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56-4 合同結婚式

「なんだと? それは……」


「本日ジューンの1、アルバトロス王国王太子並びにベルンシュタイン帝国皇帝の合同結婚式を執り行なう」


 俺の宣言に、さすがにドランも驚いたようだったが、まあ今更だと思ったのだろう。

 首を竦めて嘆息していた。


「また、いきなりだな」

「とりあえず結婚式、と言っただろう」

 

「仕度は何も出来ていないんだが」


「へい、らっしゃい。

 アルフォンス商会には入用な物全てが揃っていますよ~」


 そして、俺はマネキン花嫁に着せた衣装をズラリっと並べてみせた。


「まあ……」


 並べられた花嫁衣裳の数々に、うっとりと頬を染めるフランチェスカさん。

 その手を葵ちゃんが取って隣の部屋へ連れて行く。

 花嫁衣装は葵ちゃんが収納して全部持っていった。


 裁縫グループの連中が、この意気とばかりに押し寄せていた。

 ドタバタと取り組みが一番終わって、現れたフランチェスカさんにドランが声をかける。


「綺麗だよ、リリー……」


 チビどもの鼻息が荒い。

 今日は他にプロがいないから奴らの独壇場だ。

 まあエルフさん謹製の超高級既製品の簡単なサイズ合わせをしただけなんだけどね。


「おいちゃん、ファルの出番かな?」

「おう、いつもの奴を頼むぞ」


 もうレインには、あらかじめ出席を頼んである。

 元々は武の子孫である王太子殿下の結婚式なのだからな。



 俺はゲートを繋ぎ、王宮へとみんなを連れていった。

 チビ達は広間を一つもらって、そこで魔法映像による結婚式を見ながら、式に出るのと同じ御馳走を頂くのだ。


 ドランはアルバトロス国王夫妻と、なにやら御話をしていた。

 どうせ小難しい話に決まっている。


 今日、ナターシャ姫、いやナターシャ王太子妃のドレスの裾を引くのはトーヤとカミラだ。

 一応は男の子・女の子の中で、幼稚園・小学校を代表するような人材なのだが。


 頼むぞ、カミラ。

 この子は、やらかすのも超一級品だからな。

 トーヤのフォローに期待する。


 そしてフランチェスカさんの方は、なんとレミとエディだ。

 おチビ猫の華麗なるデビュー~。

 ちょっと背が釣り合わないけれど、その辺はやたらと小器用なエディが上手にカバーしてくれるだろう。


 だが、何故かドランがやってきて俺の腕をがっしりと捕まえた。


「はあ? お前、花婿のくせに何やってんの」


 しかし、反対側からなんとカルロス君までが挟み込むようにして俺を捕まえている。

 王太子殿下、あんたまで何をやっているんだ。


「二人共、何をふざけているんだ? こんな時に」


「いーえ! ふざけてなんかおりませんわ」


 突然大声でそう仰ったのは、なんと王妃様その人だった。

 何かこう勝ち誇ったような笑みを浮かべていらっしゃる。

 この人の指示だったのか。

 それは逆らえんわ。


 俺は怪訝そうな顔で彼女を見た。

 今でも、まだ二十代始めくらいにしか見えない、その美貌。

 これで俺より四つくらい下なだけだからな。

 しかし、真に驚異なのは今も現役であるAランク冒険者としての腕前なのだが。


「それは一体どういう意味なのです?」


 まさか、今度はこの人が五月病を発症したんじゃあるまいな。


「それはこういう事ですわ!」


 そして現れたのは……ウエディングドレスを着たシル、シルベスター第二王女だった。

 俺は事態がよく飲み込めなくて、ただ馬鹿のような顔をして首を傾げたままそれを見ていた。


「さあ! 【合同結婚式】の始まりですわ!」


 え! まさか、まさかと思うけれど。


「いやあ、めでたい。

 実にめでたいのう。

 我ら稀人子孫の血族に、新たな稀人の血統を迎え入れる事が出来るとは!」


 そして国王陛下は、何故か手にでっかい真鯛をぶらさげていた。

 なんでだよ!


 いや理由はわかるんだけどさ。

 というか、この世界に真鯛あったんだ。

 いや、それどころじゃあない。


「ちょっ。

 皆さん、落ち着いて。

 何がどうなっているんだ?

 俺がシルベスター王女と婚約したのは、彼女を守るための方便だ。

 ゲルスとの諍いにケリがついたら婚約は破棄するつもりだ。

 いくらなんでも、その歳の女の子と結婚は」


 だが、うんざりしたような顔でミハエルが進み出て言った。


「お前がそこまで馬鹿だったとはな。

 王族の姫と、仮にも公爵との婚約がそう簡単に破棄出来るわけがないだろう。

 お前から婚約を受けると言って乗り込んできたんじゃないか」


「いや、そうだけどさ。

 ちょっ」


「姫が王女の身分から下るというのですから、それは大変な事なのですよ。

 婚約を受けていただいた以上は責任を取っていただかないと」


 俺の前にズンっと立ちはだかった仁王立ちの王妃様がそう言った。


「ついでに、我が弟バイトン公爵の後となる地位を治めてもらわねばならぬ。

 何、心配せずとも、そちらの方はこちらで手配しておいた。

 ロドス!」


「ははっ」


 何~!

 こ、こ、こ、この男は~‼


「御主人様、宜しく御願いいたします。

 こう見えて千年もの永き間、公爵家を支えてまいった一族です。

 新たな千年の時を貴方様の一族と共に」


 ぶはあっ。

 本気か、この男。

 だって、俺はこいつの主人を~。


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