表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

244/1334

41-4 雛祭りを制する者

 次はなんと、レミちゃんの登場だ。


 だが何故か凄いドヤ顔だ。

 その幼い脳の内部で一体いかなる脳汁を垂れ流しているものなのか、保護者としては若干心配になるのだが、ここは状況の推移を見守る事にしよう。


 その御相手となるのは、ドワーフの三賢者の一人であるマリア導師だ。

 この方、御歳百七十歳になられる筋肉系老女だった。


 濃いな。

 ドワーフめ、まだこんな隠し玉があったのか。


 彼女の機体は山姥的な何かであった。

 そいつは、セカンドマシンでいいのならトーヤ達がチョイスしそうな代物だった。

 子供の雛祭りのイベに、俺はどうしてこのような機体を投入してしまったのだろうか。

 つい夢中になって色々なバリエーションを作っていて、なんというかノリでな。

 だが見事に需要はあったようだ。


「キエーーーーっ」


 操縦者の豪快な掛け声と共に必殺をもって狙うは、レミたん(のヒナダム)のか弱い足だ。

 ポッチなんか知ったことではない、ただ足を折りに行くだけという実戦さながらの猛突だった。


 だがヒナダムのレミ1号は、しゃがみこんで亀の如くにその攻撃をあっさり防いだ。

 カキンと弾かれた、その足をひょいっとレミ1号のマジックハンドが掴む。

 この一対のマジックハンドだけはスピード特化してあるのだ。

 残りの四対の足も各足への分配パワーは少ないが、その場で方向転換するのは非常に素早い。


 機動性とは、何も移動にだけ限ったものではない。

 移動能力を放棄しさえすれさればここまで出来るという究極の高機動モデルがレミ1号なのだ。


 そして、このマジックハンドパーツには特殊性能がある。

 その場から動かないのでいいならば、全動力をスピードあるいはパワーに瞬時に全て切り替えられるのだ。


 弾いた後に掴んだタイプ山姥の足を、瞬間すべてのリソースをパワーに注ぎ込んだレミ1号はフルパワーで会場の地面に叩きつけた。

 衝撃で両足のパーツが抜けて、ボディが見事に弾け飛ぶ。

 無論、試合会場は俺の魔法で防御されているので、そんなもので観客に被害が及ぶ事はない。


 そして無様に這いずる賢者1号の上にカサカサとにじり寄って、どんっと上に乗っかるレミ1号。


「それまで! 勝負あり!」


 俺の掛け声が響いた。


 ドワーフが空気を読んで、ドンっと太鼓を鳴らす。

 うん、太鼓も悪くない。

 銅鑼だともっと気分が出るかな。


 ドヤ顔のおチビ猫。

 そして「やれやれ、してやられたわい」という顔で笑う大賢者様。


 俺も笑顔で婆さんに白酒を勧めた。

 美しく年齢を重ねられた、いい御顔をしていらっしゃる。

 キュっと白酒を煽る御姿も決まっておられる。

 年輪とは、こう刻みたいものだなと思わず唸った。



 お次は我らがアルス君だ。

 何故か準備体操をしている。

 Sランクとは、そういうものなのか?

 これ、子供の御遊びなんだけど。

 一応、日本にも中継してあるので、掲示板の連中にも聞いてみた。


256:バトル・オブ・バレンシア


 いや、どうかな?

 まあアルス君の闘いに期待しようではないか。


257:バトル・オブ・バレンシアオレンジ


 ところでイケメンはまだ?


258:バトル・オブ・ブリテン


 なんか今日は鰤食いたくなって刺身を買ってきちまった。

 異世界に鰤いないの?



 あまり建設的な意見がないな。

 くそ、俺も鰤が食いたくなってきた。

 今度探しに行こう。


 ああ、畜生。

 鰤大根食いてえ。

 缶詰かレトルトでいいから持ってくるんだった。


 そういや、山本さんっていう和食関連なら御任せという御方がいるんだから、素材調達は俺の仕事じゃないか。

 アルフォンス商会GO!



 アルスの対戦相手は、可愛いネコミミ幼男だった。

 前に鉄棒で尻尾ぶらぶらを御披露してくれた男の子だ。

 おたくなショタ趣味の女性が見たら、鼻血を噴きながら攫っていきそうな可愛い男の子だ。


「はじめ!」


 どーんっと銅鑼が鳴った。

 うん、即席で作ってみたけど、やっぱりいいね!

