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42-4 遅れてきたゲスト

 もう式が始まるというのに、余分な奴らばかり来て肝心の招待した奴はやってこない。

 まあ奴の事だから、それはいつもの事なのだが。


 特に今回は奴にも転移の腕輪を与えておいたので、のんびりしているだろうから余計に遅刻かもしれん。

 一応あの人に来賓挨拶を頼んでおいたのだが。


 まあ、代わりの国王が二人前いるしな。

 来賓の王族だけでも、既に六人もいるぞ。


 さてそろそろ式を始めるか、と腰を浮かせた途端にそれは起きた。


「ドンドンドーン」


 静まり返った体育館に、突然太鼓の音が鳴り響いた。

 何事かと構える騎士団や護衛達。


 もちろんアルスは足を組んで座ったまんまだ。

 余裕綽綽で腕まで組んでいるし。

 そして、それを横目に見ながら苦笑いを浮かべた騎士団長ケインズ。


 やれやれ、やっと来たか。

 いきなり太鼓を鳴らすなよな。

 今日は他に賓客が大勢いるんだぜ。

 びっくりされるだろうが。

 まあ特にそいつらは正式に呼んだ来賓じゃあないんだが。


 とうとう謁見客の護衛達が抜刀して構える。


「ああ、皆さん。どうか落ち着いて。

 本日の来賓を予定していた、エルドア王国の国王夫妻並びに王太子殿下が御来場しただけですから」


 もちろん、それは親方御一行の事だ。

 日頃は「ドワーフ国」の一言で片付けてしまっているが、対外的にはそんな風には呼べない。


 それを聞いて、謁見客が皆がっくりする。

 あいつらが来たのか! みたいな感じで。


 見れば、上半身をはだけ、赤銅色の肌を見せ付ける太鼓打ちの集団が鎮座ましましていた。

 先頭を切っているのは、むろん親方とその息子だ。

 これで見事に王族で野球チームが一つ組めるだけ人数が揃った。


 ドワーフの王妃様が手を振ってくれたので園児から歓声が上がる。

 この人は完全に御母さんキャラなので、孤児である園児の間で人気がある。

 あくまでイロモノとしての範疇でいいのなら親方も大人気なのだが。


 しばし見事な太鼓の演奏が続き、最後にドンっと軽く鳴らして終了した。


「トーヤ、卒園おめでとう!」


 相変わらず、挨拶はシンプルだな。

 もちろん、その有り様は俺も嫌いじゃないんだが。

 そして真理の声が放送で流れた。


「以上、御来賓代表でエルドア王国ハンニバル大王陛下からの御挨拶でした」


 真理の奴、あっさりと纏めたな。


 本来なら、せっかく予定になかったにも関わらずおいでいただけたので、このケモミミ園の所在地であるアルバトロス王国の国王陛下からも挨拶を賜るべきなんだろうが、ちょっと御願いしにくい空気だ。

 チラっと横目で陛下を見ると、苦笑いしてヒラヒラと片手を軽く横に振っていた。

 やっぱりなあ~。


「ケモミミ幼稚園、園長先生挨拶」


 俺は壇上に上がり、マイクの位置を整えた。

 今日の俺は、なんとスーツだ。

 この世界に来て、初めてこれを着たよ。


 エルフ新町で仕立てさせたオーダーメイドなので、スーツなんてまったく似合わない俺でも少しは様になっている。


「ああ、本日は御来場ありがとうございます。

 私は一人異世界よりやってまいりまして、この世界に家族・友人・知己は無く、そして身分証もなく、一介の流れ者として流離っておりました。


 御縁がありまして、今はこのような役職についております。

 この一年、(まこと)に波乱に満ちた展開ではありましたが、子供達が一人も欠ける事無くやってこれました事が何よりも素晴らしいと思っております。


 それも、日頃このケモミミ園を引き立て、また暖かく見守ってくださった王国や街の方々、そして商業ギルドや冒険者ギルドなどの関係者の方々の応援の賜物でございます。

 誠に感謝の念に絶えません。

 厚く御礼申し上げます。


 また卒園した子供達も、これからは小学校へと上がりますので、ますますヤンチャにも磨きがかかる事が予想されます。

 周辺の関係各所の皆様におかれましては、そのあたりの事もまた暖かい目で見守ってやっていただけたならば幸せと存じます。

 以上で園長挨拶に代えたいと思います」


 来賓席や来てくれた街の人達からたくさんの拍手をいただいた。

 広い体育館にビッシリと、折りたたみ式のパイプ椅子がズラリと並んでいる。

 肝心の卒業する園児は十五人しかいないのだが。

 うちのイベントには派手にバザーをやっているので、たくさん街の人も来てくれる。

 それでも、ちゃんと式の方にも出てくれるので嬉しいものだ。


 来賓の方も街の人も全く気に留めていないのだが、これはこの世界で初めて行なわれる幼稚園の卒園式なんだけどね。

 それを言ったら、俺がこの一年やってきた行事は、どれもこれも「この世界初」なんだけれども。


 なんといっても、この幼稚園の存在自体が異世界初だわ。

 今回は、少なくともそれに相応しいだけの豪華な来賓の顔ぶれになった。

 園長として、ありがたいという他に言うべき言葉もない。


 それから街を代表して代官のエドモント氏(初めて名前を知ったぜ!)、冒険者ギルドからギルマスのケニーが、そして商業ギルドからはロゴスが挨拶をくれた。


 これで、せっかくいらしてくれた「国王陛下」からの御挨拶が無いという~。

 それもこれも、みんな親方が悪い。

 まあ陛下がいる事自体は予定外なんだし、これでもいいか。


 在園生の送辞は、狼っ子のカミラがやった。

 トーヤが卒園したので、この子がケモミミ園の大将格だ。

 いつもは暴れちゃったりするけれど、今日は御澄ましな制服姿だ。


「そつえんするみんなあー。

 らいねんはあたしたちも、しょうがっこういくから、まっててねー。

 ようちえんのほうも、がんばるぞー。

 そつえんおめでとう~」


 うん、全部本人に任せちゃったからね。

 ちょっとアレな挨拶になってしまったが、こういう物は下手に大人が弄らない方がいいと思って。

 まさか、このように豪華な来賓の面子になるとは思いもしなかったのだよ、わははは。

 正規の来賓である親方なんかは、変に気取った挨拶なんかよりも、こういう元気な挨拶の方を評価してくれるだろうしな。


 偉い人もいっぱいいたのだが、子供らしく元気いっぱいの挨拶だったので、皆微笑ましく見守ってくれていた。


 答辞はもちろんトーヤだ。


「ケモミミ園のみんな。

 俺達卒園するけど、別にどこかへ行ってしまうわけではないので、これからも宜しくな。

 ケモミミ園の先生方もありがとう。

 まだまだ御世話かけるけど、宜しく御願いします。


 来賓の皆さんも、たくさん来てくださってありがとうございます。

 親方、兄貴、太鼓どうもありがとう。

 俺達、今日ケモミミ園を卒園します」


 挨拶で気合が入っているとはいえ、もう台詞が、ほぼ漢字状態だ。

 この子は本当に凄い。

 丁寧なんだか砕けているんだか、よくわからない感じの挨拶だったが、たくさんの拍手をもらえた。


 トーヤは親方の息子の王太子を兄貴と呼んで慕っている。

 親方達と一緒に来てくれて、かなり嬉しかったようだ。


 やれやれ、これで式もつつがなく終わりだな。


「これで第一回ケモミミ園卒園式を終了いたします」


 真理が閉会の挨拶を流した。

 ところが、そこへとんでもない賓客が現れたのだ 


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