42-1 卒園式
夕飯前の方は、読むのをお控えください。
飛ばして読んでも全く問題ございませんので。
ついにこの日が来てしまった。
幼稚園というか孤児院というか、そいつを勢いで始めてしまったのはいいが、本当にちゃんとやれるか非常に心配だった。
幸いな事に、ただの一人も脱落者を出さずに無事この日を迎えられた。
なんだか園児の人数も増えまくったし。
道中に幼稚園VS帝国なんていう有り得ない図式もあったが、ちゃんと勝った。
色々と味方を作っておいて大正解だった。
子供達もみんな大事な式なのはわかるのか、落ち着きがなく朝からパタパタと走り回っている。
特に送る側の奴らが意味もなく走り回っているだけだけど。
一部需要があったので卒園式はネットで生中継が実施されている。
平日だからか、ほとんどコメは来ていないな。
こっちも忙しいので全然構っていないし。
卒園生にはマンツーマンで職員さんがついている。
卒園生ばかりではなくて在園生の世話もあるから、小学校組のエルフ軍団の応援はありがたかった。
男の子は洋装の七五三のような感じにしてコサージュを胸につけている。
いつもはボサボサにしている髪も今日はブラッシングの嵐だ。
女の子も黒のブレザーっぽい奴とスカートで統一した。
可愛らしい髪留めとコサージュを添えて。
来年は着物もいいかもしれないけど、それだと着崩したりする子が出そうだ。
みんなハイテンションになっているのだろうし。
女の子達は、朝から自分でブラッシングしたり職員に甘えて梳いてもらったりと割と手がかからない。
本来は関係ないのだけれど、レミもブラシを持って俺のところに来るので丁寧にブラシをかけてやる。
ファルは一度レインボーファルス形態に戻り、ポンっと人型に戻ると「出来た!」と叫ぶ。
この子はあちこちを駆け回ったり空を飛び回ったりするので、いつもゆったりしたズボンとシャツに上着でいることが多い。
パーティモードはムームーだしな。
今日はワンピで決めてみたらしい。
空間収納持ちなので、一応色々と衣装は渡してある。
「なかなか、いい感じかしらね」
両手にチビを抱え込んで、他にも二~三人ほど服に捉まらせてぶら下げている真理がやってきた。
「んー、いいんじゃね?」
本日は別にそう御大層な客が来るわけじゃない。
ロゴスとエミリオ殿下が来てくれるくらいだ。
王女様方は学校があるし、王妃様は公務中だ。
あの王妃様は、ミニョンに会いたくて何かにつけてケモミミ園に来たがる。
ほぼ四十年越しの夢を叶えたので、なんだか熱狂しているようだ。
本当に、あの人って見かけだけは若いな。
若作りのレベルが俺と変わらない。
何らかのスキルを使っているのだろうか。
それについては今でも諸国の王侯貴族の女性からも関心が高いのだとか。
掲示板の女性陣も凄く関心が高いらしい。
もしかして武が伝えた、なんらかの錬金技術か魔法なのかもしれない。
だが、あの人の事だから「そんなものは気合よ」とか普通に言いかねないのだが。
それが本当に有り得るから怖い。
あの人も武の血を引く、アルバトロス王国の兄弟国サイラス王国の公爵家の人間だったのだから。
さすがの王妃様も、神聖エリオンを慕ってやってきたミニョンを譲ってくれとは言えなかったようだ。
周辺を騎士団に探させたらしいが、ミニョンの親兄弟は見つからなかった。
おそらく、なんらかの強力な隠蔽の能力を持っているのだろう。
認識阻害のスキルかもしれない。
あるいは感知無効の認識阻害系なのかもしれない。
そういう能力は欲しいなあ。
それがあれば、あのバランのような奴からも感じとられないかも。
あの「侯爵よ、鼠がいるようだな」と言われた時は、さすがに俺も肝が冷えた。
まあその反面、そんな超強力な隠蔽のスキルを持っているような奴に出くわしたら俺でさえもヤバイのかもしれないが。
この世界には、まだまだ俺もよく知らないような危険なスキルがある可能性は否定できない。
そんな事があったら、HP1600万の耐久力だけで対抗できるだろうか。
バルドスの爺に言わせると、エンシェントドラゴンよりも上のランクを一撃で倒すような奴でもなければ、今の俺は殺せないらしいが。
それでも油断は大敵だ。
それは今までも充分に学んできた。
地球から一緒に持ってきた、というか一緒に転移してきた故郷愛知県の土は半分真理に預けてある。
もし俺に何かあった時は、それに埋めてくれと頼んである。
