表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

183/1334

27-1 主神ロスへの感謝祭 

 年の初めの五日間のお祭り。

 業者の人にとっては年間を通して一番の書き入れ時なのだ。

 また市民にとっては、一年のうちで一番の御楽しみな時でもある。


 この大陸の北部に存在するこのアルバトロス王国においては、気温は決して高いとは言えない季節だが、この時期に家の中で大人しくしている手は無い。


 まあ北部といっても、この王都アルバは緯度にして日本の名古屋辺りにあるようなので、そこまで寒くはない。

 むしろ名古屋の方が、夏は沖縄よりも暑い日も少なくなく冬は凄く寒いので名古屋人は常に地下街を歩くとさえ言われているので、へたをすると北方の王国であるアルバの方が冬は温暖なくらいなのだが。


 王宮の祝賀においては、今年は俺が設置した、でかい角松が目玉なのだ。

 中庭で正装のドレスやタキシード風の格好をした人の中を、俺達は堂々と和服姿で練り歩く。

 さすがに大注目だな。


「これは変わった服装ですね。

 でも、なかなか立派なものだ」


 そんな俺達に声をかけてくれるのは髭もじゃの宰相さんだ。

 この人は今の王様の幼馴染みたいな人なので、竹馬の友という感じであるものらしい。


「あ、ちょっといいですか?

 せっかくなんで、この写真を」


 そして日本にいる真理さん御提供の、初代国王の和服姿を大型ディスプレーで大公開した。

 途端に王宮に衝撃が走った。


「これが稀人の国の歳祭りの正装なのですか?」


 深く興味を引かれたらしい貴族の人に尋ねられる。

 絵でしか知らぬ初代国王のリアルな姿に、深く感銘を受けたようだ。


「えー、そうではなくてですね。

 本来は、これが稀人の国というか、稀人の国のうちの一つである日本という国の民族衣装なのでありまして。

 おめでたい正月を正装というか、日本本来の古来から伝わる民族衣装で祝うという事なわけであります。

 ちなみに五日もかけてやるこの国とは違って、日本では御正月三が日といって三日間でやりますね」


「稀人とはどういう意味なのですか?」


 若い貴族の中には、そんな素朴で根源的な疑問を浮かべるものもいた。


「元々は神様と同義語のような扱いで、まれびと信仰というものもあったそうです。

 あるいは自分達を守ってくれる先祖の霊だとか、貴人であったりとか。

 その来訪が稀であったという事で、その呼び名がついたようです。

 転じて外部からの訪問者を差す言葉ともなったようで。


 あと他の世界からやってきた神様、御客様というような意味もあるようなのですが。

 まあここでも、私や初代国王のような他の世界から来た人間を指す言葉としても使われるようになったのではないですかね」


 丁寧口調で解説しておく。

 最初にその言葉を聞いた時にネットでいろいろ調べておいたのだ。


 俺は稀人という言葉は風情があって大変よい言葉だと思う。

 異世界人という言葉はどうにも好きになれない。

 なんか宇宙人のような扱いみたいで。

 昔、英会話教室で「フォーナー(外国人)とエイリアン(宇宙人、特に侵略者)」の違いについて学んだっけなあ。


 まあ稀って言われても、こっちの普通の人には意味はわかんないだろうけど。


 そして初代国王の子供の頃の写真も公開しておいた。

 武の奴め、子供の頃は意外と可愛いな。

 なるほど、確かにエミリオ殿下っぽい雰囲気かもしれない。


 和服製造はエルフさんに委託してある。

 もしや、これを機に貴族の間に和服ブームが到来とか!?


「国王陛下も、ちょっと和服を着てみませんか~?」

「うむ。それは悪くない提案だのう」


 俺の甘言にうまうまと乗せられた国王陛下が、なんと和服デビューする事と相成った。

 エルフさんに着付けさせて、国王陛下も紋付袴姿にしつらえ、そして初代国王の写真と並べてみた。

 国王陛下も満更じゃ無さそう。

 なかなかどうして、初めて着物を着たとは思えぬほど堂々としたものだ。


 いつのまにか、王妃様もすでに和服姿だ!


