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2-1 王都の冒険者ギルドにて

 俺はあの親子と別れてから、宿をMAPで検索した。

 もう面倒なので近場で目についたその辺の適当な宿にしておく。 

 いかにも小ぢんまりとした、普通の宿といった感じであったのだが、これで一泊銀貨一枚だった。


 はあ。

 これで日本円にして一万円相当なのかあ。

 小さめな地方都市の、狭くて風呂トイレ無しの駅前ビジホレベルなんだけど。


 やっぱり王都の宿は高い。

 東京だって、このレベルでここまで高くはない。

 でも村の宿よりは遥かにマシだな。

 安宿は寝具もそれなりなのが残念だ。


 うん、でも上等だ。

 ちゃんと王都に来れたんだから文句は言わないさ。

 金は十分ある。


 晩飯は別料金だった。

 大銅貨二枚とかなり高いけれど、まあ美味しかった。

 辺境とは材料と、特に調味料なんかの差が激しい。

 あるいは、日本のようなスタイルの調味料はなくて調理技術によるものなのかもしれないが、いずれにしても格団に味の差がある。


 今日は移動で疲れたので、さっさと寝る事にする。



 怒涛のイベント三昧だった異世界で十日目を迎え、俺はついに王都に辿り着いた。

 とりあえず換金所を五か所くらい回ってみる。

 規模の大きな王都だから、それなりの量を換金しても別に問題はないだろう。


 金貨千枚相当を換金したので、そいつの分は大金貨でもらう。

 これで所持金は、金貨千三百九十枚相当に銀貨五十五枚、そして大銅貨二十八枚と銅貨四百二十枚になった。


 もう一財産だな。

 宝くじで一等当選したくらいの資産家だな。

 これが日本なら、金融資産三億円以上を持つ資産家として税務署に毎年資産の申告をしないといけないほどだ。


 王都は物価が高いから、銅貨よりも大銅貨の方が使い勝手がいいかもしれない。 

 当座の目標は攻撃魔法の習得に、ミスリルやオリハルコンなどの魔法金属を手に入れる事だ。



 そういうわけで、今日は王都の冒険者ギルドを覗いてみることにした。

 冒険者ギルドは、三重防壁構造をした王都の真ん中の壁の西側通用門付近、最外側の一般区画となる部分に在る。

 ここならば王都住人や、あるいは王都来訪者の誰でもやってくる事が可能なのだ。


 王都の冒険者ギルドはそれなりの賑わいだった。

 比較的空いてる窓口で並んで待つ事にする。


 隣の列で順番を巡って喧嘩している奴らがいる。

 革の鎧に身を包んだ戦士らしき者と、魔法使いと思しきスタッフを持った者とで。


 もうっ。

 傍迷惑な連中だな。

 でもそいつらのファンタジーっぽさだけは、それはもうしっかりと堪能させてもらったけど。


 そいつらを仕留めたい気持ちをぐっと押さえて、じっと我慢の子。

 それは、こういう事に対してあまり辛抱強くない俺としては苦手な作業の部類に入る。


 二十分後にやっと番が来たので、冒険者証を見せながら二十代男性と思われる窓口の人に聞いてみる。


「やあ、実は魔法を習いたいんだが」


「そうですか。

 しかし魔法には適性がありますので」


「そいつは、どうやってみるんだい?」

「魔道具でみます」


 ほお、魔道具ねえ。


「とりあえず回復魔法はある程度使えるんだけど」


 そう言うと彼は少し驚いた顔をしていたが、すぐに係の人間を呼んでくれて案内された。

 そこは小さめの会議室みたいな部屋で、正方形の金属の台座に小さな水晶が載った魔道具を出してきてくれた。


「料金はどうなっているのかな?

 その高価そうな魔道具の使用料は幾らだい?」


「魔道具による魔法適性検査は無料です。

 指導料金は、魔法一つにつき金貨十枚から百枚といったあたりでしょうか」


 へえ、思ったよりも料金が高いな。

 高い魔法の習得料金は日本円にしたら、多分億まで行くよ。

 魔法一つでなんと指導料金が一億円だ。

 これまた、べらぼうな料金だぜ。


 まあ、俺は買うんだけどさ。

 支払いに十分なだけ手持ちの金はあるのだ。

 これで買わないというのなら、一体何のためにここへ来たというのか。


 いくら大金でも命には代えられない。

 お値段高めの魔法くらいは習っておかないと、こんな物騒な世界でやっていけんわ!

