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57-11 怒りの榴弾砲マーチ

 そして閲兵場に大量の戦車と、これも本物の百五十五ミリ榴弾砲を並べて、ストレス発散のためにぶっ放しまくった。

 陛下達にはイヤープロテクターを前もって渡してある。

 うちではイヤーマフなどという、一般の日本人に馴染みのないような呼び方はしない。


 日本では昔からそう呼んできたし、アメリカの一般観光客向けの射撃場にいる日本人インストラクターも、ちゃんとイヤープロテクターと呼ぶ。

 イヤーマフだと日本人に対してはガンマニアか軍事マニア以外には意味が通じないので、彼らにとっては面倒なのだ。


「てーっ」


 そこからは物凄い事になった。

 ズラリと並んだ戦車がぶっ放す勇姿も迫力だが、百五十五ミリ榴弾砲の砲撃音は凄まじい。

 空砲とはいえ、まさに一発一発が大気を揺さぶる衝撃だ。

 砲口から吐き出される炎と硝煙の嵐。


 観ている連中も、その圧力で一歩も動けないどころか身動(みじろ)ぎ一つできない。

 彼らにとっては突然始まった未知の衝撃なのだ。


 そこは、もはや『地球の戦場』と化した。

 しかも、その数が半端じゃない。

 榴弾砲も一千門ほどずらりと並べてやった。

 これは自衛隊の訓練御披露でも絶対にありえない数だろう。

 現代では、まさに戦場以外では御目にかかれまい。


 いや現在の戦争では実戦ですら、この光景は絶対にありえない。

 はっきり言って演習レベルでの小競り合い程度しか起きないのが現代の戦争なのだ。


 実戦では榴弾砲も、せいぜい一度に数門からで、あっても十数門といった範囲でしか使われないはずだ。

 少なくとも、大戦争となっても同じ場所で一千門の榴弾砲をぶっ放すなんていう事は絶対ない。

 そんなに纏めて大砲を同じところに置いておいたら敵の猛攻を食らって全滅してしまう。

 砲身の加工は結構大変なので、壊れてもすぐに大砲の御代わりは来ないし、砲身自体も射撃場の拳銃と一緒で消耗品なのだ。


 最近は空爆だけではなくて、安価な自爆ドローンまで大砲潰しのために投入されているんだからなあ。

 大砲なんて一発撃ったら逃げるが吉である。

 最新型の榴弾砲は機動力が命だ。


 大砲数門でも物凄い大迫力でビビる。

 一発撃つごとに心も体も震える。


 演習場から道路を隔てた、かなり離れた場所にある駐屯地の建物の窓が割れんばかりに震えるのだ。

 そういう視覚化された情報は、更に精神の奥深くまで砲声を捻じ込んでくる。

 見せつけるには、あれも悪くない手段だ。


 今回は、王宮ゾーンの建物を保護するためにサイレントやバリヤーを持ち出したくらいだ。

 昔、新撰組が寺で大砲の訓練をしていて、空砲の衝撃だけでその寺が壊れたという逸話を思い出したのだ。

 今日の演習も指揮を執っているのは近藤局長だからな。

 なんといっても本物の近藤勇の首塚がある街からやってきた創造主に製作された、由緒正しい近藤局長なのだ。


 ここは開けた場所なので、第三隔壁の向こうにある貴族街まで音が漏れているかもしれないな。

 もし外に聞こえていたら王都の民がなんと思ったろうか。

 頑丈で高めの壁で覆われてはいるのだが。


 見ている連中は度肝を抜かれてしまったようだ。

 皆、榴弾砲の砲手のように耳を塞いで目を見開いている。

 あれらは元々この世界には無い物なのだし。


 本来なら絶対に出すべき物ではないのかもしれない。

 ベルンシュタインとやりあっていた時も、そう思っていた。

 だが今回ばかりは、さすがの俺も頭に来ちまった。


