125-7 まずは洞窟探検から
「とりあえず、やっぱり洞窟系のとこから見ていくかあ」
まあ洞窟系のテーマパークというか、只の鍾乳洞見学なのだが。
行った先は秋吉台。
どうせだからカルスト台地も見物していく。
ここって高校の修学旅行で行ったんだっけかなあ。
個人の旅行で行ったんだったけかなあ。
おっさんなので、まったく記憶にございません。
確か、バイクで日本一周へ行った時に寄った気がする。
確か富山まで出て、そのまま山陰の海沿いを九州まで行ったんだよな。
懐かしいからって就学旅行と合わせて二回行ったかも。
展望台から眺める、石灰岩柱の並ぶ光景を子供達がじっと見詰めている。
もう子供同士は仲良くなったようだ。
レミとハルは可愛らしく御手手を繋いでいる。
ハルにも、おやつを詰めた可愛いリュックを背負わせてある。
「へえ、これ地獄谷って言うんだねえ」
あらま。
ファルが呼んできたらしく、いつのまにかトーヤ達も来ていた。
「あ、園長先生。どうぞ、御構いなく。
そっちは大事な視察なんでしょう?
こっちはこっちで、のんびりやりますんで~」
もうすっかり日本などは自分の庭にしている御狐小学生達。
こいつらは俺の腕輪持ちなので、そう心配は要らないのだが。
ドワーフとの決済には、いくらか日本円も渡してあるので、こっちの金にも困っていまい。
よく見たら、カーバンクルのロイネスも一緒だ。
相変わらず野次馬根性だけは旺盛だな。
こいつは居てもまったく警護の役には立たない。
こいつを撫でたくて可愛い御姉さんとかが寄ってくる役得には恵まれるのだが、生憎な事にそれが役に立つような人材はここには誰もいない。
「あら、何この可愛い生き物」
「えー、ぬいぐるみじゃないの~。
超可愛い~」
「ねえねえ、綺麗な御姉さん。
その御菓子、美味しそうだな~」
「この子、日本語喋ったー!」
「もしかして、ロボット!?」
残念、只のもふもふ系精霊でした。
最近、あいつも御世辞が上手くなったな。
いや、御姉さん達は確かに綺麗だったが。
山口の女の子は結構可愛いのだ。
ここの方言も可愛いのだが、今日の御姉さん方は残念ながら方言を使ってくれていない。
あと山口の女性は凄く気が強いらしいので、嫁さんに貰う時は尻に敷かれる事受け合いだろう。
それも個人差があると思うのだが、俺の知り合いは駄目だったらしい。
その人は、もういかにもっていう感じの人で、喋り方や顔付きからして完全に気の強そうな女性だったけどな。
まあ、尻に引かれていても幸せらしいからいいか。
ユースホステル常連のみんなに対して嬉しそうに結婚の報告をしていた。
あいつらは学生時代からの付き合いらしかったし。
「うわあ、触るとふわふわ~。
なんという手触りか~」
やれやれ、無闇に人間に話しかけるなと言ってあるものを。
御姉ちゃん達さ。
生憎な事に、うちでロボットっていうかゴーレムというのは人間と区別がつかないくらいの素晴らしい出来なのさ。
あれを人間じゃないと見破る事が出来たら大したもんだ。
名残惜しげな地元の御姉さん達へ一生懸命に手を振るふわふわ精霊(顕現中)の手を握ったうちの娘達と一緒に、お次は鍾乳洞体験だ。
「みんな、中は冷えるから、ちゃんと上着を羽織ってね」
全員にエアコン魔法標準装備の上着を渡してやる。
ハルには赤頭巾ちゃんっぽい感じのフード付きマントみたいな奴を着せておいた。
これは前が開いていても充分な効果があるのだ。
富士の氷穴ほどではないが、ここも結構冷える。
レミには白頭巾ちゃんタイプのコートだ。
下側の両端には可愛い白いボンボンが二つ揺れている。
足元は、足の裏が滑りにくいタイプの靴を履かせてある。
たまに見学順路が濡れているところがありそうなので、本日足元は滑りにくい物をチョイスした。
チビっ子は転ばないように大人が手を繋いでいく。
「へえ、これが鍾乳洞かあ」
子供達の目は異世界の観光コースに釘付けだ。
おミミ付きの子達は、わふわふとミミが揺れている。
「ほお、これはまた」
「この通路はなかなか趣がありますな。
地下ダンジョン見学コースにも採用するといいかもしれませんな」
「どれ、このカメラという魔道具で。
あれ、どうやって使うんだったかな」
「ここをこうじゃないか?」
「いや、こうじゃなかったっけ」
「あー、違う違う。
この機種の場合はねー」
すかさず初心者のおっさんどものために、一緒についてきたトーヤ先生のカメラ取り扱い講座が始まった。
「綺麗なものねー」
シルもその場にしゃがんで娘の肩を抱きながら、その天然の芸術品に見惚れていた。
レミもじっと動かず、ただミミだけをピクピクさせて見つめている。
「探せば、多分あっちの世界でも鍾乳洞くらいありそうなんだけどなあ」
「じゃあ、今度探してみようよ」
「そうだな。
そいつは理科の学習施設としてもいいかもしれない」
おっさん達も、がやがやしながら楽しんでくれているようだ。
「どうです、地下の大鍾乳洞は。
長い時と大地の気まぐれが作り出した芸術ですから」
「いや、これは中々の物です。
こういう在り方もあるのですなあ。
残念ながら、我々の地下帝国にはこのような風光明媚な様はありませぬが」
「それでも趣のある場所では、こういう施設の在り方も有りかもしれませんが」
それよりも、地下を縦横無尽に走り回るコースをトロッコで駆け巡る奴を俺がやりたいな。
子供と一緒に乗ったら盛り上がりそうだぜ。
「とりあえず視察なんだから、帰った時に他の人に見せられるように、資料をたくさん持ち帰るようにしようか」
そして、さして高い教育を受けてきたわけでもない異世界のおっさん達は、最新の映像機器を相手に大いに苦戦するのであった。
俺もそういう機器の最新モデルの扱いは苦手だな。
ここは任せたぜ、ドワーフの国家特級技師達よ。