「えー、僕も着てみたいよ~」


 エミリオ殿下も和服を着たがったので衣装を提供した。

 武の七五三の写真もあったので、正月だけど千歳飴も持たせてみた。

 うちは幼稚園なので千歳飴は当然のように作ってある。

 製作担当は当然、和菓子の専門家である山本さんだ。


 こうして初代国王の写真とエミリオ殿下を並べてみると、確かに面影があるな。

 当然のように、御姫様軍団も現れて着物を強請られた。


「グランバースト卿、もちろん私達の分もありますよね!」

「当然ですよ~」


 むしろ、こちらがメインというか。

 これで今日のブログの表紙はいただいたぜ。


 すでにエルフさん達は、着付けのベテランの域に到達しているのではないのだろうか。

 王女様方の色とりどりの艶姿。

 さすがに金髪銀髪揃いなだけあって、時代劇に出てくる日本風の御姫様にはならなかったが、これはこれでありだ。


 まあ、こっちは時代劇の配役ではない本物の御姫様なんだから。

 美少女は何を着ても似合うという事か。


「おかしくはないでしょうか?」


 初めて着込む自分のルーツ関連の民族衣装なのだ。

 ちょっと気になるようだ。


「いえいえ、とっても可愛いですよ~」


 うん。

 この写真だけで、ブログがランキング入りしそうな出来映えだ。


 実はおっさんはカメラがあまり得意じゃないので、精霊を何体か「写真家」として育てている。

 知り合いからも「お前はカメラに向いていない。構図っていうもんが大事なんじゃ」と、たかが植物園みたいな施設で花を撮るためだけにボロッカスに言われたわ。


 今日王族を撮影させている精霊は、なかなかの有望株な奴なのだ。

 はっきり言って完全にプロの領域に達している。


 最初の頃は、一体何故こんな写真を! というような謎写真も多かったのだが。

 まあ、連中は人間とはまるっきり感性が違うので。


 そこは人外の能力を持つ者達だけあって、ネットで色々と見せて御勉強させたら、めきめきと頭角を現す者達も現れた。


 精霊魔法を駆使して、人間には出来ない写真術を披露する事もある。

 なんかレントゲン写真みたいになっている写真とか、人間を疑似精霊化して写したので何がなんだかよくわからなくなっているものとか。


 その他でも、人や物のオーラが吹き上がって写っていて凄い事になっているとか。

 俺なんかが精霊に写真を写されると、何故か不可視で写真には映らないはずの魔力放射が写っていて、何かこう凄い事になっている写真も撮れた。

 まるで俺が朧に揺らぐ無数の金色の蛇を体中から生やしているみたいだ。

 念写かよ。


 他の姫様方も、きゃあきゃあ言いながら和服ライフを楽しんでもらえているようだ。

 御付きの貴族の子女の方々も、しっかりと和服姿を堪能しているようだった。


 姫様方も凧揚げや羽子板を楽しんでいただいた。

 顔に墨は、ちょっと無し。

 だって、そんな事をしたらせっかくの美少女達が台無しじゃないか。

 負けたら『しっぺ』のルールで。


 姫様達も凧作りから挑戦している。

 一人アワアワしているだけの奴がいたので、ドワーフ国史上最年少国家特級技師を召還して、御手伝いにつけた。


 この子は、なんで大国の公爵家にいるんだろうな。

 公爵令嬢の侍女扱いのくせに、かなりの粗忽者のように見えるのだが。

 どちらかというと、いつも公爵令嬢の方が奴の面倒を見ているように御見受けする。

 相当訳有りな人物であるとは聞いているのだが。


 俺は精霊共を呼び出して、次々と凧に装填していく。

 そいつら用に魔力を振りまいたら、呼んでもいない奴らまで世界中から大量に押しかけてきた。

 正月早々、王宮の庭園中が顕現した精霊だらけになっているという、おめでたい事になってしまっている。


 諸国の王侯貴族や、招待されていた商人や名士の皆さんが、その光景に目を剥いていた。

 顕現した精霊なんていうものを見るのは、殆どの人が初めてであるらしい。

 莫大な寄付寄進のために神殿を訪れる貴族や商人達にも、大神殿といえども精霊達が顕現した姿を見せる事はまずない。


 中には跪いて連中を拝んでいる人までいる。

 多分商売繁盛とかを願っているんじゃないかと思うのだが。


 うちの人間は、もう見慣れすぎちゃって違和感すら覚えない。

 ケモミミ園の子供達にいたっては、精霊など最早完全に『幼馴染』のうちに分類されている。


 せっかくなんでファルに「一曲」歌わせた。

 ちゃんと祝福の歌を歌ってくれたので安心だ。


 以前、公式な場でこそなかったものの、ちょっとした貴族の集まりで全然違う歌を歌われてしまった事があったのだ。

 そいつはアメリカでも「日本人はこのアニメにもう夢中」とニュースになったほど人気だったアニメの、これまた凄まじく派手なオープニングの奴で、あの時はさすがに俺もちょっと慌てた。


 当然、神聖エリオンの聖歌(本物)を耳にした者も、ここには小数しかいないからな。

 御蔭で凄まじい大反響だった。


 もっとも王宮で働く人にとっては、俺がいつも連れ歩いているせいでチビエリオンの姿なんか見慣れてしまっていて、「ああそういえば、この子って神聖エリオン様なんだっけ」という状態である。

 こういうシーンで、改めてそうであったと思い出すのだ。


 涙を流して跪く者、少しでも近くに寄って姿を見ようという者、感動して棒立ちになっている者。

 その他に、この出来事を本国に知らせるためにペンを取り出す大使のような方。

 ただ呆然とする者など反応はそれなりに多彩であった。


 まあこれらの人達も、直にこういう展開にも慣れるでしょ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