 いつも自分の身が危なくなると王都から逃げていくような臆病な連中が、ごちゃごちゃと小煩せえ。

 どうだ、こっちの音の方がよっぽど煩いだろう。

 文句があるのなら受けて立つぞ。


 奴らも改めて俺の魔王ぶりを思い知った事だろう。

 騎兵団なんて嘘八百である。

 どっちかっていうと機兵団っていう感じだ。


 いや、只の機甲部隊だな。

 近代的な軍隊だ。


 そして最後の仕上げをゴーレムさん大行進で〆た。

 百万体の新型ゴーレムを行進させてやったのだ。

 先頭には、誠の旗を立てた和装の新撰組隊士を歩かせてやったぜ。


 閲兵場の端をそれぞれ、入場ゲートと退場ゲートをガラスの園に繋いである。

 そのまま延々とキャタピラのように繋がる、いつ果てるともわからないリピートされたゴーレムの列が延々と続いた。


 異なる五色の日本戦国時代風の旗を持たせて行進しているので、全てが同じものとは間違われないはずだ。

 まるで床屋さんの入り口にある二色の立体看板のように無限ループしていく。


 全員が一糸乱れず揃って行進している。

 縦横が各一千列の百万体の五色兵団だ。


 やがてびっしりと約一キロ四方に密集したゴーレム兵団が一団となり、足並みを揃えてゲートの彼方へと消えていった。

 本物の軍隊でも決してこうは揃わない。


 百万体のゴーレムの全ての足音が一つになるという人間ならば決してありえない凄まじい錬度に、その意味を理解出来るほど優秀な軍の指揮官や王国騎士団の人間は顔色を失った。

 かつて自衛隊は、かなりヤバイ紛争地へ派遣されても、常に毅然として直角直進を貫く凄まじい練度を見せつけて、殆ど非武装であるにも関わらず立派に無事数か月に渡る任務を果たし終えたという。


 俺はちらっと同じ場所にいる公爵連中を盗み見てみたが、北の玄武公爵閣下は今にも腹を抱えて大笑いしそうな按配で、東の青龍公爵は目を見開いていた。

 ベルベット嬢の親父さんは娘から色々と聞いているからな。

 そして初御目見えの南の朱雀公爵といえば、口をあんぐりと開けていた。


 ふっふっふ。

 西の白虎公爵のお通りだぜ!


 だがこの白虎、生憎な事にもっぱらの任務は子作りなのだ。

 早いところ、虎穴の虎の子をこさえないといけないものらしい。

 一体どんな奴が生まれてくるのか非常に心配なのだが。


 純粋な稀人×稀人の配合である葵ちゃんの御腹の中にいる奴は既にヤバイ奴なのが判明している。

 うちも、父稀人×母の遠い父稀人の配合だ。

 しかも、この世界で一、二を争うほど性質が悪い札付きの「魔王称号持ち」である稀人血統同士の組み合わせなのだ。


 まだ見ぬ我が子へ。

「御父さんは、今から君の事がとても心配です」



 俺のやる事を知る王国騎士団の連中も、この予想の斜め上を往く馬鹿騒ぎには皆呆れ果てていた。

 行くなどという生易しいものではなく、完全に往っている。

 他の連中も思い知った事だろう。

 やっぱり俺は初代国王と同じ稀人の国から来た人間なのだと。

 そいつは体で理解出来たはずだ。


 とりあえず、体表面に当たった音波が肉を通り越し骨伝導で脳まで伝わるレベルの強大にして物理的な音響で、雑魚共は思いっきり黙らせてやった。


「以上を持ちまして観覧式を終了いたします。

 皆さん、御疲れ様でした~」


 この次は、もし文句つけてくるとしたら、この兵器を寄越せとか言ってくる奴がいるって話かな。

 その時は、また別の方法で黙らせることにしよう。

 この俺のHP三千二百万のパワーだけで充分かな? 


 もう頭に来たので大人しくするのはやめた!

「暴れん坊公爵」推参!