 どうせ元はコピーして作った金板を換金して手に入れた金なんだしな。


「わかった。

 それで君の御勧めは?」


「そうですね。

 使い勝手からいけば、エアカッター・エアバレット・アイスランス・サンダーボール・アースランス・ストーンバレット・マジックアローといったあたりでしょうか。

 ファイヤーボールは人気の魔法ですが、火魔法は使う場所を選びますので多少割引ですかね。


 次は補助魔法ですね。

 よく使われる汎用性の高い実用的なものがお勧めです。

 ファスト・スロウ・アローブースト・アタック・ストロング・ハード・インパクト。

 これらは初級魔法ですので、金貨十枚で覚えられます。

 あくまでそれらの魔法適性があればの話ですが。


 あと魔法の威力は魔力量に依存しますので。

 では測定しますね。

 こ、これは!」 


 係の人が測定結果を見て目を見張る。


「ど、どうしたんだい?」


 やめてくれよ、黙っちゃうのは。

 不安になるじゃないか。

 この期に及んで、やっぱり回復魔法以外の魔法は使えませんでしたっていうんじゃないだろうな。

 それだけは勘弁してくれ。

 俺には確か全魔法適性があったよな!?


「凄い。

 いろんな魔法属性に適性があります。

 こんな人は見た事がない。

 普通はあって一つ、多くても二つくらいです。

 三つは極稀ですね。

 ただ魔法というものは適性があまりに多いと、むしろ器用貧乏になる傾向がありまして」


 うわ、マジか!

 ううん……その辺は是非魔力量の多さでカバーしたい!


「とりあえず、さっき君が言った奴はみんな覚えたいな。

 十五種類だったよね?」


「わ、わかりました。

 では代金のほうが金貨百五十枚になります。

 魔法の教習を受けたら、適性などの関係で覚えられなくても返金は致しかねますがよろしいですか?

 一応は覚えられるまで指導は続けられますが、あまりにも時間がかかって教官よりもう見込みがないと判断された時点でそれも終了となります」


「ああ、それで構わないよ」


 すぐにお金を数えて渡す。

 大金貨十五枚だ。


「あとミスリルやオリハルコンの武器とかはあるのかな」


「ミスリルは在庫がありますが高いですよ。

 ナイフで金貨二百枚です。

 オリハルコン製は滅多に出回っていません。

 あればギルドでも買い取りたいくらいです」


 オリハルコンは、素材だけでも手に入ればと思ったんだが無理だったか。

 よっぽど貴重品なんだな。

 今度どこかで借りられないか聞いてみよう。


「じゃあ、ミスリルのナイフもくれ」


 大金貨で二十枚を追加で渡す。

 あは、ナイフ一本で二億円するのかあ。

 さすがはファンタジーワールドだけの事はあるな。

 相場も半端じゃない。

 まるでゲームの中のアイテムの値段のようだ。

 消費税がないだけまだマシかな。


「確かに。

 では先にナイフを御用意しますので、お待ちを」


 これで残金は、大金貨六十五枚に金貨三百九十枚、銀貨五十五枚と大銅貨二十八枚に銅貨四百二十枚だ。

 いや王都へ来るなり、また思いっきり金を使ったもんだな。

 まあ、これも予定通りの使途なんだから仕方がないけど。


 かなりの時間待っていると、さっきの彼がナイフを持ってきてくれた。

 特別な物なので、持ち出しに上役の許可などが幾つも要ったりするのだろう。


 当然その間に、後ろで並んでいた奴らが俺の事を睨みながら次々と列から脱落していったのだった。

 だがギルドの職員がやる事なので俺に文句をつけてくる奴はいなかった。


 比較的大きめの武器だが、しょせんはナイフだな。

 それに明らかに中古品だ。

 おそらく新品は相当高いとみた。

 俺はミスリルの素材が欲しいだけなので構いはせんがな。


 ミスリルは銀よりも白っぽい感じの白銀の輝きだ。

 鑑定すると「ミスリルのナイフ」とある。


 おお、間違いないな。

 懐にしまうふりをして、アイテムボックスへ仕舞う。

 そして、さっそくコピーしてみる。


 おお~!

 ミスリルがコピーできた。

 しかし凄まじいMP消費だな。

 やはり魔法金属とやらは普通の物質ではないのか。


「じゃあ魔法を教習いたしますので、こちらへついてきてください」

 

 そして裏手にある演習場へと着いた。

 ここでは修練場というらしい。

 そこでは何人もの冒険者らしき人物達が並んで俺を待ってくれている。

 彼らは各属性の魔法の教師なんだろう。


「彼らが一度やって見せるので見ていてください」


 そう言われたので、例のセブンスセンスによる見取りスキルを発動した。

 全員が順番に一通りの魔法をやってみせてくれた。

 よし、魔法習得スキルを用いて全部覚えた。


 さすが見取りのスキルは、『以前から持っていた能力』由来のスキルだな。

 元々、セブンスセンスという奴は能力もへったくれもないものなのだが。


 あれは別にセブンスセンス能力などというものではなく、またこの俺も本来はセブンスセンス能力者などという怪しげな者ではない。

 便宜上そう呼んでいるだけなので。


 単に俺は『セブンスセンスという者と一緒にいるだけ』という普通の人間なのだから。

 まあそれはそれで便利なものだからいい。


 俺は前へずいと出て、一通り覚えた魔法を発動させてみせた。

 ギルドの面々からは驚きの声が上がる。


「こ、これは!」


 おっと、こいつはやりすぎだったか?

