37ー3 伝説の生き物
ギルマスのところへ行って訊くと、サブマスのレッグさんが驚いて訊き返してくる。
「え、本当にその魔物はプリティドッグなんですか?」
「あ、ああ。
鑑定すると、そのように出るんだが」
そんなに驚かれるような特別な生き物だったのか?
「あれはなんていうか、ほぼ伝説の生き物ですよ。
滅多な事では見つかる事がないので、非常に希少な生物です。
そうですか、まあ幼稚園に置くにはぴったりの魔物なのかもしれませんね」
はあ?
それは一体どういう意味だろう。
でもまあ、魔物の専門家みたいな人がそう言ってくれるのなら安心だな。
あの魔物の子は人化しても言葉は喋れないが、頭はかなりいいようだ。
人間の言う事はよく理解しているみたいだし、遊びなんかはどんどん覚えていく。
冒険者ギルドから帰ってきてからフライングディスクを投げて遊んでいたら、奴が突然に人化を解いた。
うわ、これは可愛いな。
正体は凄く可愛いワンコだ。
まだ、ちっちゃいなあ。
本当に子犬だ。
尻尾もまだ短くて可愛いな。
ピコピコと、いかにも子犬らしく尻尾を動かしている。
顔が愛らしいなんてものじゃない。
地球でも、こんなに可愛い奴は見た事がない。
本当に綺麗な毛並みだ。
何よりも表情の愛らしさにやられてしまう。
あの最初に遭った魔物グリオンの時にも思ったが、魔物の中には特別な表情を持ち、それ自体がスキルのようになっている場合がある。
そういう魔物は、大概あまり強くない魔物のようだ。
あの恐ろしかったグリオンさえも、所詮はEランクの魔物でしかない。
この犬は、やたらと吼えたりしないし噛み付いたりもしない。
性質も大人しいようだ。
これならケモミミ園に置いておいても、そう問題はないな。
サブマスのレッグさんが言った「幼稚園にぴったり」という意味が、ようやく理解出来た。
お目目くりくりで、またそのミミの可愛さといったら。
動物好きの人なら、きっと一目で虜になるだろう。
ある意味で凄い魔力の持ち主だな。
猫派の俺にも、これはちょっと厳しい攻撃だ。
奴は嬉々としてフライングディスクを咥えて持って来る。
年少の子供達用にと小さめに作っておいた奴なので、ディスクのサイズはこの子にぴったりだ。
この御遊びが楽しいので、どうしても真の姿であるワンコ形態で遊びたかったようだ。
もう、ここの人間にも結構慣れてきたみたいだし。
そもそも、なんで人化していたんだろう。
その方が人間のところにいるのに都合がいいと思ったのかな。
ああ、捕獲しようとする奴らがいるからか。
希少な生物で、しかもこれだけ可愛いんだものな。
そして、その子のあまりの可愛らしさに、子供達がミミを揺らして殺到した。
こういう騒ぎはファルが卵から孵った時以来だな。
「ぼくがさいしょに、なでるのー」
「いやー、あたしよ~」
「あたしが、だっこするのよ~」
「あー、ハイハイ。
順番に、優しくねー」
そうこうするうちに、ファルがきて「よしよし」とワンコの頭を撫でた。
その子は頭を撫でられて、もう目を細めてジーンとしてしまっている。
まあ、レインボーファルスに撫でられると半端無く気持ちがいいからな。
そうか、この子はファルにこうしてほしかったのか。
まあ、なんといってもワンコだしね。
そりゃあ撫でられたいよな。
アルスが来たので、彼にもプリティドッグについて訊いてみた。
「へえ、プリティドッグねえ。
希少で無害な可愛い生き物なので、貴族が好んで飼いたがるらしいよ。
滅多にいない魔物らしいし。
たまに捕獲の依頼が出ている事があるけれど、依頼がクリヤされたっていう話は聞いた事が無いな」
なるほど、納得したぜ。
そういや俺ってば、依頼の掲示板なんて禄にチェックした事もないな。
異世界へ来て冒険者になったら必ずやる定番行事だというのに。
というか冒険者資格なんて身分証代わりに持っていただけで、特に冒険者何てやる気もなかったしなあ。
あ、最初の頃のポーション納入の時に一回見たか。
あれっきりだわ。
アルスもしっかりとフライングディスクで遊びまくっていた。
もう、いかにもSランクらしいハイテクニックを駆使するので、ワンコが狂喜して尻尾が千切れそうだ。
子供達もアルスのフライングディスク教室で、ガンガンと上級テクニックを学んでいった。
どうやらワンコは、大名行列を引き連れて空を飛んでいるファルを追いかけてここに来たらしい。
ファルは動物や魔物なんかを虜にしてしまう何かを持っている。
野生の鯨魔物なんかも御友達だったしな。
ますますもって謎生物である。
だが葵ちゃんが大喜びしている。
ワンコを抱っこして、もふもふしまくりだった。
久々に地球の家の事を思い出しているのかもしれない。
地球では家で小型犬を飼っていたそうだ。
ワンコの方も犬好きな彼女には懐いているようだし。
また撫で方が、傍から見ても凄く上手だしな。
この世の中には、きっと化学物質レベルで判定可能な、犬好きだけが発する事の出来る匂いみたいなものがあるのに違いない。
犬好き物質の分泌とまで言わずとも、感情による体の反応の変化により、微妙な人体の臭いの変化はあるかもしれない。
犬はその犬に起因する喜びによる、人間の匂いの微妙な変化を嗅ぎ取っているのではないだろうか!
山本さんが色々と犬の餌を工夫してくれた。
彼の家にも犬がいたので、ちゃんと御飯も自分で作ってやっていたという話だ。
犬の餌といっても、山本さんが良い材料から作るので凄い御飯だけれど。
これって、もう動物の犬枠でいいんじゃないかなと思うんだけど、あくまで魔物なんだよな。
人化するし。
ワンコの名前で、一頻り揉めたのだがミニョンとしてみた。
本人が気に入ったようなので。
フランス語で「可愛い」の意味だ。
やっぱりネットがあると非常に便利だ。
また、うちにケモミミ付きの住人が増えた。
今度は本物のケモノミミだけど。
とりあえず、寝床は引き続き園長先生の部屋にしておいた。
ジェニーちゃん一家と、孫命なジジイも呼んでみた。
というか、ワンコを御山へ連れて行ったのだ。
ドラゴンの山なのに、この子は全然物怖じしていないな。
凄く尻尾を振っているし。
「わあ、可愛い~」
これはまた可愛い過ぎるショットだ。
ドラゴンハーフとプリティドッグの貴重なワンショット。
いや、動画でたっぷりと撮らせてもらった。
爺に言わせると、ドラゴンと人間のハーフは凄く可愛いんだそうだ。
実物を前にして聞くとそれも納得ものだ。
この子はネット動画で凄く人気が高い。
映画の出演依頼が来た事もある。
これは爺が可愛がるわけだわ。




