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46-4 子供の海

 山本さんが厨房で大忙しだ。

 葵ちゃんや真理に、食堂のランドさん達も手伝っている。

 おチビ達がつまみ食いを狙っているが、あっさりと笑顔で撃退されていた。

 俺もチビ達の頭を撫でながら言っておく。


「みんな、御馳走は御花見しながらね!」


 俺はゲストの御迎えに回る事にした。

 アルスに頼んで、花見の屋台はエルフさんの応援をいただいている。


「エルフさんの御花見弁当」


 きっと凄い物になるはずだ。

 エルフ新町の料理人は全員が山本さんの弟子だ。

 更にネットからの知識やレシピを得て、これまた凄い物になっている。



 ドワーフの御迎えはトーヤの担当だ。

 奴には、もうゲートの魔法を与えてある。

 いつもドワーフを連れてくる役目だからな。


 そのドワーフ連にも、もう転移魔法は与えてあるのだがね。

 仕事でいつでも呼び出せるようにな。

 あとイベントの時にも。


 しかし、あの日頃はせっかちな連中がニコニコしながらトーヤの御迎えを大人しく待っている。

 あれってマジで凄い事なんだぜ!

 なんたってドワーフが酒の席へ行くんだから、普通なら大人しくしているなんて事は絶対に有り得ないのだがな。


 トーヤも今度小学校に上がる小さな子供なのだが、周りからはほぼ一人前扱いにされている。

 相変わらず、見た目はふさふさで可愛いんだけどね。

 愛されているな。



 まず俺による御迎えはアルバの王宮からだ。

 ゲートを繋いだが、みんな何故かドレスとかを着ているので驚いた。


 だが、これが本来なのだ。

 他の国の王族も来る事は当然伝えてある。

 いつもは身内ばっかりなので、あんな格好なのだが。


 ケモミミ園の関係でしょっちゅう顔を合わすドワーフの王族は、王族として勘定に入っていないのかもしれない。

 俺だってエルドアの王様や王妃様の事を、親方とか女将さんとしか呼んでいないし。

 しかも本人同士で極めて自然な感じにそう呼んでしまっている。


 さすがに今日はエミリオ殿下も、ドレスを着せられてしまっているような事はない。

 その代わり、ちょっと御化粧をされてしまっているようだ。


 特にシルベスター王女はおめかししている。

 あれ?

 王女も珍しくちゃんと御化粧している?


 彼らには、「地球の化粧品」を与えてある。

 実はこの世界へ来る前に、コンビニで弁当を買うついでに大人買いしたのだ。

 全種類ね。


 最近のコンビニはどうかしている。

 商売が伸び悩んでいるので、ありえない方向へ進化しスーパーマーケット化している。


 コンビニなんかが変な在庫を抱えない方がいいと思うのだが。

 スーパーやドラッグストアと値段では絶対に張り合えないのだから。

 しかもフランチャイズなのだから、方針は本部が立てても損失は各店舗持ちだからなあ。


 だが俺にとっては本当にありがたかった。

 そうでなくては今のように手持ちの物品が揃ってはいまい。


 そんな訳で美容・化粧品関係で八十点、ナプキン二十種類にタンポン十種類と、女性向けの貴重な商品のラインナップが盛大に揃っている。

 どうにも買物衝動が抑えられなかったんだよ!