 そんな番組でも作っちゃおうかしら。

 そいつは葵ちゃんに外注かな。

 この俺が大人しくしていようなんて、端から無理な話だった。


 この世界でも、俺の事を「おっさんが暴れるなんて」とか、「おっさんの癖に餓鬼のように暴れている」とか言う連中がいるが、そいつらは『おっさん』というものが全くわかっていないだけである。

 自分達がまだおっさんの域に入っていないからだろう。


 若者なんて実は大人しい。

 異世界で暴れちゃう日本の若者なんて実は殆どいない。

 みんな隅っこでスマホのゲームとかしていたいのだ。

「かったりー」とか言いながら。


 危ない橋なんてあまり渡ろうと思わないだろう。

 うちの若い稀人達も大人しい子ばっかりだ。


 地球でも、公共の場とかで延々と訳のわからないような事を大声で喚き散らして迷惑をかけている馬鹿とかをたまに見かけるが、若者はいつも知らん顔しているだけ。

 一喝して黙らせるのは、いつも年季の入ったおっさんなのだ。

 俺はそういう事はやらないんだけど。


 特に俺みたいに日頃じっと大人しいおっさんは、限界を越えると瞬間的に超新星のように爆発(リミットブレイク)するタイプなのだ。

 いわゆる『スーパーノヴァ』とか『パルサー○○』などと呼ばれるような非常に厄介で危険なタイプだ。


 日頃は大人しそうに見えるのが、またなお悪いっていう奴だな。

 それはまた西三河人全般の大きな特徴でもある。

 そいつに関しては、地元警察からも御墨付きを頂いているほど性質の良くない特質なのだ。


「やれやれ。

 これが稀人世界の力であったか。

 また豪い物を」


 陛下も呆れ気味におっしゃった。


「まあ、これはよほどの事が無ければ使いませんよ。

 今日はちょっとね。

 この世界では魔法の方が強力ですし。

 さっきのは、虚仮脅し(こけおどし)程度の役には立ちますけど」


 それから奥さん相手に嘆いた。


「シル、俺はもう一生田舎公爵で通していいかな。

 これ以上文句を言われたって知らないよ」


 小声で囁いたのだが、彼女も呆れるを通り越して昔の呼び方で笑ってしまっている。


「園長先生ったら、やりすぎ~」


 実物兵器はアイテムボックスの新スキルで手に入れたものだが、このスキルはかなり制限がある。

 とりあえず、旧型で決まったタイプしか兵器を入手出来なかった。

 魔法が制限された時に使えるよう持っているだけで、後はやはり虚仮脅しだな。


 これでもう、うちの騎士団については文句を言われる事はないはずだ。

 もし文句を言うのであれば、そいつは国王陛下の前で、これ以上の騎士団を御目にかけないといけないのだから。


 ミハエルを見たら、目が合うと首を竦めていた。

 やりすぎだと思っているのか、とりあえずは他にどうしようもないと思っているのか。



 さて次は、肝心の離宮だな。

 あとは公爵邸の滞在か。


 もう公爵邸には、いっそあの大横綱でも詰めさせておくか。

 あそこに文句をつけてくるような身の程知らずの大馬鹿者は、公爵家の演習場を土俵代わりにして巨大な横綱に稽古をつけてもらえばいいのさ。

 いっそ大土俵でも作っておくか。


 それと本当に困ったらファルに泣きつこう。

 あれは無敵の盾として機能するはずだ。

 ゲートで精霊の森へ繋げればレインもいるしな。


 それに俺はまだ、国教であるロス教におけるアルバの大司祭でもあったのだ。

 大神官の上司なのだからな。

 今回暴れていた馬鹿どもは、きっとその事を忘れていやがるのに違いない。


 明日から連中のところへ、大司祭の格好でファルを連れて御礼参りならぬ『御布施集め』に行ってやろうか。

 うちの最低の御布施金額は、白金貨十枚(十億円)だからな!


 所帯を持ったから、色々と物入りなんだよ。

 貴族どころか王族にあたる血族公爵なんだからな。


 一番貧乏そうな家から回るとしよう。

 殆ど貸し剥がしも同然だぜ。

 逆らったら神聖エリオン様の神罰が下るぞよ。


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