表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

210/1334

32-5 激突 守護者対魔王

 俺は、MAPスキルで検索をかけた。

 千里眼で見た風景を書き留めた、あの紙に描かれた景色を。

 そして専用に立ち上げたMAPのウインドウでMAPと情報の『合成』を試みた。

 こいつは初めてやる作業なのだ。


 思い付きでやってみたのだが、MAPの上には地球の地図サイトでも御馴染みのマーカーが記されていた。


 やったぜ。

 さすがは俺の心の中にあると思われる、地球時代からのリアルチートを元にしたシステムだ。

 やれるたあ思っていたが、やっぱり出来てしまったか。

 まあ毎度こんなもんだ。


 セブンスセンスは「自分がやれると感じた事」は少々奇天烈な事でも必ずやれるのは、この三十年間で何度も実証済みなんでな。

 セブンスセンス由来である魔法PCは使い方次第で色々な事がやれるのだ。


 あれは俺の精神の中にて、セブンスセンスという存在が構築してくれたユニークスキルである仮想PCに過ぎない。

 異世界チートと組み合わせれば、しけた人並み程度のESPでもざっとこんなもんだ。


 地図の場所に比較的近い場所にある、以前に行った事のある北方のダンジョンへと転移した。

 そこからフライで高速飛行して現場へと向かい、地理上の目印となる地形を捜した。

 空からでも見事な独特の形をした三連山がくっきりと見えた。

 木々の形や岩の形も千里眼で見たものと瓜二つだ。


 少々使い方が邪道であったが、いつものように結果を出せたので満足だ。

 今回は家族の命がかかっているから必死だったし。


 そして問題の……穴のようなものというか、正体不明の何か。

 そいつは確かに在った。

 だが、それは尋常の物ではない。

 実際に物理的な穴が開いているわけではないのだ。


 これは何か空間の裂け目・入り口に近い物なのか。

 別に本当に目に見えるわけではないのだが。


 自分が実際の現場に来てそう感じるというか、そう『視える』だけなのだ。

 ほとんど透視で視て脳内に結ばれた映像のようなものだ。


 俺は色々な探査スキルがあり、前もって千里眼でその存在を察知しておいたので、そいつは容易に見つけ出すことが出来た。


 俺はアルスに、ここの位置と、これから異空間へ入る旨を連絡してから、その怪しげな空間へと足を踏み入れた。

 念のため、車とベスマギル刀などの武器一式を、あらかじめアイテムボックスから出しておく。


 徐行しながら進む車の4リッターエンジンが、まるで身震いをするかの如く唐突に異空間の大地と大気を低く震わせた。

 まるで、これから起きるだろう事態を予想したかの如くに。


 それとも武者震いか。

 車という、少し異様に人間臭い機械にはありがちな事だ。


 そういうオカルトな事を信じない人も多かろうが、俺は日本自動車産業の本場である、かつては日本のデトロイトと呼ばれた西三河地域からやってきた人間なのだ。

 どうしても自動車メーカーレベルで頭を悩ませるような、そういう胡乱な事が頭を離れない。

 あれって『御客様からのクレーム』という極めて物理的な形でオカルトな報告が全国レベルで、あるいは世界中から上がってくるからな。

 人と車の関係は不思議だ。

 特にこの異世界では、何が起きたって不思議はないのだから。



 しばらく進むと、伝説に謳われたような薄桃色の葉を付けた木々が見えてきた。

 俺は少し遠めの場所に車を止めて、それらを鑑定してみた。


「精霊樹。

 精霊の守護を受けし木。

 異空間でしか育つ事は出来ない。

 強大な守護者によって守られる」


 ほお、守護者か。

 そいつは厄介そうだな。


 俺は、その辺に葉っぱが落ちていないか検索してみたが、残念ながら一枚もなかった。

 ちっ、しかたがねえ。


 ギルドや王国の記録、そして今しがた鑑定した結果からすると、あまり気は進まないのだが、ここはやるしかないか。

 家族の命がかかっているんだからな。


 俺は魔道鎧を発動……出来なかった。


 なんだと?