 これで何故か下着だけは買ってないという。

 まあ、おっさんが女物のパンツを大人買いしたら店員に引かれるわな。

 ナプキンや化粧品なんかでも妙な顔をされていたというのに。


 あれこそ、どうしておっさんがこんな物を買ってしまったのだと、後で車を運転しながら非常に悩むような物だったのだ。

 だがセブンスセンスが買えと言うのだから仕方がないわな。


 葵ちゃんには狂喜されたけどね。

 特に生理用品で感激された。

 あれも夜用とか多い日用など、色々と男にはよくわからない分類がされている。

 メーカーによっても仕様が違いそうだし。


 紙オムツなんかもそうだが、さすがに紙オムツまでは買ってこなかったね。

 オムツは嵩張るからなあ。

 でも、あれはあってもよかったな。


 今度紙オムツを作るか。

 王族関係だけでも、いずれ需要はいっぱいあるしなあ。

 でもあれって構造が結構複雑なんだよな。

 男用と女用で構造が違うしなあ。

 素材に関してはナプキンの防水素材や吸収素材が役に立つかも。


 王族の女性陣には、化粧品も変に使うと顔の皮膚を傷めるから、あまり使うのは良くないと言っておいた。

 シルベスター王女などは基本的にすっぴんだ。

 はっきり言って、この歳の女の子に化粧なんかまったく必要ないが、その上化粧なしで諸国の王侯貴族が取り合うレベルだ。


 まあ王女様も御年頃なので、たまには御化粧だってしてみたいのだろう。

 地球の普通の子だってそうだからな。

 しかも開発指定のスキルで、凄まじいバージョンの派生化粧品を作成して提供してある。


 そして、一番恐ろしいのが王妃様だ。

 来年は俺と同じく『大台』に乗ってしまう御歳のはずだが、すっぴんでいけてしまうのだ。

 六人も子供を産んで、もう長男が三十歳を越えたのだけれど。

 最早謎生物と言ってもいいのかもしれない。

 もしかして人間ではないのでは?


 以前、うっかりとケモミミ園に化粧品を置いておいたら、うちのおチビな女の子達が引っ張り出して、お化けになっていて笑った。

 代わりに玩具のボディペンを作ってやったら、今度は俺が寝ている間に悪戯書きをされていた~。

 あれは敵じゃないから魔法PCの警報も鳴らないんだよなあ。


 こうして御化粧しているのを見るとシルベスター王女も中々の破壊力だ。

 メリーヌ王女がハイドへ嫁に行ってしまったので、今この国の王族関係で一番の美少女だからな。

 行事にも引っ張りだこだろうし、さぞかし各方面から引き合いも多い事だろう。


 この王女も来年には成人する。

 そろそろ、御嫁入り先を探さないといけないはずだ。

 今フィアンセが決まっていないのが、おかしいくらいなのだ。


 でも、この正装した一家は御花見では浮いてしまうのではないか?

 多分みんなラフな格好で来ると思うのだが。


 しかしゲートでハイドの王宮へ繋いだら、びっくりした。

 こっちの国王夫妻もめかしこんでいる。


 あらまあ。

 みんな、さては花見がどういう物かよくわかっていないよね。

 あらましは説明しておいたのだが。


 おまけにハイドの騎士団も全員正装だ。

 本日は何かの式典ですか?


 チビ王女様方の付き添いであるサイラスの騎士団に至っては!

 正装も頭はバンダナなのだ。


 俺は勘違いしまくった一行を引き連れて小学校の校庭へと向かった。

 そして贅を尽くした拵(しつら)えの絨毯を敷き詰めた貴賓席へと案内した。


 近くにはVIP用の広々とした豪華トイレや着替え用の天幕も設置してある。

 貴賓席はいくつも用意されており、そのうちの二つをアルバトロスとハイドに割り当てた。


 サクラがいつのまにか増殖して百本以上になっている。

 どうやらサクラの精霊共が、大量に御友達を呼んでしまったようだ。

 まあこいつら精霊が勝手なのは、いつもの事なのだが。


 あんまり連中の数が増えたら街に別のサクラの名所を作ってもいいし、フードコートに行かせてもいいな。

 こいつらは自力で移動可能なんだし。

 別にゲートの魔法で行きゃあいいんだが。


 せっかくの行事なんで、王都からも学園の生徒や学園長親子、それにベル君と上司のライオルさんも呼んでおいた。

 このあたりの人用にちゃんと貴族席を用意しておいたのだが、国王陛下が席に呼んだので彼らも王族席へ移動していった。


 学園長先生は侯爵なので優雅なものだ。

 この場にも、あちこちに昔世話をした教え子ばっかりがいるんだしな。

 今日もイベントとあって、かなりハイテンションな御様子なのだが。

 それもいつもの事なので、ここでは誰も気にする人はいない。


 あいかわらずベル君は陛下の前でビビっていたが、お前はもう男爵になったんだろうが。

 他国のダンジョンで何かあった場合に助言や助力を求められたりしたら、行くのは多分お前だぞ。

 当然その国の国王にも謁見するんだからな?

