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42-3 千客万来

 そしてなんと、卒園式にいきなりアルバトロスの国王夫妻が乱入してきた。

 あの人達にも転移魔法付きの腕輪を渡してあるのだ。

 騎士団長のケインズも一緒だ。


 あの天真爛漫というか、豪快で鷹揚でケモナーな王妃様が来てくれたので、うちの園児達は大喜びなのだが。

 彼女のしてくれる少し(たが)が外れた系統の冒険のお話は子供達も大好きなのだ。


 王妃様も本来ならば公務のはずだったのだが、ケモミミ園児とプリティドッグのいるところへ来られたので、かなり御満悦の様子だ。


「一体何事ですか?

 ミハエル殿下といい、国王御夫妻といい」


「いや、ケモミミハイムの大使がこちらへおいでだと聞いてな。

 色々と懸案事項もあってのう」


 なんと。

 どれだけ大物なんだよ、あの大使。

 でも、あのミミは確かに魅力的だ。

 みんなが夢中になるのも無理はなかろう。


 あろう事か、「国王陛下に謁見する予定だった方々」までが卒園式に御一緒しているのだ。

 どうやら謁見場ごと一式ここへ来たらしい。

 また一つ、アルバトロス王国がドワーフ国へ一歩近づいた。


 そういう事なので、一瞬にして来賓席が謁見場と化した。

 俺は別にいいんだが、これには騎士団長ケインズも頭が痛そうだった。


 まあ、ここにはアルスもいるしな。

 俺も、そっとゴーレム兵を増量しておいた。


 あれも少しずつ増やしていくと案外とわからないものだ。

 いつ騎士団の連中が気付くかなと楽しみにしておく。


 一応、こういう式典などがやれるようにと、ケモミミ幼稚園には分不相応なほど立派な講堂がある。

 というか、ただの体育館だな。

 俺が作ったので割と適当な物だけど。

 警備の冒険者とかが体力作りも出来るようにと、色々と設備も整えてある。


 獣人の子はパワーがあるので、小さな体で大人用のバスケットゴールに飛びついてダンクシュートを決めてしまうような凄い子もいる。

 日本でなら異様に映る風景なのだが、こっちではごく日常の光景だ。

 ネットに動画を上げたら、特にプロバスケットが盛んなアメリカとかで大受けだった。


 そのうち、バスケのケモミミリーグとかをやってもいいかもしれない。

 小柄なチビっ子達のダンクシュートは、大人とはまた違った迫力がある。


 ケモチビ達は大きくなるとダンジョンで荷運びの仕事を始めるが、すぐに冒険者に混ざってしまうので荷運びをやっている獣人の子は少ない。

 あまり小さいうちはやらせてもらえないし。

 小さい子は我慢が出来なくて食料を盗み食いする奴も多いので。


 最近は街の仕事が増えてきたので、荷運びをする子供もずいぶん減った。

 当然、彼らの賃金も大幅に上昇している。

 子供を奴隷のように使い潰していたような、ロクデナシの低ランク冒険者は苦労する事になる。

 因果応報だ。


 それに関して文句があるなら、この俺がいつでも鍛えてやるぞ。

 教師は地下五十階にいるドラゴン先生だがな。



「やあ、グランバースト卿。御久しぶり」


 振り向いたら、また賓客の御来場だ。

 ハイド国王夫妻の満面の笑顔があった。


「御久しぶりですわね、グランバースト公爵」


 騎士団の憧れの的だった元第一王女の登場に、若い騎士達はピシっと居住まいを正した。

 ケモミミハイムと取引のあるハイド王国の国王までも、呼ばれてもいないのに噂を聞きつけてやってきた。


 こういう事も、俺のところだから通じる狼藉なんだろうが。

 まあ貴族王族が「狩猟仲間」と仲がいいのは当然だよな。

 一緒に狩るのは、あの厄介な毛蟹とかSランクのドラゴンだけど。


 あれを映画にするなら、さしずめタイトルは「ワイルドワイルドキャプターズ」あたりか?

 あるいは、「パイレーツオブハイド」など。

 これだと、あの方達の場合は日常の漁の風景になってしまうが。

 いや、魔物と戦いながらだから怪獣映画のカテゴリーかもしれない。

 

