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33-2 ハイド代理店契約

 ハイドへ行って、そこの商人と代理店契約をする事にした。

 まずハイド王宮へと出向いて、シド陛下に頼んで王都シンフォニアの商業ギルドへの紹介状をもらう。

 前もって紹介してもらえるように電話で頼んでおいたのだ。


「やあ、グランバースト公爵、蟹漁以来ですね。

 我が国との取引を拡大されるのですか?

 大歓迎ですよ。

 神聖エリオン様もようこそ」


 今日もにこやかな貴公子スマイルで迎えてくれるシド国王。

 その仮面の下に隠された恐るべき狩人の素顔。

 それがこの世界で、この国が海洋交易国家としてあるための、王たる者の必然であった。


 ファルもにこにこしている。

 精霊と同じで、こういう裏表のないようなタイプの人物は好きなのだ。

「や!」みたいな感じで、シュタっと手を挙げて御挨拶だ。


「ええ、他の大陸とも商売をしたいと思っていますが、小学校も始まるのでなかなか手が回らなくて。

 商会を立ち上げますので、ここのギルドを通して商売しようと思いまして。

 とりあえず、隣の大陸と商売してみたいですね。

 まずは餅米と小豆と砂糖の安定供給を実現したいです」


「それならパルシア王国への紹介状も書いておきましょう」


 シド国王から紹介状を色々もらって王宮を辞した。

 ファルは、ちゃっかりと御土産の御菓子もいただいていた。


 商業ギルドへ向かう道すがら、異国情緒にあふれる王都シンフォニアの街並みを眺めつつ歩いていく。

 ハイドは他大陸より輸入した建築材や異国のデザインなども導入しているため、この大陸では一風変わった建築様式に取り組んでいる。


 艶やかな色彩の石材。

 このあたりの植生では見かけない材質の木材。

 他の国では滅多に見かけないタイルのような建材。

 あれこれと挙げだしたらキリがない。


 そして西洋風とも東洋風とも言えぬ中庸な魅力のあるデザインもあれば、日本でも街のシンボルとして作るようなスタイルのモニュメントなんかも随時見かける。

 名古屋でもデザイン博をやった時にそういう物をかなり作ったな。


 前衛的な、これは冒険だなと思うデザインの建物を見かける事も珍しくない。

 ファルもあちこちをを見回して、きょろきょろしている。


 たまに若いドワーフを見かける。

 彼らは向学心に溢れていて、ハイドや他の大陸から学ぼうとしている様子が伺われる。

 もしかすると国家特級技師を目指している人なのかもしれない。

 きっと異国の酒にも大いに親しむつもりなのだろう。

 ここは他の大陸からも酒が入荷する国だからな。

 どこかに日本酒みたいな酒があるかもしれないな。


 街全体の色使いも独特の色彩を散りばめてあって、道行く人の目を楽しませてくれる。

 前衛芸術都市といってしまってもいいかもしれない。


 そのくせ王都だの港のある交易都市だのを離れると、妙に情緒も溢れている。

 なかなかに面白い国だ。


 あれこれの要素が雑多に混ざり合い混沌に満ちているようで、それでいて妙な調和がある。

 王都シンフォニアとはよくぞ言ったものだ。

 初めて訪れる旅人は、その佇まいにしばし見とれる者も多い。


 ほどなくして、商業ギルドのシンボルである御馴染みの『算盤を持った猫』の看板が見えてきた。

 これのデザインって絶対に武の仕業なんだろうな。


「こんにちは。

 責任者の方はいらっしゃいますか?

 これがシド国王からの紹介状です」


「はい、少々お待ちください」


 ホールで接客をしている係の女性が凛とした声で対応してくれて気持ちがいい。


 すぐに奥からギルドマスターと思しき初老の人物が姿を現した。 

 こちらで紹介状をもらって、海の向こうのメルス大陸へ行ってみるつもりなのだ。


 一番の目的は餅米とかの安定仕入れだ。

 今は元本があればコピー能力により手に入るけど、いずれは俺の死と共にそれも無くなる。

 そういう事なので、普通の米もいい物があれば欲しいところだ。


「こんにちは。

 アルバトロス王国から来ました。

 アルフォンス・フォン・グランバーストと申します。


 今度、自分用の商会を作りましてね。

 シド国王の紹介で、こちらで代理店を募集したいのですが。

 何よりも信用できるところがいいですね。

 そこを一番のポイントでお願いします」


 もちろん、得意の猫なで声で話しかけている。


「これはこれは、高名な精霊魔王様の御声がかりとは。

 もしや、そちらは神聖エリオン様では?」


 案内係の女性が思わず目を瞠る。


「ええ、そうです。

 今日は、ちょっとアシスタントとして連れてきました」


 俺はファルを抱っこしつつ答える。


「では、こちらへどうぞ。

 アメリア、デビーのところへ使いを出してくれ」


 アメリアと呼ばれた女性は、丁稚の小僧を呼びつけて書付を渡し、御使いに出していた。

 俺とファルは案内されて奥の応接間へと進んだ。


「多分、今日ならアルファ商会の会頭がおると思います。

 アルファ商会というのは、文字通り、この国で初めて作られた由緒正しい商会でして、厳しい戒律を持っておりますので滅多な事はしないはずです。

 ここなら、あなたに御勧めの商会でしょう。

 彼らはアルファの名に誇りを持っているのです」


「それはありがたい。

 是非もないですね」


 出された御茶は、ちょっと変わった風味だ。

 おそらく他大陸からの輸入物なんだろう。


 御菓子の風味も変わった物で、なんていうのかシナモン系の甘い匂いがする。

 シナモンよりも癖が無いので大方の人に好まれそうだ。

 ファルも気に入ったようでパクパク食べている。



 ほどなくして、件の商会の会頭がやってきた。


「初めまして。

 アルファ商会の会頭を務めます、デビーと申します」


「初めまして。

 私はアルフォンス・フォン・グランバースト、精霊魔王と言った方が通りがいいでしょうか。

 こちらはファル。

 いわゆる神聖エリオンです。

 どうぞ宜しく」


 彼は目を丸くして俺達を見ていたが、ファルに対して恭しく頭を下げると、こう言ってくれた。


「これはまた!

 御高名なグランバースト公爵様と取引が出来るとは光栄です。

 商人の間では、それは一つの夢ですからな。

 宜しくお願いいたします」


 うん、だいぶあれこれと商人にはバラまいてやったからね。

 その後いろいろと打ち合わせをしてから、俺達はハイド王国の王都シンフォニアの商業ギルドを後にした。


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