 今から自前の王様でしっかりと慣れておけよ。


 ドワーフにも一応貴賓席を用意しておいたのだが、蛻(もぬけ)の殻だ。

 まあ、席で大人しくしているような連中ではないのは最初からわかっているので、あいつらは放置だな。


 ザイード席にいたっては、太子と姫がアルバトロス王国席へ呼ばれたので、王女様の連れてきた子供でいっぱいになっており、完全に「子供の島」になっている。

 一応子供達の御世話係は一緒に来ている。


 メインキャストである、我がグランバースト公爵席は広大だ。

 何せ総勢百四十人近い子供と、その御世話係の職員がいるのだ。


 本日はアドロス並びにアルバの冒険者ギルドにも警備を依頼してある。

 複数の騎士団がいるので本来なら要らないようなものなんだが、やっぱり主催者サイドとして警備員を置かないわけにはいかないので。

 なんたって、あちこちの王様や王太子などが大勢いるんだからな。


 ただエルドアに関しては論外だが。

 なんたって一番強い人が王様としているんだから、最強のガーディアンを呼んであるようなものだ。

 ドワーフの王様が酒を飲んでいる時に悪党どもが邪魔をしに来たなんていったら!

 全滅必至って、そういう時に使う言葉なんだろうなあ。 


 ハイドだって大概だがな。

 本日も騎士団は王妃様のためだけにいるのだ。

 それも王妃様の実家回りのイベントなんだからアルバトロス王国騎士団も守っているのだし。

 王様だけなら護衛の騎士なんて一人も要りやしねえ。

 王太子の時代からそうなのだし、今では超余裕のドラゴンスレイヤー・トリプルの称号持ちだ。


 今じゃ関係する王家には俺の特製防毒魔道具を配りまくってあるんだから毒見役さえ要らないしな。

 気楽なイベを主催しまくっているから、面倒なのでそうしてあるのだ。


 トイレも大掛かりな物が置いてある。

 日本のようなレンタル簡易トイレではなく、本式なものが大量に並んでいるのだ。

 花見で一番問題となるトイレがここでは全く問題にならない。

 手洗いも大量に用意されている。


 エリ達も近所の人とかを連れてきて自分の席に陣取ったので、彼女と仲のいい王女様方はそちらへ移動していった。


 あちらこちらでエルフさんの花見団子の御店が出来た。

 収納から屋台を出すだけだからな。

 もちろん、俺が頼んで来てもらったのだ。


 しかも只の屋台ではなくエルフ茶屋になっており、風情があってまさにぴったりだ。

 御持ち帰りも出来るので、あちこちの席から御土産を買いにくる。


 俺は感激して、たくさん買ってきた。

 というか、一軒店ごと席まで来てくれたのだ。


 団子はこれはまた、なんとも言えない食感だった。

 日本の団子の美味い店そのものだ。


 子供達もがっついているが、声かけだけはしておく。


「お前ら、団子を喉につまらせないようにな~」


 まあ、正月の餅よりはいいと思うのだけど。


 レミやファルも花見団子に夢中だ。

 無論、うちには山本さんの団子もある。

 こちらはやや固めの団子だ。


 だが文句なしに美味い。

 なんったって作り置きではない、プロの和菓子職人による作り立て団子なんだぜ。

 アイテムボックス様々だな。


 ピンク頭の精霊達も具現化してきて、団子をもりもりと食っていた。

 本日は、こいつらが主役なんだしな。

 そら、たんと食え。

 魔力もパラパラと振りまいてやる。


 そのせいか、あっちこっちから精霊が紛れ込んできて人間の子供に化けている。

 見かけだけなら、子供が三百人くらいに増殖していた。

 まるで子供の海だ。

 魔力と御菓子の大盤振る舞いなんだから、精霊どもが絶対に見逃すはずがない。

 我が家には精霊共が多数駐在しているんだから、仲間同士でイベント情報なんて筒抜けだわ。


 まあ別にいいのだけれども。

 溢れるほど精霊が沢山居るなんて、本当は滅多にないくらいありがたい光景なのだ。

 うちはそういう事も年中行事だがな。

 俺は伊達に精霊魔王などと呼ばれてはいないのだ。


 バルドス一家も、うちの席でやっていた。

 ジェニーちゃんが人化したプリティドッグの子供達の面倒を見ていたし。

 彼女は一人っ子なので、こういう事が大好きなようだ。

 異種族婚の子供であるドラゴンハーフは生まれにくいのか?

 まあ超高位魔物であるエンシェントドラゴンの子なのだし、そうポコポコと生まれてこないよな。


 この風景はネットでも生中継されている。

 今日の精霊カメラマンは植物系の奴らだ。

 カメラマンでも御花見が出来たよ。


 ドワーフ達が数々の宴会芸を始め出したのを尻目に、俺はある準備を始めていた。


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