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59-3 シルベスター・プティ・パレス

 今日は朝からエルフの職人さん達が内装工事を頑張ってくれている。

 意外とスピーディーな仕事ぶりだが、その品質は超一級品だ。


 シルの要望で「夫婦の寝室」から始めている。

 風呂回りやその他もだ。

 忙しかったので、昨日も「無し」にしちゃったからな。

 ただ、全面的にこっちへ引っ越すつもりはない。


「出ていかない」は、おチビ猫との約束なのだ。

 どうしてもという話になったら、ケモミミ園の住居部分を離宮内に移転するという荒業もある。

 ゲートで繋いでおけば移動も問題ないし。


 俺じゃなくってケモミミ園の方が出ていくのは契約上アリじゃないかと思う。

 そのうちに幼稚園を拡大する必要もあるのだし。


 どうせ真理の子供拾い癖は治らない。

 寂しかった千年の間に子供を拾って育てていた事もあるらしい。

 当時は別れが辛くて拾うのを止めてしまったらしいが、今はみんながいるからな。


 この離宮のモデルになった宮殿は、ざっと四百部屋くらいあったらしい。

 ここは一部広い場所も用意したので三百部屋くらいだ。

 まあ、そのあたりは成り行きで行くかな。


 必要なら空間拡張で離宮内部を広げよう。

 とにかく、今は小煩い外野を黙らせるために外観の見場がいい事が最優先なのだ。

 中身に関しては魔改造するのは有りと言う事で。


 今、俺は外で庭の整地をしているのだが、ドライアドどもがまた煩いのなんの。


「あー、そこ。

 なんでそんな風にしちゃうっすか」


「そこの日当たり、もうちょっと、なんとかならないですか」

「ここ、もうちょっと土に栄養欲しいです」


「水はけが悪いよー」

「ここ、土の中に岩が多くて嫌だ~」


「えーい、やかましい。

 贅沢言うな。

 それより、こっちの設計図を見てくれ。

 こういう具合に綺麗にしたいんだ」


 あっというまにピンク頭が集まって、いっぺんにどたまを突き合わせた。

 それじゃ見えんだろう。

 相変わらず頭の悪い連中だな。


 俺は、壁に大きな出来上がり図を貼ってやり、それぞれ担当の場所を割り振って、担当分の細部図を渡して作業をやってもらう事にした。


 やはり庭は、もう少し大きめの方がいいなと思い、離宮用の土地は外側へ拡張しておいた。

 このあたりの土地は俺が使い放題だから融通が利く。


 ドライアドどもは一斉に散ると、それぞれ担当の場所へ行って、わふわふとピンク頭を揺らしながら仕事を始めた。


 中には大の字になって大地礼をしていたり桜の木になって植わったりしているような者もいて、大丈夫かいなと心配になったが、まあそこは餅屋に任せておくか。

 あれで連中も、植物周りの事に関しては中々頼りになる。

 そうでなかったら連中には任せないで、精霊の森から高位精霊のドライアドを呼んでくるんだけどね。


 俺はその間に色々と打ち合わせをしたり微調整をしたりとかしていた。

 特に趣とかを重視しないでいい金属部分とかは、ドワーフ製の既製品の在庫を使ったり俺がその場で作ってしまったりした。


 出来上がったところには、高級なカーペットやカーテンなどを設置していく。

 窓枠などは機能面を重視して、俺が作った日本式の物を使用した。

 警備システムも組み込みたかったし。

 だが外から見て違和感がないように意匠には最新の注意を払った。


 御風呂も広い日本式にした。

 まあ、それはこの国の標準仕様なのだが。

 人数が多いので風呂は五か所作っておいた。

 どうせ子供も入れる予定なのだから。


 そうこうするうちにピンク頭の大将が呼びに来た。


「出来たよ~」


 みんなで見に行くと、なんとも見事な大庭園が出来ていた。

 精霊の仕事、早っ。


 うん、ネットで見たモデルになった宮殿の美しい庭園そのままだ!

 各所に配置された、地球スタイルの彫像や噴水、置き岩やモザイクタイルなど。

 それにオプションで化石魔物のオブジェなども置いてみた。


 それらのパーツはゴーレムに渡してあるので、ドライアドどもと打ち合わせしながら、ああでもないこうでもないと楽しそうにやっている。


 元になった宮殿は広大な敷地を誇り、敷地内に巨大な湖などもあったが、ここは宮殿付近を再現しただけなので、さすがに湖はない。


 さすがの俺も離宮一つに、モデルになった宮殿と同じ三百キロ平方のスペースは取らない。

 パリが二つ入ってしまうわ。

 約王都アルバ一つ分だ。

 それだとアドロスの街の方が離宮のおまけになってしまう。

 アドロスと王都じゃあ街の直径が十倍くらい違うからな。


 後で各部を携帯空港のように拡張したりするのは有りなのだが。

 そこに湖を配置するのは当然有りだった。

 そんな真似をしたら、うっかりすると終いにはダンジョン離宮とか呼ばれてしまいそうなのだが。


 とりあえず、小さな池をアクセントにしておいた。

 管理のためにニンフを一体召還しておく。


 池にある噴水から大量に魔力を流しておいたので、精霊達の溜まり場になってしまうかもしれないな。

 まあそれはそれで、我が家の風物詩になること請け合いだ。


 浄化機能をつけているので、池の水は常に清廉だ。

 鳥の水飲み場もこさえておいた。

 それも常時浄化魔法がかかるようになっているので糞害の心配などはない。

 

 離宮の正式名称は「シルベスター・プティ・パレス」としておいた。

 横書きの看板には大きくカタカナで書かれていて、下にこの大陸の文字で書かれている。

 他にも遊び心で、漢字で書いた看板も作ってみた。


 誰か公爵がそれに文句をつけてきたら言ってやろう。


「稀人の子孫たる王家の方々ともあろう者が、稀人の国の文字が読めないとは!」


 それでもまだ文句が来るようなら、初代国王妹君たる本家の方の真理さんにも何か言ってもらえば済むし。

 なんといっても彼女って現役の国王陛下が自分より上の存在だと認めた、現王家一族の『大御婆様』なんだからな~。


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