 この人は見栄えがするんで、実写をそのまま映画にしてもいいくらいだ。

 魔法も使うからド迫力だしな。

 そして綺麗な御姫様もいる。


 空中庭園事件をいつか映画化してみたい。

 俺自身はまだこっちの世界へ来ていなかった時分の事件だから、あれには関わっていないのだが、俺の周辺が生き証人だらけだからシナリオも忠実に出来る。


 関係国の国民は熱狂するだろう。

 あの事件の下手人だった帝国を除いては。


 うちには精霊カメラマンがいるので撮影はなんとでもしてくれる。

 キャストも敵以外はそのまんま使えるし。

 敵の方のキャストは俺がだいぶ斃してしまったしな。


 学園を舞台にした部分は学生どもを動員してやろう。

 そこをメインのステージにし、なおかつ多くの国々をも揺るがしたハイド国王夫妻の恋物語は、今でも王都学園においては語り草であり、男女共に憧れの物語だ。


 一部、一般の人間には絶対に真似のできないような大冒険活劇が混じっているけどな。

 超高空において爆砕する空中大要塞からの『奇跡の大脱出』シーンは並みの学生には少々きつい。


 それに相手が、あの灼熱のバランという二つ名持ちである圧倒的な敵なんだぜ。

 同格の冒険者であるSランクのアルスが出張って、ようやくあいつを追い払えたという話だし。


 それも彼が特殊な魔法を操るため、通常の魔法に激しく制限を加えられてしまうほど強大な魔力嵐の中では、あのバランをさえも圧倒出来るからであった。


 そうでなければ、互いに二つ名持ちで呼ばれるほど強大な特殊スキル持ちのSランク同士による殺し合いは必須であった事だろう。

 あそこの一般生徒にはちょっと荷がかち過ぎるだろうな。


 そういや俺は学園の魔法講師になったので、それをやれるくらいに学生を鍛えないといけないのだった。

 ま、実在の先輩の中にそれをやってのけた王女や貴公子もいた事だし、為せば成るか。


 生徒達にも、その辺を訊かれたりしたのだがねえ。


「かなり命がけの冒険だから、Sランク冒険者くらいじゃないと生き残れないほどの激しい物語だったらしいけど、みんなもやる?

 なんだったら俺がセッティングしてやろうか」


 などと訊くと、生徒はみんな微妙な顔をするのだが。

 まあ、大型ドラゴン三匹くらいは新婚旅行の片手間に狩るくらいの気概がないとな。

 まさに冒険をする冒険者の世界だ。


 ちなみに、シドはあのドラゴンを新婚旅行の御土産として国民達に振る舞ったそうだ。

 相変わらず豪儀な事だ。


 その辺の話は、あのオルストン家のアントニオに通じる部分があるが、両者に共通するのは、そういう家柄の出身だっていう事だな。



 次々と現れる賓客に対して、顔色一つ変えないうちのスタッフ達。

 その程度の些事をいちいち気にしていたら、うちのスタッフなどはやっちゃおれんのだ。

 元々「あと一人」国王も来る予定なのだしな。


 今日はみんないい子にしているようだ。

 猫を被るのも慣れているのだ。

 最初から猫である事を隠していない奴らも大勢いるし。

 これで来賓がアルバトロスの王妃様だけとかだと、チビどももやりたい放題なんだけれども。


 王妃様がミニョンを抱っこして一番前の席にいる。

 国王陛下は二列目だ。

 謁見をするために、一列目との間をぐっと広げてまで。

 いいのか、それで。


 国王陛下の代わりにファルが前列に陣取って、ミニョンにいつもの「よしよし」をやっていた。

 それは俺がやらせておいたのだ。

 ミニョンがはしゃぎ過ぎると、色々と台無しになってしまうし。


 しかし謁見に来た人達(二列目が謁見場だ)などは、「神聖エリオンとプリティドッグ」という、望んでも拝めないような組み合わせに気もそぞろだ。


 でもその御蔭で、本日予定していて国王陛下を悩ませていた、とびきり厄介な謁見も無事終了したらしい。

 そういう内実を騎士団長ケインズがそっと耳打ちしてくれた。

 もしかして陛下はそのために来たのか?


 王妃様自身も諸国の注目の的だし。

 十六歳当時既に「功績さえ挙げれば、いつでもSランク」と言われた冒険者だった。


 その冒険の果てに、若さを保ち続けていられる秘訣というかスキルを手に入れたのではないかとも噂されている。

 まるでエルフのようだと。

 凄い美女だし。


 さすが大国の王妃ともなれば今までのように流離の冒険をするわけにはいかず、Sランクの称号こそ持ってはいないのだが。


 今も彼女の膝の上では、若き日に冒険の旅に出た目的の可愛い生き物が「神聖エリオン」に頭を撫でられながら御腹を見せている。

 そんな、まるで神話の一シーンのような風景が日常の光景としてある。

 生憎な事に、これは神話の舞台じゃあなくて幼稚園の卒園式なんだけど。


 ファルの反対側となる王妃様の御隣席にいるタヌキさんの可愛いミミが、また絶妙な味を出している。

 まったくもって、この俺も来賓席に混ざりたいくらいの心境なのだ。

 もちろん、御目当てはあの魅惑のタヌキミミさ。


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