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俺の逡巡  作者: GALA
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(12)

 「印」を刻みなおされているということは、取ったことが類香さんにバレてしまったということだ。これで俺と尚登が繋がっていることもバレたのかもしれない。とにかく今類香さんに襲われたらひとたまりもない、なんとかしなくちゃ。 

 あの時のように何か紙みたいなものに写せばいいんじゃないだろうか、と見回すとティッシュペーパーの箱を見つけ1枚取り出し、その印に押し当てた。しかし、こすりとっても全く落ちていないようだ。この印を取った時どうだったっけな……そうだ、勃ってたじゃないか! ええと……なんかエロいこと考えればいいんだろ……グラビアのAIちゃん……ちょっと那奈に似てるんだよな……いや、いっそ那奈……えっ、なんでだよ、浮かんでこない、もちろん反応もない。

 ええと……この前ネットで見たAV思い出せ……んっ、いいか? いけるか!? しかしそれはほんの少しの膨張で終わってしまった。くっそう、類香め! 一度でもあんな女の手中にはまったかと思うと……思うと……ん? んんっ!?

 類香め、と例え憎々しげに思い浮かべたとしても反応しやがるのか。うわっ、俺変な性癖になってしまってないだろうな。そう思えば思うほどにあの日の事が次から次へと鮮明に思い出され、痛いくらいに勃ってしまっている。あの、感触……い、いや、そんな事を考えてる場合じゃない、今のうちに印を取らねば。


 しかし、どう頑張ってもティッシュには何の色も移らないようだった。暗くて良く見えないにしてもティッシュが真っ白のままなのはわかる。あれは、尚登じゃないとできないことなのか……?


 やべぇ、なんか、とにかく挿れたい……いやいや、勘弁して、こんな時にいっ!! もし今類香が現れでもしたらもうアウトだ。俺の意思や理性とは関係なく暴走してしまうに違いない。ぬ、抜いたらいいのか? この際妄想なんてどうでもいい、物理的な刺激でとにかく搾り取らなくては!


 意を決した、その瞬間だった。目の前がボウッと光り、真っ白な鳥が現れたかと思うと瞬く間に大きく扇形に尾羽を開いた。バサッと巻き起こる風が、半分トランクスを脱いだ俺の股間を爽やかに通り抜けた。するとさっきまで熱く硬くなっていたモノがとたんに大人しく、元通り下を向いたのだった。


「た、助かった……尚登の孔雀だよな!」


 ――フンッ


 えっ。確かに今、フンッ、って言ったぞ! 馬鹿にしたような目で俺を見下しながら、孔雀は羽を閉じた。クソッ! 俺だって好きでこんな格好してるんじゃねえんだわ!

 そんな俺の心の声を見透かしたようにもう一度フンッと鼻(?)を鳴らすと、孔雀はフッ、と消えた。よくわからないけれど、きっとこれで尚登になんらかの知らせが行く……んだよな? 孔雀が来たってことは尚登もこの異変に気付いて探してくれてる、ってことだよな?


 今は静かに待とう……とりあえずトランクスはちゃんと履こう、ご安全に。


 15分位した頃だった。少し外が騒がしくなったかと思うと、男女の怒鳴り合う声が聞こえた……尚登か!? そしてその声は段々近付いてくる。

「いい加減にしろ!」

「知らないわよ、そんな人いないってば!」

「お前が陽一にちょっかいだしてるのはわかってるんだ、どこに隠してるかもな!」

「ちょっ、やめ……! そこ学生は立ち入り禁止!」

「あの部屋だろうが!」

「あ、あんただっていい加減、史香ふみかを返しなさいよ! あんなの監禁じゃない、警察に言うわよ」

「バカか! 警察沙汰になって困るのはそっちだろうが。史香は自分からオレの所に来たんだ!」

「そんなはずないわ、史香はそんなことできる子じゃない! あんたがたぶらかしたんじゃない!」

「史香は帰りたくないって言ってんだよ!」


 ええと……なんか、俺の事忘れられつつあるような。今までの話を察するに、どうやら類香の妹かなにかであろう史香という人は、尚登の実家に逃げてきてるんだろうか。確か、前に類香に妹がいるという話をした時尚登が何となく話を濁したのを思い出した。もしかして、ただならぬ仲なのか……?