 試しに、軽くエアバレットを打ち出してみたが、これまた発動しなかった。


 こいつは面倒な。

 なんと、おまけにアイテムボックス内に蓄えてあるストック魔法も使えなかった。


 ただ、自分に強化はかけられ、加速魔法のファストもかかったし、またゴーレムは出せた。

 俺は顰めっ面でベスマギル製の鎧を着込み、強化とライトウエイトをかける。


 アイテムボックスは普通に使えるようだった。

 そして、どうやらこの空間の法則では鎧や剣は体の一部とみなされるようだ。


 物理兵器は使えると思うが、それこそこんな狭いところでは使いたくないわ。

 あれも封じるとなると化学反応すら封じてしまうので、普通の生物は生きていられまい。


 ベスマギル刀にも切れ味を上げる魔法をガンガンかけた。

 走らせると守護者にあっさりと存在を気付かれそうな、エンジン音の煩い車を仕舞うと一気に駆けた。


 ちっ、得意のフライも使えやしねえ。

 なんと重力魔法も使えない。

 散る間際であった空中庭園の、断末魔のように吹き荒れる魔力嵐の中でも使えたという、あの特殊魔法さえも封じるのか。

 やはり異空間というのは尋常な場所ではない。


 魔法力を外に対して出すものは駄目という事なのか。

「魔道鎧だって鎧じゃん!」という屁理屈は通用しないという事だ。


 俺は木に駆け寄ってジャンプし、葉っぱを何枚かベスマギル刀を振るって切り落とす。

 よし、きっちりとゲット出来た。

 鑑定したら精霊樹の葉とある。


 やったぜ。

 俺はそいつを収納に仕舞い込んだ。

 ようし、こんな厄介な空間に長居は無用。

 さっさとトンズラだー。


 そう思った瞬間に俺は宙を舞い、べったり大地と仲良しになっていた。


 な!?


 不意打ちを食らって、俺は面を上げていたベスマギル鎧の隙間から見事に大地へキスをくれてやる破目になった。


 俺が顔面の土を払いながら立ち上がったそこには、おそらく十メートルはあるだろう比較的大型の魔物がいた。

 さっきまでどこにもいなかった筈だし、気配すらも感じさせなかったのだが。

 へたをすると、今湧いて出たのかもしれない。


 いや、こいつは魔物なんかじゃないな。

 おそらくは精霊の系譜。

 エルフやドワーフなどと同じで、元は精霊でありながら完全に受肉しているものだろう。


 しかも、その状態でも普段は存在せずに、必要な時にだけ顕現してくるのだとしても精霊系の存在ならば納得がいく。


 ちー、こいつは厄介な。

 多分、こいつの精霊魔法の攻撃を真面に食らうと呪われる。

 ことごとく能力が封じられちまうかもしれない。

 そんな事にでもなったら逃げられないぜ。


 そもそも、大人しくこの空間から出してもらえるものなのか。

 ギルドの資料を見る限りでは非常に心許ない。

 転移魔法も封じられているのだし。


『来る!』


 感じる。

 わかる。

 それは精霊魔法だ。


 全世界の精霊と友達関係で、エルフの里を除いたあらかたのエルフさんと仲良くしている、この俺が精霊魔法で攻撃を受ける羽目になるとはな!


 この空間はレーダーが仕組み的に無効化されているな。

 敵はどこからくる?


 そう思った瞬間に足元が崩れ、体半分が土の中に埋まった。


 ぐはっ。

 野郎、地中から触手を伸ばしていたのか?

 い……や、こいつはもしかして根っこなのか。

 精霊樹の仕業か、それともこいつ自身がドライアド系なのか。


 そいつは有り得るな。

 何しろ、こいつは木の守護者なのだからな。


 俺は精霊の鎧を展開した。

 思った通り、こいつは展開できた。

 精霊系のスキルだからな。

 ここでも使えるようだ。


 俺は根毛びっしりの拘束を跳ね飛ばす事に成功した。

 そして土を弾きながらジャンプ!

 フライもレビテーションも使えないので、ただただHP1600万のパワーに物を言わせて。


 その直後に俺が居た空間が精霊魔法を食らっていた。

 くそ、あぶねー。


 そして事態は振り出しに戻った。


 だが何故か、奴は戸惑っているようだ。

 おそらく俺から精霊の力を感じ取っているのだ。

 俺を敵として認識した事実が奴の中で揺らいでいるのか?


「バーカ、俺は精霊魔王と呼ばれる男だぞ。

 お前の敵なんかじゃねーよ。

 葉っぱくらい寄越せよ。

 日頃、どれだけ精霊共に魔力を貢いでると思っているんだ。

 今更、葉っぱの一枚や二枚でガタガタ抜かすな」


 だが、奴は散々迷った末に初心貫徹を決めたようだ。

 精霊魔法が凝集していく気配が感じられる。


 チッ。

 王都アルバの門番みたいに、こういう徹底的に任務に忠実なタイプの奴は嫌いじゃないんだが、それもそいつが俺の事を目の敵にしているんじゃあなかったらの話だ。


 このう。

 上等だ、この野郎。

 やってやろうじゃないか。


 俺は天使の翼を展開し、両翼端を大きく曲げて奴に向けた。

 これは新しく身につけた技だ。

 そう、自前の精霊砲なのだ。


 消し飛べや、このクソ餓鬼。

 この精霊魔王に逆らった者の哀れな末路を見せてくれるわ。


 だが。


「ちゅうちゅうちゅうちゅう」


 は?