 指導を始める前に手本を見せただけで覚えられたんじゃ驚かれるよな。

 まあ面倒だったし別にいいか。


「回復魔法持ちだと言ったろう?

 魔法を覚えるコツは身に付けているよ。

 あと、他のもっと上のクラスの魔法は覚えられないか?」


 この世界で揉まれたせいか、俺はまるで息を吸って吐くように、すらすらと言い訳が言えるようになっていた。

 日本では、こういう事は苦手な部類だったのだが、まあ何事も経験っていう事なんだよな。


「中級の各属性のストーム系が五種類ほど。

 全部で金貨二百五十枚になりますが」


 俺は迷わずその場で大金貨二十五枚を渡す。

 これで残りは大金貨四十枚と金貨三百九十枚、銀貨五十五枚に大銅貨二十八枚と銅貨四百二十枚だ。


 そこに居た冒険者の中から中級魔法を使える冒険者が使って見せてくれたので、俺はささっと中級魔法も全部覚えた。

 こいつも威力は十分あるらしい。

 教える側も会場が修練場のために力を抑えているので、実際の威力なんかはよくわからないのだが。


「実に御見事でした。

 こんなに各種の魔法を使えて、しかもさっさと覚える人は見た事が無いです」


 そうか、少し目立ちすぎるかな。

 まあいいさ。

 とにかく身を守る方法が無いとな。


「そういや、辺境からここに来るまでに魔物と一回も会わなかったんだけど、街道に魔物なんているの?」


 辺境では会ったけどね。


「本当ですか?

 そいつは運がいいですね」


「その代わり大きな盗賊団には会ったよ。

 傭兵崩れの手強い連中なんだとさ。

 思いっきり四十人も退治してきたけど」


「それは大変でしたね」


 うん、それはもう大変だったよ。

 こっちの『血みどろな童貞』は一生捨てたくなかった。


「上級魔法は覚えられるの?」


「ええ。

 ただし、それらは希少な魔法となりますので、教えられる人間と日取りを合わせないといけませんので、すぐというわけには」


「了解。

 では、手配だけしておいてほしいな。

 そっちはまたいずれ」



 その後でギルドのショップにて武器を見ていた。

 やはり、ちゃんとした装備が欲しい。


「この剣なんかどうだい?」


 係の人が両手剣を薦めてくれた。

 ショートソードなんかも。

 あと槍や短槍も薦めてくれた。

 さすがに本式の武器は凄いな。


 西洋の武器っぽい感じだが、西洋剣にも国や用途によっていろいろある。

 金属鎧をぶっ叩くような両手持ちの大型剣や、人間を切る事に特化したような物など。


 切れ味なんかは俺の持っている和ナイフの方がずっといいのだろうが。

 あれだって伊達に値段が高くない特別な刃物なのだ。

 武器は全部で金貨六枚だった。


 次が防具の革鎧だ。

 こいつを体に合うように調整をしてもらって金貨二枚だった。

 これを払っても、まだ残り金貨七百八十二枚相当の資金がある。


 お次が回復アイテムとなるポーション類だ。

 怪我を治すヒールポーションが一般的だが、その他に魔法使い用の魔力ポーション、状態異常を治すキャンセルポーション、解毒に特化したポイズンポーションなんかがあった。


 これらの初級・中級・上級を各一本ずつ揃えた。

 値段はそれぞれ大金貨・金貨・大銀貨だ。


 上級ヒールポーションはなかなか入荷しないため、常に在庫が無い状態だ。

 今日はたまたま一本あったとの事でラッキーだったな。

 まあ、そういう事もセブンスセンスのせいなのだろうが。


 残金は大金貨三十四枚の金貨が三百九十七枚、銀貨百十七枚と大銅貨二十八枚に銅貨が四百二十枚だ。


 かなり金は使ったが、その分は魔法や良い装備などを入手出来たからいい。

 ポーションもしっかりとコピーできたので助かる。

 宿に帰ってから買った装備をミスリルでコピーしていたらMPのLvが一つ上がってLv8に上がった。


 MPが3436億MP近くになった。

 これはまた増え方が半端ないな。

 稀人って奴はみんなこうなのか?


 ステータスを見たらHPが10万HPまで上がっていた。

 Lv6だ。


 こいつの方はMPと違って数値の上昇が遅い。

 もしかして身体強化スキルと連動しているのか?

 身体強化をレベル上げしてみるか。


 攻撃魔法もレベル上げをしておきたいのだが、MPがありえないほど凄い事になっているので、そこまでやるのなら俺専用の演習場を探さないといけないのではないか。


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