「そこをどけ!」

「いやっ、渡さな……きゃあっ!」


 そして部屋の引き戸がガタガタいって突然光が差し込んだ。助かった……!

「陽一、走れ!」

 えっ、あっ、こ、このまま!? パンイチで!?

「陽一君! 行かないで!」

 俺は迷うことなくダッシュで尚登の後を追った。夏で良かったよ……パンイチでもなんかまあ言い訳できそうな気がするよ……途中、何人かに見られはしたもののそんな事気にしてる場合じゃない。尚登がドアを開けて入ったのはサークル棟の一室だった。


「はあっ、はあっ、ここ、ならだいじょ、うぶ」

「こ、ここはっ、はあっ、なに」

「うちのサークルの部屋、オカルト研究」

「だ、だせぇ名前」

「うるせえ、暑っつ」

「み、水、くれ」


 尚登がエアコンをつけ冷蔵庫からお茶のペットボトルを出してくれた。一気に500mlを飲み干しようやく落ち着いた。

「どうしよう、携帯とか財布とか服とか」

「お前結構呑気だな。そんなこと言ってる場合じゃ」

「そう! そうだよ、またあの印を付けられちゃったんだよな」

「……はぁ……」

「その目……あの、お前の孔雀そっくりだよな……飼い主に似るって言うけどホントだな」

「なんだよ、ルブランのお陰で助かったのに」

「る、ブラン……な、名前つけてんのかよ! しかも思いっ切り洋風な」

「うるせえ! どっちかって言うとオレの方が立場は下なんだ、お前は助けてもらったんだからルブラン様と言え。それより……またあの印付けられたのか、めんどくせえなあ!」

「くっ……ごめん」

「もういい、お前なんか類香に襲われてろ」

「ええっ! そんなあ……な、それより史香さんって」

「……あいつらの妹。今、うちの実家でかくまってる」

「もしかして……恋人、とか」

 すると、尚登の色白の顔が瞬時に赤くなった。わかりやすい奴だな。

「――なっ……なんでわかる」

「へぇ……美人? 類香さんに似てる?」

「ヤメロ、全っ然似てねえ! 史香はもっとかわい……そんなことはどうでもいい、お前こそ那奈ちゃんに感謝しろよ。陽ちゃんがなんだかおかしい気がする、って危険を冒してオレのアパートまで来てくれたんだからな」

「えっ、あいつ今日から実家帰る、って……」

「ああ、その前に気付いてくれたらしい。うろついたら危ないから、今はオレの部屋にいる」

「……どうしよう、これ……」

 まじまじと股間を見つめ、ため息をつくと尚登がそれ以上の深いため息をつく。

「那奈ちゃんの前でアレやるわけにはいかんだろ。ここでやるわ」

「へっ、できるの?」

「多分」


 オカルト研究サークルだけあって、酒と蝋燭はあった。大麻おおあさは長い竹製の定規に紙を細く切って作った。白い布の代わりに模造紙をテーブルに広げその上に全裸で寝かせられる。御身清めできないから、と結構多めの酒をふりかけられ、あの時と同じように儀式が進んだ。ちなみに尚登本人は毎朝清めているのでなんとかセーフらしいし、俺も朝シャワーを浴びてたからいいらしい。


 自分的には100%勃ったわけではなかったが、尚登はそれをガシッとつかみ紙をあてた。前より時間が長くかかっている気がするけど……


「ふう……終わった、けど」

「けど?」

「だめだ、完全には取れない。やっぱりこの環境じゃ無理――ヤバい、見つかったぞ!」


 尚登の視線の先を追い窓の方を見遣ると、カーテンの隙間から白い大きな蛇が覗いていて、オレと目が合ったあとニヤリ、と笑って消えた。あれが、類香さんの……



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