ケモミミ園の運営資金も、王都とアルバの商業ギルド並びに冒険者ギルドにも大枚預けてある。
最悪の場合は、真理がダンジョンあたりで稼いできてくれるのではないか。
「うぎゃああー」
あ、うんこを漏らした奴がいる。
泣いているな。
元冒険者の担当職員さんが、すぐに浄化の生活魔法をかけている。
本当に便利な世界だよなあ。
「子供のうんこの世話もしてね」って言うと、きっと職員のなり手も少ないよな。
一応、子供達に保安目的で付けてあるGPS的な機能もついている腕輪には生活魔法も装備してある。
それには魔石バッテリーを組み込んであるので、獣人の子でも内蔵された魔法が使えるのだ。
女の子達なんか、結構これで身嗜みを良くしている。
男の子達ときたら、そいつを身嗜みなどには使わずに、これを使って「うんこ消し」を楽しんでいた。
この世界は、はっきり言って、うんこに満ちている。
魔法がある分は、地球の中世ヨーロッパなんかよりも遥かにマシなのだが。
トイレだってそれなりにあるし。
さすがに女の子達は呆れ返っていたが。
地球だって昔はそうだ。
パリでは、犬のうんこを踏む面積を小さくするために、ハイヒールを履くようになった。
という事になっている。
本当は違うらしいのだが、俺はそっちの俗説の方を敢えて採用したいね。
その方が楽しいので。
どっちみち、フランスがうんこだらけだったのは変わらない。
他の国だって昔は同じだけど。
あれはきっと、「気取り屋のフランス人の事が気に入らない」とか言って、周辺国の連中がフランス人を揶揄して広めた説なのに違いない。
特に、何かにつけドーバー海峡を挟んでフランスと対立していた感じがする英国の奴らが下手人臭い。
そして多くの国の国民はそれを信じた。
今でもその説は、ローマ時代のトイレにあった『棒付きの海綿お尻拭き』と同じレベルで現役流通している。
あれ、どうみてもトイレの掃除道具なのだが。
あんな固いギザギザな断面をした海綿なんかでデリケートな尻の穴を拭かれて堪るもんか。
その独特で秀逸な形状は今日でも大きく変わっておらず、在りし日のローマ帝国の素晴らしさを、今もなお全世界の各戸に伝えてくれる逸品の一つだ。
そして、うちの姉曰く。
「パリのオープンカフェで御茶をするなんて、乾いて風で舞い上がった犬のうんこを飲んでいるようなものよ」
実際にそうなのかもしれないけど、あんた『憧れのパリ』に新婚旅行で行っていたよね?
日本だって人の事は言えない。
俺が子供の頃は、道に犬のうんこなんかざらに落ちていた。
野良犬も凄く多かった気がする。
うっかりと踏んでしまって、しかも歩きながら靴の底をぐりぐりやるので、更に汚染地帯は広まった。
子供の頃は通学団でまとまって歩いている時なんか、踏んだ奴がいると靴の裏から匂うので誰かが言い出す。
「おい。誰か、うんこ踏んでねえ?」
みんな左右の靴を交互に上げてみて、踏んだ奴が言う。
「あ、俺だわ」
「エンガッチョー」
「きったねえ」
みんなが逃げていく。
そして、うんこを踏んだ奴が追いかける。
「うんこ鬼」の始まりだ。
うん、地球の諸外国や日本も、こことそう変わらんかもしれないな。
そしてケモミミ園の男の子達は近所のうんこを探し回り、魔法で『浄化』してまわった。
そして近所に『獲物』が無くなると、アドロス中を『うんこ狩り』して回った。
腕輪の魔力が尽きるまで。
キッチンエリが目当てでやって来る貴族の馬車なんかも、馬のうんこを落としていくし。
馬車が走っていた時代の英国なんかだと、まるで競馬場のパドックで使うような掃除道具を持った専任の道路掃除人がいたような気がする。
この街でも掃除人を採用するといいかもしれない。
アドロスも今ではかなり羽振りが良くなったので、そういう人間を雇う事も可能だ。
今までも本当は掃除人がいたのかもしれないが、そういう事もあまりやられずに俺が片付けたあいつらに予算を吸い上げられていたのかもしれない。
そして子供達がやってきて、こう言うのだ。
「えんちょうせんせい、じゅうでんしてー」
俺は苦笑しながら、腕輪に魔力を注いでやる。
かくしてケモミミ園児達の清掃奉仕により、『主神ロスの晩餐』の名を持つアドロスの街は『世界一うんこの無い街』として、その名を世界に鳴り響かせた。
ご飯時に、どうもすいませんでした。
どうにも筆が止まらなくって。
どうして子供って、あんなにうんこが好きなんでしょうね。