 この場にそぐわない、よく慣れ親しんだ感覚が体を駆け抜けていく。

 よく見たら、精霊が一体俺に張り付いて俺から魔力を吸い取っていた。

 すでに子供の姿で顕現しており、まるで甘えるような感じで。


 長い栗毛の可愛い女の子だ。

 精霊が子供の姿で顕現すると、何故か七歳前後くらいの年恰好になる。

 俺は御菓子を一つ、そいつの口に放り込んでやった。


「ピヒュウー」


 ファルか!


 あの野郎もどうしたものかと、落ち着きなく、うろうろしだした。

 精霊が俺と一緒にいるので、俺を攻撃出来ないようだ。


「おい、チビ。

 あっちへ行ってな。

 俺は、あいつと落とし前をつけないといけないんだ。

 ほら、この御菓子をやるから」


 御菓子を渡して追い払おうとしたが、何故かそいつは俺から離れようとしない。

 そして奴に向かって、人には理解できない精霊の言葉で何か言った。

 奴は驚いた様子だったが、すぐに臨戦態勢を解いた。


 あれっ、なんだあ?

 こっちの方が戸惑うわ。


 なんか雰囲気から察するに、この子は多分外から俺にくっついて一緒に来ていたんだろう。

 強大な魔力には誘引されてしまう性質を持つ精霊にはありがちな事だ。


 俺に関してこの精霊が、あいつに向かってなんらかの説明をしてくれたとしか思えん。


 奴と俺は御互いにどうしたもんかなと思って所在無げに対峙していると、不意に俺にくっついていた精霊を抱き上げた存在がいた。

 それは美しい女性の姿をしていた。


 俺は慌てて飛び退いたが、そいつは笑顔のまま手で制して、こう言ったのだ。


「御心配なく精霊魔王様。

 あなたの事は、この子から聞きました。

 外の世界では、あなたは精霊界の有名人なのですね」


 うーん、心を読んだのかな?

 まあいいけど。

 ……いや、若干気になるけどさ。


 彼女は、くすくすと笑ってこうも言った。


「我々は人間の性癖などに興味はありませんよ」


 オイー。

 だったら何故笑う!


「あなたの大切な人が危ないのですね。

 どうか、その葉っぱは御持ちください。

 神聖エリオン、いえ新生レインボーファルス様の御母さんが大変なのですから」


 うん、あいつってそんなような役回りだよね。

 なんせ副園長先生なんだし。


「わかった。

 ありがたく、これは頂戴していくぜ。

 あ、そうだ。

 エリクサーの作り方って、これで合っているか知らないかな」


 彼女は、俺に聞いた作り方を確認してこう言ってくれた。


「材料はOKでしょう。

 触媒となる上位魔法金属も御持ちのようですし。

 ただ、調合は難しいですよ。

 その辺は大丈夫ですか?」


「そいつはスキルでなんとかなると思うんだが」


 うーむ。

 そう言われると自信がないな。


 だが試してみたら材料は、苦労して手に入れた精霊樹の葉にいたるまで全てコピーし放題だった。

 これなら多少失敗してもなんとかなるか。

 一度この場でエリクサーを作ってみる事にした。

 すべての材料を用意して、それをアイテムボックス内で合成を試す。


 そして一瞬の間が空いた。


 アレ?

 大丈夫なのかな。

 今までコピーや合成などで、こんなに間を置くような事はなかったんだけど。

 もしかして失敗した?


 だがその直後、そこには眩い虹色の光を放つエリクサーが完成していた。

 準備しておいた手頃な瓶に入れた状態で、俺の手の中へと現れていた。

 大体牛乳瓶一本分くらいの量か。


 お、エリクサー自体もコピーが出来るな。

 一度製作に成功したせいか、今度は特に問題なく瞬時にコピーしまくれた。

 これならOKだ。


「ありがとう。

 御蔭でエリクサーは出来たよ。

 葉っぱ、乱暴に切って悪かったな」


 俺にはわかっていた。

 彼女が精霊樹の女王なのだ。


 白い服を着ていてピンク色の髪、そして瞳は穏やかな黄色。

 中々の美人というか、神秘的な感じがする容姿だ。

 だが俺には一目で人間ではないとわかる。

 俺は元々そういう能力の持ち主なのだから。


「私はこの空間の主、精霊樹の女王フレイヤです。

 また何かありましたら、いつでも御越しください。

 いいですね、ジュノー。

 今度この方が来られた時には、あなたが御案内するのですよ」


 奴はグーと軽く唸り声をあげて頭を下げた。

 こいつはよく見ると植物質な体をしているな。

 パッと見には、足の部分が異様に太くて張り出した巨大な蜘蛛を思わせるようなスタイルなのだが。

 もしかしたらナパームと過酸化水素で焼いたら殺れたかもしれんが、やらなくてよかった~。


「ありがとう。

 じゃあ縁があったらまたな、女王陛下。

 ジュノー、お前も」

 

 俺は彼らにそう言い放ち、外から付いてきた精霊を抱っこして異空間を後にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