・ベルトなどなど。
女の子なら可愛い髪飾りなんかもありか。
こいつは外観がとても大事よ。
なんたって、只のハロウィン用子供向け玩具ですもの。
これは幾つもの衣装をそいつに登録しておいて、それを着込めるようにした物なのだ。
俺のアイテムボックス早着替えのような実用品ではなく、イベント用の小道具なので何よりも遊び心が大切なのだ。
中身の衣装よりも、そっちの方面の意匠に拘らないといけない。
子供達が中に衣装を仕込めるように、早めに作って渡しておかないとな。
使い方に少し練習が必要かもしれないし。
こいつに付与したアイテムボックス機能に、御気に入りの衣装を仕舞い込んで登録するのだ。
別に一々着替えたっていいんだが、それだと面白くない。
このグランバースト公爵家において、面白くないなんていう事が許される筈などないのだから。
そしてバトンなるもの。
それは俺にとっては小学校の頃に参加した鼓笛隊のイメージなのだが。
俺は鼓笛隊にピアニカを首から下げて参加したな。
曲は全校で一曲だけしか練習していなかった。
ずっと、それを演奏しながら延々と歩くんだぜ。
まったく御疲れ様だわ。
曲はそういう催しでよく使っていた何かの行進曲なのだ。
そいつは、うちの幼稚園の運動会でも使ったよな。
そういや、そろそろ運動会の季節だった。
今は子供の人数が増えたんで、そっちの準備も豪い事だわ。
とりあえず色々と道具を作って遊んでみる。
きっと俺より若い世代(といっても、それほど世代は離れていない連中だが)だと、魔法のバトンだとかステッキなんかがイメージだろう。
いろんなスタイルの物を製作してみた。
まずは「御爺ちゃん」のステッキからだな。
イギリス紳士のあれじゃなくって、仙人の爺ちゃんが持つような、あの節くれだった木の杖だ。
中にはオリハルコン製の仕込み杖が内蔵されている。
こいつは、うちの御隠居にでもプレゼントしようか。
そういや、あの人ってまた旅に出ているんだよな。
一体どこへ行っちまったものやら。
ミハエルが相当ぶつぶつ言っていた。
日本のボケ老人ではないので、消防団(王国騎士団がその代わり)に捜索願いを出す必要はないのだが。
あれだけ年中国内を歩き回っていたら絶対にボケまいよ。
大体がとこ、御隠居って呼ばれるような人種は諸国を漫遊など決してなさらず、主に視察っぽい感じで国内を歩いて回っているのがまだ救いだよな。
次がバトンだ。
色違いで何本か作ってみた。
これは女将さんが大好きなんで。
親方用にも作ってみた。
魔法のバトン、ウイズ『チアリーダー』スタイル。
いや、別に親方に一人でやらせようという訳じゃなくって、ちゃんと俺のも御揃いで用意してある。
でも親方が肩に乗って上になるような体勢はちょっと無理だ。
まあやってやれない事はないのだが、なんというか見栄え的になあ。
そういうのはドワーフばかりでやってもらおう。
ドワーフ・チアリーダー隊(男のみ)か。
自分で言っておきながら、ちょっと胸が悪くなってしまった。
トーヤとエディだけなら可愛いものなのだが。
そして化粧用のコンパクト。
日本では、こいつの玩具が御化粧もしないような幼い少女達にも大人気だった。
でも、それって本来は大人が持っている物だからなんだよね。
子供には、そういう物が非常に魅惑的に見えるものなのだ。
俺は男の子だったが、某変身魔法少女アニメの影響で、御袋のコンパクトでよく遊んだよ。
あれが本来は何に使う物なのかも、当時はまったく理解出来ていなかったのだが。
まさか化粧の道具だったとは夢にも思わなかった。
あのアニメに御化粧シーンは出てこないもんな。
なんか肌色っぽい粉みたいな物が出て、おまけに変な匂いがするなあとは思っていた。
この世界でもアルフォンス商会が売りに出しているので、コンパクトは貴族や富裕層には比較的普及しているのだが、一般大衆にはまだまだという商品だ。
最近は日本から直輸入しているものもあり、高級品として喜ばれている。
化粧品や香水と合わせ、フランスなどから取り寄せている物も好まれる。
まあ、このあたりを懐かしく思うのは俺と同年代の御姉様方かな。
男の子は、やっぱりこれ。
『変身ベルト』だ。
実を言うと、俺も子供の頃にこれが欲しくて欲しくて。
しかし、とうとうそいつが手に入らないまま、テレビ番組への興味を失っていった。
さすがに大人になってからは金があっても買わなかったな。
特に大人用サイズなんて売っていなかったし。
あれはサイズって調整出来たのかね。
という訳で、あの頃の憧れを込めて作ってみました。
『本物の』変身ベルトを。
風車が回る奴、ボタンを押す奴、そして何故か『ベルトを締める』奴。
ベルト一本でもいろんなアイデアがあるもんだ。
そもそもベルトというものは、男性に取っては時計と共に数少ない貴重な御洒落アイテムであり、ブランド店などに行ってもあれこれと並んでいる。
ラスベガスのショッピングセンターのブランドショップで時計と共に販売員から勧められる定番の代物さ。
こちらへ来る前には、結構腹が出ていたのでベルトなんぞとは縁のない生活をしていたのだが。
御通夜や御葬式がある度に喪服が入らなくて、ちょっと困ったものだ。
そのうちに世捨て人である俺は、そういう催しにもいつしか呼ばれなくなったので、その悩みも自然消滅の形で消え失せた。
ペンダント。
これなら男女共用でいけそうだ。
それでも一応は、男女向けに別のデザインに作る。
玩具としては各種デザインが映える代物なので、女の子用にはブローチ・タイプも用意してみた。
そして指輪だ。
ファンタジー映画では定番のアイテムだよな。
一般に異世界では、こういうものは貴族とか王族の女性、または富裕層が使うようなアイテムとして出される商品だ。
だが、これはなんというか縁日の指輪というか、ガラス玉が嵌まっている奴というか、そういうものなのだ。
だって子供にはその方が可愛いでしょ。
というだけの理由で、わざと玩具っぽいものを作成してみたものだ。
髪飾りなんかも同様に、子供用の玩具っぽい感じに作ってみた。
あとはブレスレットか。
しかし、これはアイテムボックスなどを装備した腕輪があるんで、なんだなあ。
そして、なんといっても眼鏡だ!
もちろん普通の眼鏡ではない。
超派手派手デザインで、しかも目に当てて、いちいち「デュワっ」とか叫ばないと起動しない奴だ。
「また変な物ばかり作ったのね」
奥さんに呆れられたが、まあ異世界の元御姫様には絶対にわからんような物ばっかりだわね。
というか地球の奥さん方も、こういう男のロマンみたいなものは絶対にわかってはくれないわな。
油断していると、旦那のそういうコレクションが知らない間に片付けられていそうだ。
だがトーヤやエディ、そしてポールあたりは、きっとわかってくれる事だろう。