 銅鑼はドラゴンのドラ。

 これ本当なんだぜ。


 アルスは、パワーとスピードのバランスをもってして果敢に攻めた。

 だがネコミミ幼男は棒立ちのままだった。


「ん?」


 Sランクの勘なのか、不意にアルスが警戒してステップを切ろうとした、正にその刹那。

 アルスの機体である「栄光のドルシア」は、一瞬にして両足を失った。


「何!?」


 アルスの驚愕をよそに、崩れ落ちる「栄光のドルシア」の下に、その子の無銘のヒナダムは迫った。


「尻尾」でジャンプして。


 そう。

 ちゃんと尻尾パーツも用意されていたのだ。

 素早さ超特化で器用に動かせる、それを扱いなれた彼ら獣人ならではの秘密兵器だった。


 だって、この獣人幼児でいっぱいなケモミミ園の行事なのに、あまりにも尻尾パーツが省みられなくて。

 大いに活用を期待していた園長先生はがっくり来ていたので、この殊勲賞に狂喜した。


 舞い飛ぶ、日本だと今では投げてはいけないらしい金糸銀糸で彩られた極上座布団の嵐。

 もちろん、それはこの俺の仕業だ。

 葵ちゃんが精魂込めて作ってくれた大相撲座布団なのだ。

 やっぱりコピー能力って便利だな。


「大金星」


 歴戦のSランク冒険者、ケモミミ幼児に破れる。

 つい懸賞の旗を十本くらい出してしまった。


 それを見て苦笑いを浮かべているアルス。

 彼は得意満面のチビの頭を撫でてやりながら言った。


「チーム・アーモンでは、よく言われたもんさ。

『自信家なのはいいことだ。だが、時にはそれに足下を掬われる事もあるものだ。覚えておくんだな』

 ってね」


 うん、おっさんも気を付けよう。

 殊勲賞の猫チビ男児は、男の子からもみくちゃにされていた。



 そしてトーナメントは進み、やがて決勝へと相成った。


 ポールは、また妙に凝り性でマニアックな機体で遊んでいて惨敗した。

 なんというか、それは陳列タイプの侍人形のような物で戦闘力には欠けるタイプであった。

 俺ってば、またなんでそんな物を雛祭りに作ってしまったものやら。

 きっと子供の日に備えて作ってあったプロトタイプを混ぜちまったんだな。


 何しろ碌に動けない機動力に欠ける代物だしなあ。

 だがポールは、傍から見ても豪く満足そうだったけど。



 決勝の組み合わせは、なんとファル対トーヤの兄妹対決である。

 ファルの機体は、これまでの闘いで本来ならば有り得ないような性能を示していた。

 こんなのありだろうか!


 ファルが先に動いた。

 自分の機体に対する絶対の自信が垣間見える。


 そう、ファルの機体はいかなる攻撃も機動力のみによって無効にしていた。

 まるで何かに目覚めたように、それはもう凄まじい動きを見せていたのだ。

 全てを躱し、全てを撃破した。

 かつて精霊パイロット達があのバランを撃ち抜いた時のように。


 神聖エリオン様はこの闘いの最中で、また一つ新たな進化を遂げたらしい。

 表情も何か神々しい。

 やはり、この子は神の子たる神聖エリオンなのだ。


 だがトーヤは落ち着いていた。

 誰しもがファルの勝利を確信した時、その奇跡は起きた。


 しかし、俺だけはそれが奇跡ではないと知っていた。

 だってなあ。


 所詮は規格パーツで組まれただけのファルの汎用機体は、神の子によるオーバークロックに耐えられなかったのだ。

 トーヤは、それをしっかりと職人魂で見抜いていた。


 ヒナダム・レギュレーションの仕様で組まれただけの機体には、偉大なる神の使徒の覚醒には耐えられなかったのだ。


 トーヤが耐え忍ぶ間に、ついにファルの「神撃の女神」が硬直した一瞬、足と魔力を溜めていたトーヤのエルシド怒涛の舞いが嵐のように駆け抜けた。

 ピシっと決めポーズをトーヤの機体が決めた時、ファルの機体は四肢を失って崩れ落ちた。


 神の子が技術者魂の前に破れた瞬間だった。

 まあ、あっちは鍛冶国家に認められた技術屋の本職だったしな。


「おいちゃ~ん!」 


「うーん、すまん。

 お前がいきなり凄すぎるんだ。

 さすがに、そこまでは想定しておらんよ。

 これって急遽始めた、只の雛祭りの御遊びに過ぎんのだからな」


 半べそをかいているファルを宥めてから抱き上げて、いつものように振り回したトーヤ。

 ケモミミ園に、また新しく進化を遂げた神の子神聖エリオンの笑い声が響き渡った。


雛祭りはどこへ行ってしまったのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
ヒナダム・・・ガ〇ダム・ビ〇〇ダイ〇ーズというか、プ〇レス三〇郎?
[気になる点] 『自信家なのはいいことだ。だが、それに【足元】をすくわれる事もあるものだ。覚えておくんだな』 ではなくて、【足】ですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